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異世界を架ける者  作者: ソラ
第八章 王都奪還
102/107

102.火の精霊王


じりじりと太陽以上に輝く、光の柱がユートの目に入る。

アシュハルを見据えたまま、ユートは円を描くように歩き始めた。


「ふっ!!」


そして、一瞬の気迫と共に飛び出したのはほぼ同時だ。

いや、きっとアシュハルの方が早かったに違いない。

しかし、旅の間に鍛えられたユートはすぐさま反応する事が出来たのだ。


(軽い……?)


一撃を受けた後思ったことは、オルレアンさんよりは軽く、ヤフィエルさんよりは遅いという事だった。だが、それはすぐに小手調べだったという事を思い知らされた。


右から切り払われる剣を、左に受け流しそのまま、相手の背後に回る。

だが、アシュハルはなんの苦もなく、ユートの剣をはじき上げた。

続く追撃はない。まるで遊ばれているかのように最初は穏やかだった。


(まいったな……、これじゃ子供と大人の勝負だ)


言い訳はしたくないがこっちは、利き手ではないのだ。

そして火焔のいった通り身体のバランスが悪い。

傷は癒え、十分な魔力強化が出来る様になったとはいえ以前の状態とは比べようがない。

対して相手は、自分よりも体格は上だ。

リーチの長い腕から繰り出されるのはエルフの剣に似た長剣だ。

鞭の様にしなる攻撃は、こちらが責める暇はない。

しかも、きっとどちらの手でもアシュハルは同じような剣技を繰り出せるだろう。


(勝ち目なんてない……だけど)


そう、初めからこんな年になって始めた付け焼刃の剣で戦って勝てるつもりはない。

だが、自分が持つのは火の精霊王たる化身の火焔なのだ。

ただ、目の前に向けて全力で剣を振り払うだけで、眼前の敵は一掃される代物だ


(けど、それじゃ勝ったことにはならない……!!)


