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転写因子

私?梅原美香よ!ありがたいでしょ!・・何か文句でもあるのかしら?・・・・・

その・・ごめん・・飛ばし過ぎたかも・・・。

で、作者の天照が最近一話あたりの文字数が激増した事に対して「小分け執筆してスタイリッシュにしたい」って言ってるけど、あいつ結局スタイリッシュの意味を探す旅に出ようとしてんの。

でも普通は執筆のレベル上げる旅に出なさいよって話じゃない!?だからやっぱそこは文字数多くても伝えきるべきよね!

そしたら暇つぶし程度にはなるんじゃない?



私が与えられた武器”ソメイヨシノ”


刀を握ったのは初めてなのに何でだろ?ちょっとだけ懐かしい気がした。


晩酌の時にコカトリスの見せたあの背中。前にもどこかで見た事があるような気がする。

・・・・・・・

・・・・・

・・・

「めぇえええん」「こてぇぇえええ!!!」

今日も早く目が覚めたのでその分早めの登校をして屋上の手すりに気怠く腕を掛けて居る。コンビニで買った肉まんを口にくわえながら道場の中で朝練に汗を流す剣道部の姿をぼーっと見ていた。


『ビュン、ビュンっ』


竹刀を振る速さはやはり初心者の自分の目では追いつけない技術レベルだが、彼等は防具に守られ武道というカテゴリーの中で公式試合をしている。同じ刀を振るう状況下でも昨日の凌霄との殺し合いとは精神性が違う。


「おい、桜」


屋上の戸が開く音と同時に後ろから男の声がした。


(朝も早よから声を掛けてくる物好きは誰だ?)


生憎、低血圧なので声も無く振り返るとそこには隣の席の皮肉屋”竹本”が立って居た。


「あら、珍しい。何の用?」

「お前に話がある。今日の放課後学校下の公園に来い」


本当に珍しく貴重な機会、でもこのぶっきらぼうで高圧的な態度が気に入らない。こっちのスケジュールを聞かないところを見ると結構な暇人だと思われているのだろうか?確かに予定が無いのは事実だがそのまま首を縦に振るのも釈に触るので、あえてここは一発意地悪でもしてみよう。


「あのねぇ、私だって用事という物があるの、勝手に人の予定を組まないでくれる?」


少しは怯むかと思ったが相変わらず表情一つ変えずにこっちを睨んでくる。


「言っておくがお前に拒否権は無い。もし勝手に帰るような事をしてみろ、力ずくでお前ん家まで連れ出しに行くからな」


ミスター倫理性の竹本にしては少々強引である。何か相当重要な話なのだろうか?


「わかった、空けとく・・」


でもなぜそこまで強引に呼ばれるのだろう?まさか・・・愛の告白!

一回手すり越しに校庭を見て、息を呑んでから振り返る。


「あのね、私は他に・・それにやっぱ何ていうかもうちょい・・お互いちゃんと話せるようになってから・・・友達でいよ・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

・・・・・・シーン・・・・・・・

振り返ると既に彼の姿は消えていた。


「・・・・・・・いや、わかってだけど・・・やっぱ、イラつく!!」


顔は良いんだけどね。今時イケメンというだけでは落ちません。

「めぇぇええん!!」

静まった屋上に剣道部の掛け声だけがこだまして聞こえて来るのだった。

・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・



朝の教室、授業前の一時いっときに雑談が飛び交う。勿論私も大好きな友達の香織との何気ない会話に花を咲かせていた。


「ねぇ小春、今日の放課後一緒に買い物に行かない?」

「え、今日?」


さり気なく隣の席に目を向けると竹本が一瞬”お前一人で来い!”と無言の圧力で視線をぶつけて来た。


「あぁ、ごめん。今日は用事があるんだ。急ぎだった?」

「ううん、大丈夫。急にごめんね!」


こちらの謝罪に対して香織も気まずそうにやり過ごそうとするが、心の中から後ろめたさが消えない。


(何で嘘をついてまでコイツと?)


