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紫音&梓シリーズ

体育祭

作者: 麻沙綺
掲載日:2014/10/29

今回、ちょいと長め(?)です。

宜しくお願いします。

あーあ。

またしても私が不得意とするイベントがやって来る。

それは……。

“体育祭!!”


運動音痴の私にとっては、過酷(大袈裟?)なイベント。


逆に私の彼は、このイベントが大好き。

今も、クラスの中心となって、ワーワーとやってる。



「梓。何凹んでるのよ」

朋子が、私のところに来て言う。

「うーん。だって、私の嫌いなイベントだよ」

「ハイハイ。体育祭が、そんなに嫌なんだ。あたしは、授業がなくなるから、嬉しいけどね」

朋子が、苦笑しながら言う。

確かにそうなんだけどさぁ…。

「アイツは、ヤル気充分みたいだけど…」

そう言いながら、目線を彼に向ける。

アハハ……。

本当。

さっきから、張り切ってる。

それに彼の周りには、男女問わずに詰め寄っていて、彼の隣に寄り添うように有美さんが居るんだ。


「今年は、うちのクラスが優勝間違いなし!!」

って、豪語してる。

自信過剰だよ。


私が居ること、忘れてるよ……。

ハァ……。

絶対に足引っ張るの目に見えてる。


「梓。あれ、いいの?」

朋子が顎で、指しながら小声で聞いてきた。

「何が?私が横に並ぶよりも絵になってると思うけど…」

苦笑する私に。

「何言ってるのよ。梓だって…」

朋子が、慰めの言葉をかけようとするのを遮り。

「いいよ。自分の事は、自分が一番良くわかってるから」

そう。

私が、彼と並ぶより様になってるもん。


ハァーー。

私は、そんな二人を横目で見ながら、何に出ようか悩んでいた。



私が出る種目は……。

なんと、クラス応援団員となりました。

まぁ、どんな種目に出ても足を引っ張るだけな私は、その方がよかったのかなっと思う。


エッ……。

全員参加が当たり前だって?

確かにそうなんだけど…。

気が付いたら、何故か私、外されていたんだ。

アハハ…。

朋子は、百m走に出るから、頑張って応援するんだ。

彼?

彼は、全種目に出る勢いだったけど、男女混合リレーと借り物競争になってた。


競技に出る必要なくなった私。

ホットしてたのもつかの間。

「競技に参加しない人は、応援団としての活動がありますのでお願いします」

って……。

エッ……。

それって……。

「あーあ。梓、応援団入り決定だね」

朋子の一言で、落胆した。

クラスの応援だけじゃないの?

私は、疑問に感じていた。



あの後。

朋子に詳しく話を聞いた。

うちの学校は、組での応援は不可欠なので、同じ組の一年・二年・三年生が、一丸となって応援することになるんだって(知りませんでした)。


「応援団の方も今日から、練習がありますので必ず参加お願いします!」

って、語尾に力を入れられた。

「ごめんね、梓。あたしも練習があるから、一緒にやれない」

申し訳なさそうに言う朋子。

「ううん。大丈夫だから、朋子は自分の練習を頑張って」

私は、笑顔で言った。



ああは言ったものの、ちょっと不安だったりする。


応援団の集合場所は、三年生の教室。

普段滅多に来ない、三年生の教室が並ぶ廊下をいそいそと歩く。


教室に辿り着き中に入ろうとして、戸惑った。

本当にここであってるの?

中を覗き見る。

数人の男子が、話し込んでいた。

どうしよう……。

入りづらい…。


「あれ?B組の応援団の子かな?」

その時、教室に居た一人の男子が、私に気付いて声を掛けてくれた。

これぞ、天の助け?