例え火焔の力で勝ったとしても、アシュハルの言った通り剣のみをよこせ、に繋がるのだろう。

ただの意地かもしれないけれど、自分が決めたことだ。

エルシェナにも約束したことがある。

これを譲るわけにはいかないのだ。


「なるほど、まだ子供にしては力は強い……だが」


全力を出したユートの一撃は、さすがにアシュハルを膝を折った。

しかし、不敵にも鼻で笑った言葉はユートの浅はかさを見透かしたものの様だった。


ガクンッ、といきなり視界がぶれたと思うと、膝に痛みを感じた。

ただの素早い足払いに体制を崩されたのだと理解し、すぐさま飛びのく。

だが、


「うわっ!!」


認識などしていない。

ただ、右に傾いた体が、反射的にそのまま飛び出していただけだ。

一瞬前までユートが飛びのいた地面は、二つに避けていた。

通り抜けたのは鋭い風の刃だ。

決闘を見ていた観客まで届き、反応出来たのものが土の精霊術でそれを防ぐ。


とんでもない威力だ。

風の精霊術が得意なエルシェナでさえ、こうも強大な力を放てないだろう。

それだけ精霊を従えれるという事なのか、いやそれより問題なのは速さだ。

当然、ユートは精霊術を警戒していた。

魔力線を視界に捉える事を怠ってはいなかった。

しかし、魔力線が空間に作用するその瞬間を速すぎて見切る事が出来なかったのだ。


「どうした。なぜ精霊王の力を使わぬ、殺す気で来てくれなければ意味がない」

「……僕はあなたを殺す気はないですよ。だから倒すつもりです」

「そうか、ではそう悠長な事を言っている暇はなくしてみせよう!」


殺気を頭上に感じたユートは、とっさに飛びのいた。

瞬間、竜巻と化した風の猛威が砂を削り、突き刺さる。

また、魔力線を見る事が出来なかった。

とはいっても、ユートの魔力線を妨害出来る力など知れているのだが。


「火焔!!」


一声叫ぶと火焔が答えてくれ、ユートをさらに取り囲もうとしていた風の竜巻が消え去った。

それ以上の炎が空間を充たし、マナごと魔力線を燃やし尽くしたのだ。

だが、炎の幕を恐れる事なく突き破った白刃がユートに迫ってくる。

なんの考えもなく、このままアシュハルの剣を焼き尽くそうとする考えは裏切られる。

刃の周りで発生した風が、ユートが構えた火焔を受け流したのだ。


「ッあ!」


なんとかかいくぐり躱したつもりだが、風の刃がユートの額を切り裂く。

数メートル一気に飛びのいた所で、血が砂にいくつも垂れてゆく。


「……!!」


悲痛な声を凝らすような息遣いを感じられた。

アシュレリだろうか……。

周りの様子を確認する暇などない事はわかっていた。

左目に流れ落ちてくる血をぬぐい、火焔を構える。


(くそ、やられた……!!)


またも先手を打たれてしまった。歯ぎしりをする。

相手にしているこっちにしたらいつもの常とう手段だ。

ユートの足元は砂に埋もれ、がっちりと土の精霊術によって固定されているのだ。

しかも砂を弾き飛ばそうと火焔を振るおうとする前に、風の刃が飛んできた。

火焔の炎で防ぎ、前を見た。


「君は戦士相手の戦い方をどうやら知らないようだな」


アシュハルの先ほどユートがいた位置に悠然と立っていた。

さすがに火焔を突き破った前腕の鎧は、焼け焦げ赤い皮膚が見て取れる。

だが、それだけだ。

剣は傷一つなく、疲れた様子もない。


「相手の術を知らぬ以上、徹底的に動き回り先制して敵の動きを断つ、だ。誰か教えれる者はいなかったというわけか?」


あちゃー、とどこかでオルレアンさんの声が聞こえた気がしたが、今考えても仕方ないだろう。


「まさか、自分がこんな所に立つことになろうだなんて、夢にも思ってなかったわけでして」

「はっ、はっ。面白い事を言う。ならばこそ、その重荷から解放してやろうと申している。恥じる必要はない。君はまだ子供だ。その力、鍛え続ければ栄誉ある栄誉ある戦士になれるだろう。ここで命を燃やす必要はない」

「そういわれると願ってもない申し出に思えます……けど」


ユートは、アシュハルがじっと見つめる火焔を力強く握った。

言葉の続きはもういらない。

これは自分が始めたことなのだ、誰かに譲る事は許されない。

自分が許したくないんだ!これは自分の意思だ。

そして、やるべきことをなしているのは今だ!!


「譲るわけにはいかない!!」


すぐさま眼前に火の壁を作り出した。

例え戦い方を教えられてなくても知っていることはある。

見えなければ精霊術は使えない!

すぐさま足の楔を解き、アシュハルを取り囲むように炎の壁を操作した。

ぐるりと取り囲んだ炎は、空高くまで立ち上り、壁をますます厚くしてつく。

並みの人間には脱出できない。すれば跡形も残らないだろう。


勝敗は決した。

剣の腕では、全く相手にならなかった事は仕方がないだろう。

卑怯と言われてもいいだろう。元から勝てる見込みのない相手だ。

そして、相手が気絶するまで炎で、蒸し殺すつもりはない。

負けを促す声を掛けようとしたところで、アシュハルのよく通る声が聞こえた。


「あいにくだが、私は全ての精霊を操れる。私の番だ!」


すると、一気に水が蒸発した様な白煙が上空に立ち込めた。

そして足元を揺るがす振動と共に、圧倒的物量を持った砂が隆起し始める。

その動きは全てアシュハルが立っていた位置からだ。

そして大量の砂が火焔の炎を押しつぶすように噴き出してきた。


(燃やし尽くす事は出来ないか……うわっ!!)