もう一度竹本の方を向いて睨みつけるが、今度の彼は読書に夢中でこっちの方など見向きもしなかった。

香織を一緒に連れて行ってそのまま帰りに買い物に行ければベストアンサーだったのに、何ともおかたい人だ。

松野君だったらもっとこう・・フランクっていうのかな?社交的な振る舞いだっただろうに。

ちなみに”昨日キミのために命懸けました”とは言えず普通の女子高生に戻る訳ですが今日の朝に恐る恐る登校してみると坂で戦った痕跡までもが消えていたのだ。

最初は”なぜ?”と不思議に感じたものの、すぐに記憶がフラッシュバックした。

凌霄を取り囲んだ集団。恐らくあの人たちが全てを消し去って行ったのだろう。


(あんな奴らに松野君は渡せない!!)


ちなみにあんな奴らとは、さり気なく梅原さんも含まれている。

・・・・・・・

・・・・・

・・・

・・


『キーンコーンカーンコーン』


一日のローテーションに慣れて来ると学校も案外あっという間に終わるもの。

約束通り坂の下の公園で竹本と落ち合う。

「よし、行くぞ」

コカトリスもどこやらぶっきらな所があるがこっちはもっと冷たい。これで友達やらファンやらが普通に居るから世の中わからない物である。

納得が行かないフラグを立てながら家の反対方向の地区へと足を進めるが、何か気まずさを紛らわすための会話を出そうとしても一切共通点が浮かばない。


「ねぇ・・・」

「なんだ?」


軍曹が指揮を執っている時みたいな高圧的なイントネーションで言われるけど、私たちは戦争放棄の時代に生まれた普通の高校生なんだからもっと話しやすい受け方をしてほしい。こんな幕末の京都に魂を置いてきたような青臭いキャラじゃ絶対モテないでしょうに・・・。


(おかげで何を聞いたらいいかがわからないじゃんよ。どうするよ小春ちゃん?)


「・・あ、あのさ竹本は血液型何型?」

「いいから黙って歩け」

「・・・・・・・」

・・・・・・

・・・・・・


(ブーブー!!!そりゃあ確かに答えるに値しない質問かもしれないけど、ひどくない?もうずっと黙っててやる。この空気にあっちが耐えられなくなって謝ってきたら許してやらん事も無い)


それ開始!


「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

・・・・・・・・

・・・・・・・・


(いやっ、いつもと変わらない!)


無理に喋る内容を探すよりも、逆にこっちの方が自然かもしれない。



まるで巡回中の新撰組を彷彿とさせる重い空気を身に纏いながら街を練り歩き続けると先程までマンションやアパートが隣にあったとは思えない田舎の情景に出会う。野鳥が鳴き、紋白蝶もんしろちょうが飛び交う中、目の前の林道や田んぼの畦道あぜみちを突き進むと緩やかなコンクリートの坂を登った。

そして坂のてっぺんまで登って立ち止まる。


「ここは?」


そこには私たちが住んでるのと同じ様な作りの普通の民家が一軒立っていた。


「俺ん家だ」


やっぱり彼は自分家を紹介する時にも変わら無いイントネーションだ。それに対して正直な所、(こんな厳粛な空気の中でたどり着いたのがお前んちかよ!)という残念極まりない気持ちもあったけど、言えばモチベーションが下がると思ったので敢えて黙っておいた。