何て一人で思ってしまった。

「は、はい。そうです」

どもり気味に返事してた。

「何年?」

「二年です」

「そう。取り敢えず中に入って、俺は三年の鳥海でこっちから、笠井、佐竹、松林な」

って、左から順に紹介してくれた。

「田口です、宜しくお願いします」

私は、慌てて自己紹介をする。

「立ってるのもなんだから、空いてるところに座ってな」

鳥海先輩が言う。

「はい…」

私は、言われた通りに空いてる席に座った。


暫くするとメンバーも集まり、話し合いが始まった。




「田口さん。もう外は暗いし、送っていくよ」

話し合いが終わり、鳥海先輩が言う。

私以外のメンバーは、男子だったので気を使ってくれたのであろう。

でも、この場に居て思ったのは、誰かに嵌められたんだって……。

どう考えたって、男子よりも女子の割合が少ないのになぜ、私だけが応援団員なんだ?

って……。

まぁ、決まっちゃったもんはしょうがないんだけどさ。

「あ、いいえ。大丈夫です。それでは、失礼します」

私は、慌てて教室を出た。


自分の教室に行き、鞄を持つと下駄箱に向かった。



「梓」

下駄箱の影から、彼が現れた。

「紫音くん。どうしたの?」

私が、声をかけると。

「うん?梓の靴があったから待ってた」

照れくさそうに言う(この顔は、私以外に知ってる人は少ないと思う)。

自信家の彼が見せる唯一私だけが知ってる顔に口許が緩む。

「ありがとう」

私は、彼の隣に並び手を繋いで歩き出した。



「梓。応援団の方はどうだ?」

心配そうに聞いてきた。

「うん。優しい人達だったよ」

って返すと。

「優しい……」

怪訝そうに聞き返してきた。

「うん。とても良くしてくれたんだ」

「へー」

彼は、納得いかない顔をする。

「なぁ、梓」

「ん?」

「他の男の所へ行くなよ。オレだけの梓なんだからな」

って繋いでいた手をギュッと握ってきた。

急にどうしたんだろう?

何か変だ。

「何かあった?」

私の問いに。

「何も……。ただ、梓だけが、応援団員になってるのが、ちょっと気になっただけ…」

って、彼が心配そうに言う。

「大丈夫だよ。こんな私を好きだって言ってくれるの紫音くんしか居ないよ」

って、苦笑する。

「梓…。そろそろ自分に自信持てよ。梓は充分に可愛いんだからな」

って、真顔で言う彼。

私が、可愛い?

何の冗談かな?

「オレが、可愛いって言ってるんだから、充分だろ」

怒ってるっぽく聞こえるのは、何故?

「う、うん……。そうだね。紫音くん、ありがとう」

私の言葉に赤くなって、そっぽ向く紫音くん。

そんな紫音くんを愛しく思った。




気付けば、体育祭当日。

空は、いい天気。

今日の私は…。

体操服……ではなくて、学ラン。

女子が学ラン着るって…。

思われると思うけどさぁ、男子の中に一人だけ女子の私。

私だけが、体操服ってめちゃ目立つじゃん。

目立つの好きじゃない私。

だから、お兄ちゃんの学ランを借りて(?)着ました。

そして、ウィッグもつけて、どっから見ても男の子になってみました。


「梓。何もそこまでしなくても……」

朋子には、飽きられたけど……。

「だって、目立つの嫌だもん」

ちょっと膨れっ面になりつつ、そう答えた。

「アイツには、言ってあるの?」

朋子に言われて、首を横に振った。

「それじゃあ、今頃……」

朋子が、溜め息をつきつつ呟いた。

今頃?

何?

私の顔を見た朋子が、呆れ顔になって、超特大の溜め息をついた。

何だろう?


朋子と連れだって、応援席にいく。

「じゃあ、頑張って応援してね」

朋子に言われて。

「うん!」

ちょっと低めの声で、返事をすると朋子が、苦笑しつつ自分の席に向かった。

それを見届けてから、私は団員メンバーが居る方へ移動した。


「遅くなってすみません」

って、声をかける。

するとみんなが誰?

って顔を向けてきた。

「田口ですけど…」

って言うと驚いた顔で見る。

エッ…。

何かまずった?