地下水だろうか大量の水を含んだ砂は、火焔の炎をもみ消さんとばかり押し寄せた。

それはユートごと飲み込もうと迫る。

慌てて飛びのこうとした足が砂に取られ、バランスを崩してしまう。

それをアシュハルが見逃すはずがないと、すぐに気づいた。


「遅い!」


とっさに火焔を構えたが、ほんの一瞬だ。

ほんの一瞬だけ拭いた体を貫くような風が、ユートの体を撃った。

タイミングをずらされた剣撃は、アシュハルの風をまとった剣ではねのけられる。


「もらいうける、その宝剣を!」


何をされたのかはまるでわからなかった。

ただ、握っていたはずの火焔が腕から零れ落ち、その事に慌てる暇もなくユートは蹴り飛ばされた。

なおも滑り続ける砂がユートを火焔から遠ざけてゆく。

左腕を見ると、力が抜けたように手首が垂れさがっていた。

わからないけれど、関節をはずされたか折れたのか、のどちらかだろう。

とんでもない早業だった。

今は、熱を持っているだけだけど、きっと後で痛みが襲うに違いない。

それよりも今は……


「ダメだ!アシュハルさん。火焔に触っては!!」

「それを決めるのは君ではないであろう」


さすがにあれだけの大規模な精霊術を行ったアシュハルは、肩で息をしていた。

そして腕一本の代償としてはさすがに安いが、アシュハルの剣は根元から焼け落ちている。

だが、それを捨て、火焔に手を伸ばす判断は一瞬だった。

止める暇なん手ものはない。

だから変わりに心の中でありったけ、火焔に叫んだ。


(火焔!!頼むから、その人を殺さないでくれよッ!!)


火焔からの返答はなかった。

ただアシュハルが地面に突き刺さった火焔を抜きとっただけだった。


「ぐっ……」


うめき声と共に、肉の焼ける匂いが立ち込め、アシュハルは苦悶の声を上げる。

しかし、ただそれだけだった。

火焔が拒絶する事なく、アシュハルは火焔を確かに手に入れた。


(そんな……)


それは安堵だろうか、それともショックだったのかわからない。

けれどもユートは眼前の、火焔を握る屈強な戦士に一つの想いを抱いてしまった。


彼は火焔に認められたという事なのだろうか。

もし、火焔が良ければ、彼に預けた方がうまく扱えるのではないだろうか。

ふと、そう思ってしまった。

元々、火焔がユートを選んだ理由だって、助けてほしいとお願いしたからだとか、よくわからない理由だ。

でもこうして火焔を奪われると、確かな喪失を感じた。


「確かにすさまじい力だ。これを振るえば私など一瞬で塵と化していたであろうな。だが、君は未熟だった。それでは力を得ても何もなす事は出来ないだろう。分不相応というものだ」

「…………」


言葉が出ない。

火焔が何もしていないのを見ると、もしかしたら火焔自身もユートのふがいなさを見て、決めていたことなのかもしれない。もっと良い使い手をと。

だからこそ、最初あれほど火焔らしくなかったのではないのか。


(火焔……そうなのか?)