一方竹本はこっちの数秒間の葛藤など知るよしも無いまま玄関からずれて家の裏の方へと回り始める。


「あ、ねぇっ!」

「取り敢えずこっちの方へ来てくれ」


言われるがまま中庭を通って家の裏側にたどり着くと目の前に巨大な敷地が広がった。

道なりに敷き詰められた砂利じゃりや松などの植物に赤い鳥居が際立つ奥ゆかしい園庭だが、まるでお寺・・・。


「っていうかお寺だよね」

「馬鹿、神社だよ」


あべしっ!無い知識はひけらかさない方が身のためかもしれない。ミーハーな女子

高生なんだから大目に見て欲しいが彼は心の底から呆れた目でこっちを見ている。


「寺はインドから伝わった仏教が元になって作られた建物だ。神社はその前から国

内で崇められている神が住む場所。流派が違うんだよ」

神様というとコカトリス関連が頭に浮かぶ。


「えぇーっと、そーいうのって頭に輪っかを付けて裸のまま犬と少年を連れて行く・・・」

「それはどちらかというとキリスト教だろう・・・って何を言わせんだよ、調子が狂う。色々と名前の付いた神様をまつる所もあるが元々神様ってのは、山、谷、岩、滝、巨木、葉っぱなどの自然界に宿る思念の事を言うんだ」


いつも文句を言う割にはこうやって教えてくれる律儀な部分もあったりして、ついつい頷いてしまう。


「竹本、何気にスピリチュアルな事も考えるんだね」

「・・はっ!いや、そんなことを話す為に呼んだんじゃない。隣を見ろ」


竹本の目線の先を追いかけると、庭先に折れた巨木の幹が刺さっていた。


(これっ!)


びっくりして両手で口を塞いでしまった。この巨木、先日の凌霄との戦いの際に私が折った桜の木である。


「覚えが無いとは言わせない。お前、昨日あの場に居ただろ」


質問の内容の返答をどうするかよりも”何故、バレている!?”という気持ちで頭の中がいっぱいだった。確かにコカトリスが確認したハズ・・あの場に学校の生徒は一切残って居なかったし、たまたまそこを歩きに来た民間人にも会わなかった。

となると・・・。


(まさかっ!!)


驚いて慌てふためく心を必死に抑える私を余所よそに竹本の冷静かつ冷徹な目線は心の奥にまで突き刺さってくる。


「察しの通り、凌霄を回収した時のメンバーの中の一人として俺も居たんだよ」


昨日の戦闘終了後にコカトリスから聞いた危険な組織に竹本もいたというのだ。整理がつかない頭でまとまった事実が一つある。


「その・・・竹本は、陰陽師なの?」


この質問に竹本は目を合わせずにコクンと無言で頷いた。


「ここは寺では無いと言ったが、元々の仏教に祈祷の概念は無い。だから俺等、祈祷を目的とした陰陽師はこの社で活動をする」

「でも何で私が居たってわかったの?」


竹本がブレザーの両ポケットから何やら物を出したので目を近付けてみる。


「ん?」


良く見ると握られた指の先に繊維らしきものが付着していた。


「これは、お前がいつも身に着けているそのマフラーの毛先じゃないのか?あの時わずかだがこの繊維からお前の気配を感じた」


(・・キモいっ!)


竹本の研ぎ澄まされた能力は凄い!でも、勝手に人の気配を感じとられても困るので正直関心は出来ない。こういのを業界用語で”むっつり”と言うんじゃないのかな?

「それにこれも出てきた」

もう片方の腕には何やらゴミくずの様な物が握られている。


「げっ、それは!」

「そう、お前が買った肉まんを包んでいた紙だ」


桜 子春一生の不覚!走った時に落っことしてしまったらしい。


「お前、前から戦っているのか?」

「いや、今回が初めてだよ・・・」


彼がこれから何をしようとしているのかが全く読めず、何とも言えない緊張感が続く。念のため、コカトリスをすぐに呼べるようにポケットの中のスマホに手を伸ばした。


「来い」


そのまま竹本は奥の建物の中に入って行く。これは罠かもしれないけど、帰ろうとしたところで連れ戻されるだけだろう。不安を胸に抱えながら鳥居をくぐって彼の背に続いた。



引き戸を開けて屋内に入ると板で出来た床は割と広く、大人が二十人位は入りそうな立派な作りである。その奥にはろうそくの炎に照らしだされた巨大な仏像と更に厳重そうな扉があった。