「すごい変わりようだね」

って、声を掛けてきたのは、鳥海先輩だった。

「そうですか?」

「うん。どこから見ても男だよ」

って、苦笑してる。

本当に男に見えてる?

「さぁ、俺達も応援始めるか」

鳥海先輩の一言で、周りが動き出した。



朋子が出る百m走。

私は、声を張り上げて、応援する。

「フレーフレー、B組!」

その声が届いたのか、朋子の走りが善くなり、一位は逃したものの三位に入った。

「やったー!」

って、一人ではしゃいじゃって、周りが苦笑してる。

「…スミマセン…」

恐縮する私に。

「いいよ。友達を一生懸命応援するのも大切だからね」

笑顔で、鳥海先輩が言う。

エヘヘ……。

照れ隠しのように笑う。

「ほら、まだ競技終わってない。応援するぞ!」

先輩が、私の頭をポンっと軽く叩く。

「はい!」

周りの声。

先輩って凄いな。

先輩の一声で、周りの雰囲気が変わるんだもんなぁ。



プログラムは、順調に消化していく。

『次は、男女混合リレーです』

って、アナウンスが入る。

私は、彼を探す。

居た。

彼も、何となくこっちを見てる気がする。

けど、一瞬だけ見て不思議そうな顔をする。

そして、目線が会った途端笑顔になった彼。

“頑張れ!”

って、口パクしてみる。

すると。

“応援宜しく。”

って返ってきた。

私は、笑顔で頷いた。


何てもどかしいんだろう。

大きい声で彼の事を応援したいのに……。

それができないもどかしさ。

そんなジレンマと奮闘しながら、声援を送り続けた。



昼休憩。

「梓」

呼ばれて振り向けば、朋子が近づいてきた。

「朋子。三位入賞おめでとう」

私が言うと。

「ありがとう。梓が、一生懸命に応援してくれたからだよ」

笑顔で、返された。

「いやいや。朋子が頑張ったからだよ」

って、言い合ってると。

「田口さん。ちょっといいかな?」

鳥海先輩に呼ばれた。

朋子と顔を見合わせ。

「行っておいで」

って、背中を押された。

「うん。じゃあ、後で……」

私は、朋子と別れて、先輩の後を追った。


人気の無い場所に連れてこられて。

「田口さん。俺、君の事好きなんだ。もしよかったら、俺と付き合ってほしい」

って……。

エッ……。

驚いてる私に。

「返事は、急がないから。俺の事、少し考えてくれないかな」

って、真顔で告げられた。

「午後からの応援も頑張ろうな」

それだけ残して立ち去った先輩。


えっと……。

私は、その場で立ち尽くした。


我に返り、教室に戻ると。

「お帰り」

朋子が、お弁当も食べずに待っていてくれた。

「ただいま」

浮かない顔をしてたのか。

「梓、何かあった?」

って、心配そうに聞いてくる朋子。

「うん。…ちょっと…」

上の空の私に朋子が。

「アイツが、心配そうにこっち見てるよ」

って悪戯っぽく言う。

私がそっちを向くと視線が絡んだ。

「アイツに見とれてるのは構わないんだけど、お昼食べないの?時間なくなるよ」

朋子が、からかってくる。

もう……。

私は、自分の鞄からお弁当を出して、朋子と昼食をとった。


午後のプログラムも順調にこなされていく。

『本日の最終種目。借り物競争です』

とアナウンスが入った。

ラスト一競技。

頑張って応援しよう!

って心の中で意気込んでいた。

『位置について、よーい』

パン!

スターター音が聞こえると同時に応援する。

「フレーフレー、B組」

声を枯らしながら、応援する。

そして、何組かが終わった。

彼の番が回ってきた。

『よーい』

パン!!

勢いよく飛び出し、途中にある封筒を拾う彼。

一瞬、その場で立ち尽くしたかと思ったら、一直線に私のところに来た。

えっ……。なに?

