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ひとまとまりの言葉3

作者: 三笠言成

今回ははっちゃけようということで、あのキャラクターたちを使いギャグに走ろうとしたら、世界観がめちゃくちゃになりかけました。

ぎりぎりで軌道修正しました。

いつもに増して拙い内容ですが、ぜひどうぞ。

 職員室に侵入しよう!

 そういいだしたのは一色だったか隼也だったか。

「なあ、一色。」

「俺もきっとちょうど同じことを考えていたよ、隼也。でもきっとそれを口に出してしまったらダメだ。」

「……だな。」

 ここで問題。

 今はいつでしょう。

 正解は、テスト前日の夜十時です。

 第二問。

 なぜ一色清と四喜隼也はこんな夜遅くに生徒用靴箱の前にたたずんでいるのでしょうか。

 正解は、二階にある職員室に行くための階段の前に、謎のロボットがいるからです。

 そしてそのロボットは物音に反応して、物音のした方角に腕から放った火炎を浴びせるからです。

「やっぱり言わせてくれ一色。」

「……じゃあ、同時に言おうよ。」

 目で合図をする二人。

「……なんで俺たち、こんなことをしているの?」


 時は少しさかのぼり同日の午後一時過ぎ。


「明日からテストって言う都市伝説信じる?」

「一色まだ都市伝説とか信じてんの? そろそろ高校生なんだから現実を見ろよ。」

「あなたが見なさいよ現実を。そもそも今日授業が四限までしかないのだって明日からテストが始まるからじゃない。」

 辛辣なのはサキ。

 彼女は優等生であり、優等生だからこそ逆にテスト勉強などしない。

 彼女曰く「日々の授業をしっかりと受けていたらテストなんて困らないわよ。」と。

 一色たちみたいな者がいるから勘違いされやすいが、実はこの学校は全国でも有数の進学校であり、テストはえげつない。

 いくら日々の授業を真面目に聞いていても、テスト勉強することなく学年で一桁の順位にいられるほど甘くはないはずだが。

 ここで一色が何か思いついたような顔をした。

「……なあ、隼也。」

「忍び込むつもりか。」

 間髪入れずに隼也も彼の言わんとすることを的中させる。

 忍び込む。

 彼らはそういった。

「待って、清くん。忍び込むって? 」

「言葉通りの意味さ。」

 なぜか誇らしげに胸を張って答える一色。

「今から勉強をしたところでいい点なんて取れないでしょ。もう今から半日後にはテストが始まるんだから。だから……職員室に忍び込んで、テスト問題を借りに行く。」

「……借りに行くって…」

「何を心配しているんだ地和さん。」

 不安そうな顔をするサキを言いくるめるかのように口を開くのは当然隼也。

「こっちには、俺と、一色がいるんだぞ。」


 俺と、一色がいる。

 一見すると中二病だとか思春期だとかいう言葉で片付けられてしまいそうなこのセリフだが、今現在のこの学校において、この言葉はとても深い意味を持っている。

「それは、そうね……なんせ、『人目につかない』と『一を聞いて十を知る』だからね。」

「そうだよサキ。俺の能力があれば、まず見つかることはない。それに隼也の全能が加われば、ほぼ確実に職員室に忍び込んで明日から始まるテスト対策ができるってものだ。」

「そんなに上手くいくとは思えないけれど、失敗するとは言えないのがこの二人なのよね。」


 慣用句。習慣として長い間広く使われてきた、ひとまとまりの言葉のこと。

 経緯を語ると長くなるのでここでは割愛するが、この学園に通う生徒は全員、それぞれ違った固有の慣用句をベースにした超能力を与えられている。

 たとえば、『足が棒になる』という慣用句をベースにした超能力を与えられた人物は、文字通り、足を堅い棒に変化させることができ、キック力が高くなっている。

 ……だからなんだって話だが。

そして一色清には『人目につかない』―彼が望んだ時、究極に影を薄くする能力。

四喜隼也には『一を聞いて十を知る』―事象のさわりを聞いただけですべてを理解することができる能力が与えられている。

本来この具現化された慣用句は小学生などにわかりやすく教えるための新技術だったが、安全性を確かめるために導入されたこの高校で『魔がさす』を使ってしまった教師三元により、全員に一つ超能力が与えられるという混沌とした事件が発生したのである。