「あの扉の向こう側に凌霄が居る」

「え?」


静かな部屋には人の気配など一切感じないものの、この奥にあの時の空気がそのまま押し込まれている。それだけは肌に感じ取れた。しかし扉を睨む私の肩を竹本が叩く。


「今は無理だ。この先ではうちの人間が結界を張り続けている。お前が行ったところで殺処分されるだけだ」


あのコカトリスが必死になって逃げた連中、行けば本当に命は無いのだろう。


「でも、なら何で私を呼んだの?」

「ここへ連れて来たのは取り敢えず現状を見せに来ただけ。本当の目的は別だ」


歴史を刻んだ木の独特の匂いが鼻に付く。鋭敏になった神経が”今”の先にある事実を求めようとしていた。


「その目的とやらをさっさと吐いちゃいなさい」

「・・だったらその前にお前は、お前自身を知る必要がある」


竹本がすべてを悟っている空気がちょっと面倒だったが今回の事件に関して何らかの情報を持っていることは確かだ。


「私が、私を知るって?」

「それを誰よりも知る人物を送ったはずだ」


誰?・・・・ん・・・・もしかして・・・。


「・・コカトリスの事?」

「あの方は数ある式神の中から俺が依頼した」


コカトリスが来た時に言っていた”陰陽師から依頼を直接請け負う式神システム”。その依頼者が目の前に居るって事は、私から松野君を遠ざけさせたのも竹本が危惧して行ったという事?


「貴方、今回の事件の真相をすべて知っているのね」

「知っているつもりだったが少しずつわからなくなってきた」


どこからかやって来た事実が捻じれて再びどこかへ行こうとする中に私は現れて来

たらしい。もがいて、もがいて、暗い波から砂浜に打ち上げられたのだから捻じれて見過ごしそうになった場所に振れる事を止めてはならない。


「コカトリスも知ってるの?」

「・・・直接聞いてみるといい」


そうと聞いたら黙ってちゃ居られない、出口へと向かって早足で歩く。


「桜」


竹本の声が背中越しに聞こえた。普段”おい!”とか”ピザ団子”など記号の様な名称で呼ばれるので、一番自分自身に馴染んでいるはずの名前なのに妙に真新しかった。


「何?」

「・・・・いや、そこまで送る」


こっちの方向はなかなか来ない地区だから、いざ帰ると言っても実際道に迷ってし

まう。竹本なりの優しさ・・というよりかは私が迷って帰れなくなる方が面倒で厄介なんだろう。

「・・・・・・・・・・」

部屋を出る前にもう一回厳重に閉められた扉を見た。こうしている間にもこの奥にいる凌霄は私達に対する恨みの念で部屋を覆い尽くしている。


「行くぞ」


その闇にすら興味が無いのか竹本は一回も扉を見ようとはしない。・・いや逆にその闇に振れ過ぎているのかもしれない。

声に引かれるように外に出ると、どちらとしての答えも出ないまま部屋の戸は締められた。



空が夕暮れの赤に包まれる中、お互い来た時と同じ様に無言のまま落ち合った公園まで足を進める。

田んぼや軽い林道を越えていつもの街の情景が見えてくるとやっと元の生活間の中に帰ってこれた気がしてとても心が落ち着いた。

ゴールの公園の前にある坂道を下る途中、うちの学校の制服の帰宅途中の生徒と何人かすれ違った。まぁ学年やクラスの違う人たちだったのでこちらにも目を向けずにすれ違う訳だが少しだけ緊張する。


大切な香織との約束を断って竹本との時間を取った訳だから・・・。


本来なら絶対香織との時間の方を取るし、もし無理な時でも隠し事はしない。だから今回は特にイケナイ気持ちがするので、いくら香織の家の方向とは違っていてもあまりこういう事はしたくない。勿論今日竹本に呼ばれた理由が大切で他言できない内容とはいえ、こういうのは最初で最後にしようと思う。