勝敗は見るまでもなく決まってしまったのだろう。

戦う手段を失ったユートに残された道は、殺されるか敗北を認めるしかない。

けれども……


「さあ、負けを認めよ。私は君の命を奪う事はしたくはない」


ああ、左手首が痛い。額から流れる血のせいで頭がくらくらする。

近づいてくるアシュハルが目に入るが、どうしようかと迷う事も考えれなかった。

どこか遠くで、頭の中だろうか、負けを認めろという心配する声が聞こえている気がする。


そして眼前にアシュハルが立った。

握った火焔からはアシュハルの血が、刀身にそって流れ落ちていく。

すっと挙げられた刀身が、ユートの首筋にそっと添えられる。


「認めるのだ」

「……いや、認めれない」


死んでもやり遂げる覚悟をもうすでに誓ったのだ。

それをここで捨て去ってまた元の自分に戻るわけにはいかない。

でも、だからこそ自分の事は良く分かっている。


「……火焔、僕は言ったよね。助けてくださいって……そして一緒に戦ってくれるって」


何をふざけたことを言っているのだと自分でも思う。

でも、力のない自分は、いつだってこうするべきなんだ。


「そりゃ、僕は力がないさ。ご先祖様と比べるまでもない、でもこれは僕がしなきゃいけない事なんだ。だから僕に力を貸してほしい。他の誰でもなく」

「何を語っている?」


そうか、アシュハルは知らない事なのだろう。

精霊は意思を持ち、人が言葉を語りかける事を待っている優しい存在なのだという事。

特にこの苛烈な意識を持つ、子供の様な火の精霊王は、そうだという事を


「わらわは別にお主に言った事を反故にしたつもりはないぞ」


ふっと言い切った後力が抜けたユートを支えたのは、赤い髪を持つ少女だった。

落ちかける瞼をなんとかして開くと、アシュハルの手から火焔が消え去っている。


「じゃあ、なんで答えてくれなかったのさ」

「それは……その、ちょっと悩み事があっただけじゃ!」


なにやら存ぜぬという風に鼻をならした火焔を見たユートはなんじゃそれ、と気が抜けた。


「火の精霊王、私は彼に打ち勝った。そしてあなたを持つにふさわしい力を見せたはずだ。この子ではなく私が選ばれてよいはず」


アシュハルが片膝をついて、ぐったりと倒れるユートを大事そうに抱えた火焔に語り掛けた。

しかしその反応は苛烈だった。

見られるだけで体の芯から燃え尽きてしまいそうな赤い目を持つ精霊は言い放つ。


「人間、貴様らがどう弄しようと精霊の知ったことではない。わらわ達は自ら選んだ行動をとるのみ、わらわはこの者を選んだ。貴様を選ぶことはない」


アシュハルは震える左手をぎゅっと力強く握りしめるとぎゅっと目を閉じた・


「わらわは……火の精霊王である。この者とこそわらわは貴様ら人間と共に行こう!」


そういうと火焔は姿を消し、ユートの手元には何事も無かったかのように刀が現れた。


「うっ……」


気が付くと、暖かな光がユートの目の前にあった。

額の傷が癒えていくのを感じる。

視線を動かすと、アシュハルが穏やかな表情でユートに手を当てている。

それから、左手を持ち上げるとすでに添え木がしてあり、治療が終わっていた。


「気づいたか」

「アシュハルさん!!……えっと勝負は……」


少し前に倒れ伏してからの記憶があやふやだ。

確か、人前に姿を現すのが嫌な火焔が何か告げていたような……。


「私の負けだ、ヤードよ」

「えっ……でも僕はあなたには勝てなかった。到底力が及ぶものではなかったです」

「それはそうだだが、もともと私にとっての勝負は、精霊王に認めてもらうものだった。その思いは果たされなかったという事は、私の負けというわけだ」

「そう……ですか。火焔が……ってことは……勝負に負けて試合に勝ったって事でいいんですか?」

「ふっ、君は時々面白い事いうな。さ」


治療が終わったのだろう。

アシュハルが体を起こそうとしてくれる。

もうすでに頭の痛みも、体の不調もない。

おもったところで、アシュハルの左手に気が付いた・


「その火傷!」

「ああ、まだ治すつもりはないのだ。これ分不相応なものに挑んだ代償だからな。……いや、挑んだだけ得られた勲章ともいえる、か」


痛ましく変色した手をなんでもないかのように自嘲して笑っている。

後で火焔に何か言ってやろうかと考えているとアシュハルがこちらをじっと見てきた。


「君はエルシェナ姫と親しい仲なのだろう」

「えっ親し、いや……そうですけど」