「待って、四喜くん。」

「なんだ? 」

「なんでその能力が与えられているのに、あなたバカなの? 」

 バカなの? とは辛辣である。

「地和さんこそバカなのか? 」

 その言葉にむっとした様子で右手を胸の高さまで掲げるサキ。

 それを見てあわてて「いやごめんバカは俺だった。」と言い直す。

 ちなみに地和サキの能力は『骨を折る』で、その右手には文字通り骨を折る力が備わっている。

 右手で例えば右手をつかまれたら骨が折れてしまうわけだ。

「テスト中、授業中は『足を引っ張る』っていう慣用句が発動されているじゃないか。だから能力が使えないんだよ。」

 これも三元の策略である。

 彼は『魔がさし』て自分が楽しむために膨大な策を練った。

 そのうちの一つが授業中の慣用句禁止である。

 この今学校でおきている事件が外部に漏れるのは好ましくないというか最悪である。即刻技術が回収されるだろう。だから彼は、彼の味方の教師に『足を引っ張る』と『白紙に戻す』を与えた。

 授業中生徒に能力を使わせないことで、ほかの教師にばれるのを極力防ぎ、防ぎきれなかった分は文字通り白紙に戻す。また、学校の敷地を一歩でも出れば再び敷地に戻るまで中での記憶が『白紙に戻って』いることは当然だ。