最初で最後に・・・。


「小春・・」


目の前の制服の子が黙ってこっちを見て立っている。


「・・・香織?」


その制服の子はこっちの方向に来るはずの無い香織だった。手には可愛らしくリボンの巻かれた袋が握られていた。


「小春、今日の予定って・・」


香織の声も袋を握った手も震えている。


「いや、その・・」


別にやましい事をしていたわけではないのだから、そう言えれば楽だけど今の状況はどう説明しても暗転するだろう。


「いや、ごめんね。小春がこっちの方を歩いているのを見たって聞いたから来たん

だ。その、別に小春が誰と一緒に居ても私の驚く事じゃないんだけどさ」

「違う、誤解だよ」


嘘ついて、竹本の家の方から一緒に歩いてきて”誤解”は無い。一体私は何を正当化しようとしているんだろう?しょうも無い言い訳の上で目の前の女の子の顔は悲しみを必死でこらえている。


「はい、これ」


抑揚のない声で渡された紙袋。


「え?私に」

「じゃあ、私帰るね・・・ごめん、また今度」


こちらの制止を振り切って走る香織。袖で目元をこする後姿が心に刃物の様に突き刺さった。


「桜・・」


竹本も気まずそうに香織の背中を一緒に目で追うが、彼女は曲がり角を曲がってしまい寂しいアスファルトの地面だけが目に焼きついた。


「竹本、取り敢えず今日の所は私も帰るよ」


悲しみの中で引きつった笑顔を見せて帰路に着いた。背中にずっと彼の視線を感じるがきっと私が同じ角を曲がった後に再び寂しいアスファルトを見届けるんだろう。


誰も居ない住宅街、香織がどこかに居るんじゃないか?と辺りを集中して見回しながら歩いて見るが気配すら感じない。


(さっきくれた袋の中に何が入っているのか確かめれば手掛かりになるものがあるかもしれない)


その場で袋から包を取り出してリボンを外した。

中には桜の香りがするアロマキャンドルと、うさぎが好きな私のために可愛らしいうさちゃんの刺繍の入ったハンカチが入っている。その奥にはメッセージカードが一枚。


『小春へ、誕生日おめでとう。小学校の頃からやってたプレゼント交換を続けてもうお互い高校生だねww本当は学校で渡そうと思ってたけど色々と直接相談したい事もあって放課後に渡すことにしたんだ!実はね私・・小春の隣の席の竹本君に片思いしちゃったんだ。私も松野君との関係を応援するから小春も竹本君に対する相談とかのってくれたら嬉しいな。』


「・・・・・・・・・」


・・・運命の皮肉。タイミングとしては最悪である。


(きっと今日の放課後もこの事を相談したかったんだろうなぁ・・)


自分のふがいなさ、どうしようもないすれ違いに苛立って、力の入った手が握っていた包の形状を変えた。

思い出してみれば数日前に屋上で言った”松野君を諦める”という突然のカミングアウトも含めて”私が竹本を狙っている”という伏線が出来上がってしまっている。

「香織・・」

そのまま走って街中を散策した。携帯にも電話を掛けたし、二人でよく行く店も覗いたがどこにも居ない。

やがて日も暮れ学生に代わりサラリーマンの帰宅姿が目につく、必死の捜索も虚しく香織はここら辺には居ないという結論が出た。

問題が起きた坂道の下の公園に戻り、一人でブランコに乗ると”ゆらゆら”とゆりかごの様に揺れる椅子は溜息しか出ない私をあやしてくれる。


(今から家に行ったら会えるかな?・・・でもなぁ)


正直どんな顔をして会いに行ったらいいのかわからない。もしかしたら時間が気まずさを緩和して明日ケロッとした顔で切り出した方が上手く流れるかもしれない。

項垂うなだれながらスマホを手に取った。


『誕生日プレゼントありがとう!うさぎが大好きなの覚えててくれてたんだね。竹本の事だけど今日は用事があってたまたま一緒に居たけど、恋愛的な事は一切無いんだよ(汗)私は松野君一筋だから竹本の事であれば相談にのるから言ってね(^ω・)-☆』