「梓ー。一緒に来て!」

って、彼に腕を掴まれた。

ちょ…ちょっと待ってよ。

突然の事に驚きつつ、彼に付いていこうと必至。

紫音くんの足に私がついていけるはずもなく。

このままじゃ、負けちゃうよ。

他の何人かが、ゴールに向かって走ってるのが見えた。

「紫音くん。これじゃあ、負けちゃう」

って、私が言うと。

「このお題は、梓じゃなきゃなりたたないんだ。悪いけど付き合ってくれ」

って、私に振り返りながら言う。

よく、そんな余裕があるなぁ。

って、感心してる場合じゃない。

紫音くんが、私のペースで走ってるから次々に抜かされていく。

ハァ…ハァ…。

「紫音くん…。私…足手まとい……だよね」

ペースが落ちていく私に。

「しゃあねぇじゃん。オレが好きなの梓だし。こればっかりは、譲れない。梓、ちょっと失礼するな。しっかり捕まっておけよ」

って言ったかと思うと足が…足が浮いてる。って……。

エッ…。

これって……。

お姫様だっこ?

そのまま、トップスピードで走り出す彼。


キャーーー。

何……。

って、しがみついてるうちに。

「梓…梓。離してもいいぞ」

私、彼に思いっきりしがみついてた。

「ごめん…」

私は、彼から離れた。

顔が、熱い。


「えー。学校一のモテ男流崎君。お題はなんですか?」

って、マイクを通して聞こえてくる。

彼は、お題の書かれてる紙をその人に渡した。

「えっと…。“彼女”と書かれてありますが…。そちらのかたは、どう見ても男の方ですよねぇ?」

って、動揺する。

男に見えるんだ。

「こいつが、男に見える?歴とした女だよ」

紫音くんが言い切った。

「梓、悪いな」

そう言ったかと思うと、私が被っていたウィッグをとった。

バサリと私本来の髪が垂れ下がる。

「エッ…」

驚きを隠せないでいる。

「梓は、オレの彼女だよ。どこを見たら、男なんだ?」

紫音くんが、呆れたように言う。

えっと……。

その……。

恥ずかしくて俯く私。

「…と言うことは、ゴールテープを一位で切り、お題も見事にクリアされましたので、一位確定です。お疲れさまでした」

それだけ言うと次の人のところへ……。

「ったく。梓が紛らわしいかっこうするから…」

って、彼が言う。

「だって、周りがみんな男子なんだもん。目立つのやだもん」

そう抗議する。

「はい、はい」

そういいながら、私の頭を抱き締める。

「紫音くん。恥ずかしいんだけど……」

「いいの。オレがしたいから…」

これって、なんの意味が……。

「そろそろ戻っていいかなぁ?」

私が言うと。

「もう少しだけ」

って、放してくれない彼。

「こら、そこ。いつまでイチャついてるの。早く戻ってきなさい!」

朋子の罵声が飛んでくる。

助かりました。

全校生徒の前でみっともないことを……。

私が安堵してると。

「チッ!」って、頭上から舌打ちが聞こえてきた。

不思議に思いながらも元の位置に戻った。



「田口さん」

体育祭も終わり、鳥海先輩に呼び止められた。

「はい?」

「田口さん。アイツ…流崎の彼女だったんだな。俺が言ったことで迷惑かけて、すまなかった。忘れてくれ」

それだけ言うと行ってしまった。

あれ?

何?


「梓。何呆けてるんだよ。早く着替えて、帰るぞ」

彼、紫音くんが言ってきた。

「う、うん……」

私の背中に紫音くんの腕が回される。


「梓は、オレのだからな」

私の耳元で言う。

恥ずかしくて、それでいてくすぐったい。

顔が、次第にほてり出す。


「紫音くんのバカ…」

私は、俯きながらその言葉を言うのに精一杯だった。

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― 新着の感想 ―
[一言] はじめまして 短編新着からきました^^ いやー、鳥海先輩の男らしいこと!! こういう人はすごいですね。 そして、紫音くんのお姫様抱っこにはキュンとしました。 ひさしぶりにお姫様抱っこを…
2014/10/29 17:03 退会済み
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