表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

未だ来ぬ夏 あるいは、1種の試み

作者: レノアリウス

これは1種の実験的文章です。


アブラゼミが長く鳴くようになった、ある夏の午後。

少女たちは、部活をしに大学に向かう。


「佳奈っちー、部活終わりにさーカフェとか来れるー?」

デートデート、ニシシ♪と笑う少女は、金沢紗季(かなさわさき)

そんな彼女を見て、もう一人の少女、上嶋佳奈うえはらかなは苦笑する。

「もう……偶に()、お茶しるのもいいわね。全然大丈夫よ」

「もー改まっちゃってー。可愛くない子()好きくないぞっ」


古くなった中央リニアの静かな車内に、傾き始めた陽の光が差し込む。

陰影によるモノトーンの世界が、物憂げな雰囲気を醸し出す。


「……『()(かあ)の流れは絶え(てえ)ずして、しかも元の水に非ず』」

「どーしたの佳奈っちー、何悟ってんのさ」

「時代が変わっていくのとか、今も昔も止めれないものなのね」

佳奈は、車窓から外を眺める。


灰色で埋め尽くされた世界の上に、無数の点が蠢いている。

単一色の森は、往時より成長が衰えていた。

統一性を求めた世界の末路は、そこにあるのである。


「別によくない?そーゆーもんなんだって」


「え?」

佳奈が顔を上げると、紗季は破顔した。

「世界()活きてるんだから。変わりない世界とか、面白(おもしろー)ないでしょ?」

「それもそうね」

「そーそー。チェンジとか、どんどん()い!ってカンジ」

そう言って、二人は笑いあった。


降車駅は、もうすぐである。


お読みいただき、ありがとうございました。

以下、解説です。


この小説は、「未来の日本語はどうなっているか」を、言語学的に考えて作ったものです。

ここでは、以下の事項を用いました。


1、カ変・サ変は将来上一段活用化するだろう。「来い」が、「こい」→「きい」、「する」→「しる」となるだろう。これは「信ずる」→「信じる」と同じ変化である。

2、名詞+サ変などの複合サ変が一般的になるだろう。「お茶しる」のように(お茶する、とか現代でも使いますね)

3、よい→「よくない」「よくある」などの形に影響され、i音で終わる動名詞や形容詞も、例えば好き→「好きくない」「好きくある」のようになるだろう。

4、「わ」(wa)も、「を」(wo→o)の様に唇音退化を起こし、「~は」(wa)や「河」(kawa)も「~あ」「かあ」と長音的に発音されるようになるだろう。

5、「やう」(yau→yō(you、「よう」と書かれる))のように、一部の二重母音も長音化を起こすだろう。たえる(taeru)→てえる(tēru)、のように。

6、ら抜き・れ入れ・さ入れ言葉は当たり前、「全然」の肯定文での使用も認められる。

7、形容詞の「く」が子音脱落を起こす(ku→u)。

8、格助詞の代わりに「とか」が常用される。


過去の時代の日本語の変遷はよく研究されるものですが、逆に未来はどうなるんだろうと考えて書いてみました。


ちなみに中央リニアは現在計画段階です。


未来世界のヒトコマを、垣間見れたなら幸いです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