これ以上此処に居ても増々ネガティブになりそうだったので、一言メールを送って帰る事にした。

・・・・・

・・・・

・・・

・・

早速元気の無い私の様子をコカトリスは悟っていた。そりゃそうだ!何も言わずにベッドにうずくまってれば誰だって疲れてんのは分かる。

「どうした小春」

心配してくれてる心遣いに対して失礼かもしれないがそのままの体勢からもう変わりたくなかった。


「・・・今日、竹本の家に行ってきた」

「・・・・・・」


隠し事が親にバレた様な重い静寂が部屋を支配した。


「家の中に凌霄も居たらしいし、何より貴方が竹本に依頼されて私に会いに来たって。頭がパンクしそうだよ」

「小春・・・」


パンクした頭ごとこのままベッドに吸い込んで欲しかった。そのまま知らない世界にでもワープ出来たらどんなに幸せだろう?

でも柔らかい毛布にくるまれて現実世界に絡められた。


「何がしたいの?どうして私を巻き込んだの?」

「・・・そうだ、竹本に依頼されてきたのは本当だ。でも少しずつ距離を詰めて会

いに行こうと思っていたのだがお主が術式を使って某を呼び出した。巻き込まれたのではない。自ら介入してきたのだ」


これには顔を背けたままではいられない。コカトリスを睨んだ。


「だって、あのスマホの一件は偶然に」

「偶然じゃない。お主が才のある血筋だからだ」

「血筋?」


私の父はサラリーマン、母もパート、姉は保育士の専門学生、これだけ普通の家庭で何が血筋だ?


「最初は確証は無かったが、この数日間の中の行動で確信に変わった。特に昨日の戦いの剣裁き。間違いない」


昨日の戦いを思い返してもあんな無茶苦茶な斬り方をしただけで何がわかるのか。


「何でそんな事言いきれるの?」


コカトリスが窓の外を見た。


「・・・それは、某がお主の祖先に会った事があるからだ」

!?

「えっ?」

「某は元々霊獣では無い・・」

今、目の前に居る生き物は本当は何者なのか。ちょっと寒気がする。

「じゃあ、貴方は一体誰なの?」

「・・・・・」

コカトリスは遠くの夜景を眺めていた。

・・・・・・

・・・・・

・・・・

・・・

・・

平安時代後期、後白河上皇が政治を治めていた頃。

加山十兵衛という一人の武士が居た。口数は少なく、少々頑固者な部分もあったが剣の腕は高く評価され朝廷の政府からも高い信頼を得ている”時の人”である。

時が同じ頃、地方の領地を持った貴族に仕える侍女が一人。

名は”桜 咲耶さくや”。桜家を代表する剣の腕と美貌を兼ねそろえた才女。平安美人と言えば白粉おしろいにお歯黒、犬の様な眉毛が美人とされていたが彼女は目立つ容姿は戦闘に不向きという考えから常にすっぴんで現代の女性に近い顔立ちで過ごしていたと言われている。


後白河上皇に付き、物凄い速度で出世を果たした平清盛による守護・地頭の平氏制度によって中央集権だった国政が全国区に分離して行き渡り始めると、地方の小さな貴族に従事していた咲耶側の一族も裏方ではあるが勢力を徐々に拡大し中央地区に顔を出す機会も増え始める。

しばらくしてからの国衙こくがと呼ばれる当時の役所で咲耶と十兵衛の二人は出会う。

しかしその時、武士の世を志す清盛の政策により貴族は社会を切り盛りするかじ能力を失い、国の中で没落貴族に見放された十兵衛は既に職を失い路頭に迷っていた。

「お主、見てくれこそ変わってしまっているが、加山十兵衛殿とお見受けする」

国衙の入り口横で役人につまみ出されたまま絶望に奪われた目を咲耶に見せる十兵衛。


「・・・いかにも」



『ドサァァァ』



衣類は破れ、髪の毛もぼさぼさになった青年はそのまま役人から投げ捨てられると地面に突っ伏した。


「”時の剣士”とは聞いていたが、随分と荒れているな」


体勢を立て直そうと起き上がり、力なくしゃがみこむ十兵衛を目で舐めまわすように彼女は見下した表情を見せた。


「・・・貴族の衰退に伴い主を失えば剣士もただの浪人。刀鍛冶屋が『水晶石を使った新しい刀を作りたい』ということで鉱山へ発掘へ行く仕事も請け負いましたが、出てくるのは鉄鉱石ばかりで代替品にもなりませぬ。・・・今じゃ、浮浪者の烙印まで押されてしまった・・」