 この三元の所業を止めるため、一色たちは『終止符を打つ』スキルホルダーを探しているわけだが……


「テスト中は使えないんだ…自分の能力が能力だから使おうと思ったことすらなかったわ。」

「だろうね。」

「地和さんはさすがに来なくていい。俺たち二人だけでやってくるから。」

「……わかった。気を付けて。」

「ありがとう。」


 そして一色と隼也は夜再び集合することを約束した。

 その様子を物陰で見ている人がいることに気付かずに……



「夜だよ!」

「深夜テンションだなあ。」

 集まった彼ら。

「さ、一色。職員室は二階だ、さすがにもう位置はわかっているな? 」

「当たり前だよ。で、隼也。作戦は? 」

 そう聞かれて背負った巾着から何かを取り出す隼也。

「ここに、おもちゃの無線がある。」

「おお、すごい。」

「十分会話はできるが通話できる距離が短い。まだ職員室に電気がついているということだから数人教師は残っているのだろう。つまり部屋に侵入するのは一色一人だけだ。」

「それはわかったよ、じゃあつまり、二階まで一緒に上がり、隼也は職員室には侵入しない、と。」

「そういうことだ。よし、いくぞ。俺たち二人の力があれば余裕だ。」

「おう。」


 こうして彼らは地獄へと進んでいった。


「靴を履きかえるのは危ない。足音を立てぬよう裸足で行こう。」

 おかげで暗い下駄箱付近に足音はこだましない。

「……ねえ、隼也。」

 一色がささやく。

「あれ、なに? 」

 一回から二階に上がる階段のところに何かを発見した一色は、それが何かを尋ねた。

「すまん、俺夜目が聞かなくて。何が見える? 」

「うーん……」

 この時の一色の思考はこうである。

 ……絶対あれだよな。でもなんでこんなところにいるんだ? 俺の見間違いかなあ…いや、あれは間違いなく……

「ロボッ……ト。」

「はあ? 」

「ロボットが階段をふさいでいる。」

「ロボットだと!? 」

「しっ、声がでか……」

 興奮気味に声を荒げた隼也を止めようとした一色だったがセリフは最後まで言えなかった。

 理由は一つ。

「アツっっっ!!!」

 炎が飛んできたからである。

「ちょっと、隼也!燃えてる燃えてる。」

「見たらわかる!どこだ、発信源はどこだ。」

 なおも止まらない炎をよけながら小声で話す二人。

 しばらくして、火炎の放射は止まった。

「発信源は……ロボットの、手だ。」

「はあああああああああ?」

 その絶叫に反応したのかまた炎に襲われる二人。

「一色!物音を立てるんじゃあ、ない!」

「わかってるよ!」

 小声で後ずさり。

「どうするよ、このままだと二階に上がれないよ。」

「……物音を立てないように抜き足差し足で横を抜けるぞ。」

「わかった。」

 きっとそんなにうまくはいかないだろうと思いつつも一色は了承し、息をひそめた。

「……」「……」

 そろそろと動く二人。ロボットがこちらに反応する様子はない。

 行ける、隼也がそう確信し、階段の一段目に足をかけた瞬間だった。


 グリン、と、不意にロボットがこちらに向き直った。

「やっ、べ……一色、戻れ!!!」

「くっ……」


 物音に反応する、階段に足をかけたら反応する。

「いったいどうすれば二階に上がれるんだよ……」

「それを考えるのが隼也の役目じゃないか…」

「そうなんだけどさ。俺たち二人は物理系の能力じゃないわけで、あれと戦うわけにもいかないし。あのロボットの胸に書いてあるマーク、ヘッドホンか? あれには何の意味があるんだ…」