「ならば、王を倒し、彼女を救うのは君の役目なのだろう。これはただの私の感だがな」

「はい、そのつもりです」

「ならば、私も約束通り、君に従い剣を振るおう」


アシュハルはそう言うと、ユートに向かって一礼した。

去っていくのと入れ替わりに、皆がやって来た。

心配や賞賛の声が上がる中、とりあえず、ユートはオルレアンさんに小言を言っておこうと考えながら、火焔を優しく握った。

ありがとうと感謝を込めて。


ああ、これで障害はただの敵だけだ。

煩わしい事はなく、ただ火焔を振るえばいい。

そしてエルシェナを元の世界に戻し、魔女と魔王を打ち倒す。


ユートとアシュハルの決闘の後、その影響があってか軍議はすんなりと決まった。

西にはモホークとカノート一族、そしてまっすぐ王都にはユートに付き従う軍勢。

そしてセルランディ族の地に向かうのはアシュハル率いるタスカローネ族と決まった。

ハイベリアはアシュハルに全てを任せ、王都に攻め入る事にしたそうだ。

着々と準備が整っている、けれどもそれ以上に敵はすぐに迫ってくるだろう。


----------------------------------------------


昼下がり、車から降りた村越警部と福部刑事はあまりの寒さにコートを合わせた。

雪でも振りそうだと思いながら、足を動かす。

目的地は住宅地の裏にある災害用のため池だ。


通報があったのは水道局の職員からだった。

元々は近隣住民から悪臭がするとのことで、水道管を調査に来た職員が最初の発見者だ。

少し前に厳戒態勢で未確認の巨大生物騒ぎになったので、そいつではないかと思ったものがいたのだ。そしてその姿は、ただ片づけるにはあまりにも異形なものだった。


「こっちです」


死体を処理しに来た人が、処理する前の状態を残してくれていた。

近づくだけで悪臭が漂ってくるのが二人にもわかった。

シートの上にのせられたものがあり、それをはねのけると確かに死骸があった。


だが、ただのクマの死骸だ。


あまり知らない者なら確かにクマと言ってしまうかもしれない。

しかしどこかいびつだ。

何故かクマにない長い尾があり、爪が異様に長く伸びきっている。

そして体はミキサーにでも放り込んだようにズタボロで、紫色の体液がしみだしていた。

まるでどこかの研究所で実験動物にされたキメラだと思うほどだ。


「全然、違いますよって、あれとこれじゃ」


福部刑事は、村越警部を振り返りながら言った。

あの黒い化け物を見たからには、当分忘れられそうにはない。

これも十分奇妙なものだが、あれに比べたらまだかわいいものだ。


「ツキノワグマの標準サイズですよこれじゃ、って村越さん何やってんですか?」

「……やはりか」


村越警部は職員から借りたゴミ拾いのトングで、死骸の腕を押しつぶしていた。

すると転がり出てくるものがある。

おしつぶされた金属の塊のようなものだ。

それはよく親しんだもので、見間違えるはずはない。


「わざわざ確認しなくてもわかる……やはりこいつはあれだったものの様だ」

「ええっ~……じゃあ、な、なんでこいつはこんな小さく……」

「知るかっという感じじゃな……」


まるでわからんのを考えてもしょうがない。

警部は鑑識から借りたカメラで写真を撮ると、後の処理は職員に任せた。

まさか持って帰ったら上司にどんな事をいわれるかわからないし、焼却処分した方がいいだろうと判断したのだ。


「確か、こいつが見つかったのがある程度直系のある土管じゃったよな」

「ええ、行きついたのがこの池ですから、どこから来たのかまではわからないですね。

水道局の話だと、天神市、もしくは隣の県って事も考えられるそうです」

「やれやれじゃ、そこまでは到底対処できんわい」


ため息をついた村越警部は、池の柵に両手をついた。

ただでさえ、自分たち二人が未確認巨大生物の報告をしたので白い目で署内で見られているのだ。

まあ、これはほかにも目撃者はいるし、今回のクマの死骸で一応の解決は見て取れるだろう。

だからこそ、次に打てる手といえばあまりないといわざ得なかった。


「帰ったら、こいつをすぐに現像して、確認に向かってくれ」

「えっと、確認というのは?」

「あの子達じゃ、ついでに反応も見てきてくれ。特に優人君のな」


そして村越警部はまたもや、やれやれという風に思い腰を上げた。

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