いじけて顔を伏せる覇気の無さ、かつての誇りを忘れ下手人へと成り下がってしまった滑稽さはまるで一つの時代が滅びたことを意味している。

だが咲耶は決して瞳を濁さずその足を一歩前へと進めた。


「馬鹿者っ!それで人として生きる誇りを自ら絶つというのか?お前の覚悟とはそ

んな物なのか?」

「某とて・・・」


消え入りそうな十兵衛の声に咲耶が耳を傾ける。


「某とてまだまだ誇りを護りとうございます」


虚無に満ちた言葉の中に憤りや苦悩など先程とは違う感情が入り混じっていることに彼女は気づいていた。


「だったら答えはひとつではないかっ!!」


予兆も無く声を上げ説教をする咲耶だったが、驚き不安そうにおもてを上げる十兵衛に手を差し伸べる。


「この国には依然としてお主の志を必要としている者達がたくさんおる。その力、再び振るってはみぬか?」


話しを終えた咲耶の表情に先ほどまでの威厳は一切残っておらず、優しい微笑ほほえみで十兵衛の返答を待つ。


「・・・・この志の元、大儀の上にもう一度刀を握りとうございます」


差し伸べられた手を掴み直した青年は滅びた時代から逃げず、翌世への後継人となる事でその瞳に命を吹き返したのだった。


可能性を得た者達と逆に失い行く者達が運命に翻弄される中で十兵衛は咲耶に拾われ、後に避けては通れないであろう後白河と平家の闘い(治承じしょう寿永じゅえいの乱)に向けて武士としての誇りと腕の再生に精一杯努め再び剣を握る。

信条として”国や社会、残った貴族へのために剣を振るいたい”というのが彼の表向きの名目ではあるが、実際は自分にもう一度可能性と死に場所を与えてくれた桜一族にその腕を振るいたいと心の中で恩義を感じ情熱を燃やしていた。


通常は自分達が治める領地に留まって政治を行うので、地方の小さい村の中にたたずむ古屋敷にて桜家は生活をしていた。その中庭で剣術の型を確認する十兵衛。


『ビュンッビュン』


振り下ろす刀は空気すら切り裂き全ての万物を両断するかの様な瞬速。


「精が出てるな」

「これは咲耶様、恐れ多い」


後で眺めていた咲耶の存在に気付いた十兵衛は急いで剣を鞘に収めた。


「お主の剣術は才に秀でている。本当はこの様な田舎の山奥に留めておくのはもったいない事なのだが」

「いいえ、めっそうもございません。この世の中、誰がために剣を振るうかは自分

で決めとうございます。私は今の環境を光栄に思います」


両膝をついて真剣に語る十兵衛に咲耶は吹き出した。


「結構、結構。いずれはこの国も武士が政治を治める事になろう。そしたらそなたの様な”義”が歴史を形造って行くのかもしれんな」


咲耶は遠く空を眺める。その瞳は庭先の桜の花びらが反射して桃色に輝いた。

十兵衛は分かっている、彼女の手はもっと深い真紅に染められ数えきらない勲章と罪を受け取って来た事。

貴族が蹴鞠けまりをして遊んでいる間にもその陰で命のやり取りを繰り返し、こうして勝ち残って自分を雇ってくれている。”剣の腕も器量も当時の自分と比べて勝ち目のない人間”これが十兵衛の中での咲耶の認識であった。