 考える隼也。

 一色は既に考えるのを放棄したようで、あたりをきょろきょろしている。

 ちなみに、この階段以外侵入できる場所はない。

「……だめだ、何も思い浮かばねえ。」

 諦めて帰るしかないのか。と二人が思いかけた瞬間であった。

 突然、大きな音とともにロボットが崩れ落ちた。

「なっ?」

「二人とも、なにを諦めているの?」

 ロボットの横には、彼女がいた。

「サキ!来てくれたの!」

「ええ。ロボットの骨組みを壊したわ。これでこいつは無効化した。」

「おお!ナイス!」

 持つべきものは友であると実感した二人であった。

 階段を上る。

「二人とも、同じやつがもういないとは限らない。物音は極力立てないでいこう。」

 ロボットは一体とは限らない。

 隼也はそう思い、二人に忠告したがそれは杞憂ではなかった。

「おいおい……マジかよ。」

 二階に上がった彼らの目の前には。

 十体以上のあれがいた。

「もの音を立てるな、静かに近づいてあとは地和さんが破壊すれば……」

 互いに顔を見合わせ、息をひそめた。

 サキが一番近くにいた一体に近づき、その右手を……

「サキ、待って!」

 破壊行為は一色の鋭い声によって強制終了した。

「なに? 」

「隼也、下の階にいたやつの胸に書いていたマーク、覚えてる? 」

「マーク……? ああ!あのヘッドホン…って待てよ。じゃあそいつの胸に書いてあるマークは、人の手だから。」

 数瞬思考する。

「触覚センサーか。むこうの、電球が書いてある奴は光センサー。」

「じゃあ待って、四喜くん。あの奥に見える、温度計が書いてある機体は……?」

「温度……センサー…………」

「まっ、まずいよ!!」

 思わず絶叫してしまった一色。

 三人は一斉にしまった、という顔をするがもう遅かった。

 音センサーを内蔵しているものが三体、こちらに向けて炎を噴出してきた。

「階段を、降りろおおおおおおおおお!!!」

「この程度の炎なら何とか耐えれるわ!」

「待って!炎って要するに、光じゃないの? 」

「それに熱でもあるなあ!これはいよいよ熱いぞ俺たち死ぬのか? 」

 十体以上の火炎放射を浴び、三人は四方を炎で囲まれた。

「四喜くん!もう一か八かあたりにいるロボットを破壊するわ!触覚に当たったらもうあきらめる!」

 サキがそう判断し、一番近くにいたものを触ろうとした瞬間、凛とした声が辺りに響いた。

「地和サキ。それは触覚型よ。」

 その声の主は、強引にサキの右腕をつかんだ。能力発動中の右腕を。

 ごきん、と奇妙な音を立ててその女の腕が折れた。

 しかし悲鳴は上がらなかった。

「ご、ごめんなさい!大丈夫ですか?」

 焦るサキ。

「大丈夫よこのくらい。『痛くもかゆくもない』わ。」


 沖野嶺花の登場である。


「沖野さん!」

「貸し一だからね。別にたまたま学校に忍び込む話が聞こえてきたから心配で様子を見に来たわけじゃないんだから。」

「……ありがとう」

「礼には及ばない。絶体絶命には変わりないのだから。」

 そう、沖野が合流したとはいえ四人はいまだ炎の中。

「え? 何か作戦を持って飛び込んできたわけじゃないの?」

「そんな都合良いわけない。」

「じゃあ待って、本当に俺たち、死ぬんじゃない?そろそろ息が苦しくなってきたよ。」

「いやまじで死ぬかもしれない。」

「なんでそんなに冷静なのさ隼也!」

「一つ思い当たることがあるからだ。」

「思い当たること?」

「何の保証もない仮説だが聞いてくれ。この仕掛けはおそらく三元の仕業だろう。普通の教員がこんなロボットを設置するわけがないからな。それなら、だ。なぜこんな物騒な警備員を配置している? おそらくだが、三元は、今日ここに俺たちが来るのを知っていて、この警備を設置したんだと思う。こんな警備毎日つけていたら誰か気付くだろうから。」

「その仮定が正しいとして?」

「三元は自分の策略で生徒を殺すと思うか?」

「……思わない。あいつは、殺人だけは絶対にしない。」

「だろ?だから」


「これは、幻覚だ。」



「……」

「……」

「……熱い。」

「熱いな。」

 いまだ彼らは炎のなかだった。

「おい!俺は看破しただろ!なんで解けないんだよ!」

「四喜隼也。あたしは、もともと三元側の人間だったから聞いたことあるんだけど。『一泡吹かせる』能力者がいて、発動条件さえ満たせば本人以外には解けない幻術を使うらしいわ。」

「じゃあ今も俺たちはどこかで寝ているということか……どうする?」

「どうしようもないよ。死なないことが分かったんだから、テストは諦めて熱さを我慢するしかない。」

「あたしは熱くないけどね。」

 

 すると突然、景色が反転した。


「どっ、ここはどこだ?みんないるか?」

 どうやら四人とも、校門の前にいたらしい。

「幻術が解けた……?なんでだ、本人がといたのか? 」

「それはないと思うけど…」

 四人が試行錯誤している時だった。

「『終止符を、打ちました』」

 この声が聞こえてきたのは。

 あたりを見渡しても誰もいない。

 しかし確かにこう聞こえてきた、終止符を打った、と。

「終止符を打つ、だって?」

 隼也が絶叫する。

「俺たちが探していた能力者じゃないか!実在したのか!」

「四喜隼也、どういうこと?」

「俺たちは三元のこれを止めるために、『終止符を打つ』スキルホルダーを探していたんだ。そしてたった今、俺たちがかかっていた能力を解いてくれたのが、その人なんだよ!」

「女の声だった。」

 サキが補足する。

「ああ。これで実在することもわかったし。女だということもわかった。また一歩目的に近づいたぞ!なあ、一色。」

 隼也が呼びかけた先に一色はいなかった。

「あれ?清くん?」

「いつの間にどこに行った? さっきまでいたよな。」

 どうやら一色は固有能力『人目につかない』を使用し、どこかに行ったようだ。

 と思ったら戻ってきた。

「ほら、これ、テスト問題持ってきたよ。」

 職員室に忍び込んでいたらしい。

「一色…お前ってやつは。」

「これで明日のテストも安心だね、隼也。サキは見る?」

「私はたぶん明日も九割五分は堅いからいらないわ。」

「じゃあ隼也、あそこのコンビニでコピーして渡すよ。」

「サンキュー。」

「あの……」

 沖野がもじもじしていた。




「あたしにもそれ、見せてくれない?」

ありがとうございました!

ちょっとだけお話も進みましたね。

次回はちゃんと書きます。

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