「なぁ、綺麗な桜じゃろ?」


咲耶が見据える先には何本もの大木が並ぶ。


「確かに立派に花を咲かせておりますな」

「この木の管理は大変でな。病気にもなりやすいし、夏には毛虫なども近づく。そ

のくせ花を咲かせるのは数日間だからのぉ」


柔らかな風に吹かれて桃色の花が揺れる様を十兵衛も体勢を変えて一緒に眺めていた。


「でも、桜には言い伝えがある。”さ”は穀物の精霊、”くら”は神霊が鎮座する場所。つまり”さくら”は穀霊が集まる依り代と考えられている。故にさくらは農繁期になると農民から祭りあげられ、その年の豊穣を司る神聖な木として崇められている」

「左様ですか」


百姓出の十兵衛にとっても初めて聞くが、親近感の湧く話であった。


「十兵衛よ。私はな、この桜の木の様に人々の拠り所になりたい。社会の秩序と暮らしの安定に尽力を注ぎたいのだ」


咲耶の中に留まり続ける真紅の赤は無情に流れる血だけでは無く、慈しみに対する情熱色でもあった。いや、血が流れたからこその贖罪しょくざいの色なのだろう。


「咲耶様なら、さぞ綺麗な花を咲かすことでしょう」


再び体を咲耶に見せた十兵衛が微笑み、それを見た咲耶がもう一度吹き出す。

このゆったりと流れた時間こそが桜一族が護ってきた証なのだ。

ここで咲耶が掲げた理念というのは当時の貴族にしてみれば酷く幼稚で愚かな思想故に誰も相手にはしてくれない・・・ただ一人の人間を除いて。


”松野 基房もとふさ”唯一、咲耶の考えを受け止め、資金や兵を提供してくれる貴族の末裔まつえい。この男が居なくて桜家の繁栄は無かったと言われている。

侍女として血に塗れた咲耶の手ごと愛撫み、個人の存在の全てを受け入れ始めいつしか咲耶も自分と同じ理念を持ち引っ張ってくれる基房には心を許し絶対的な信頼を置くようになっていた。

その二人のやり取りを十兵衛も遠目に何回か目撃していたが、主君の幸せな関係を心の奥から祝福し穏やかな未来を願った。


やがて松野に思いを告げられ侍女が貴族の家に嫁ぐという大出世を果たす事になった咲耶だが、治承・寿永の乱に巻き込まれた貴族達は次々勢力を失くし、後世への繁栄を第一に置いた政略結婚が各地で頻繁に執り行われるようになる。

勿論松野家も図中に入る名家、未だ完全に結婚が完了した訳では無く内縁の妻として存在した咲耶は松野基房の両親並びに親戚から疎ましく睨まれ、いつしか一族の勢力拡大を図るに邪魔な存在だと思われ始めていた。

そこに現れたのは名家の娘”梅原 千里”。 お互いの家が縁で結ばれれば勢力の拡大は確実であり、これは両家にとって又と無い好機。

愛も情も無く地位と名誉だけが残る儀式を目の前にして元々侍女としての身分でしかない咲耶に発言権は無く、基房の反対意見も虚しく松野家との婚礼を諦めるめとなる。無情に澄み渡った青空の下、松野の屋敷を出る時に入り口に梅の花が咲き始めていた。

平安時代は人も木も桜より梅がより高い支持を受けていたのだ。



それから一年後、後鳥羽上皇の勢いも無くなり貴族は弱体の一途を辿る中、咲耶も十兵衛も主君である基房に忠義を捧げるべくその手を再び赤く染め上げわずかに残った松野家の勢力維持に力を注ぐ。

後に勝利を収める平氏側の陰には竹本と呼ばれる奇術師が居た事で戦型が優位に傾く。

夜も丑三つ時(午前三時頃)松野家は確実に追い詰められていた。


「まだまだぁ、腕一本になっても闘い続けるぞ」

「御意」


幸い基房は千里を逃がし梅原家は撤退した後の事、最後まで奥間に留まる主君を護ろうとする咲耶と十兵衛。もはや一桁違う勢力に耐え続ける二人の腕は既に都一みやこいちであろう。

しかし体は切り傷だらけで徐々に体力も奪われていき、このままでは基房の元まで敵兵が辿り着くのも時間の問題とされる。

死が確実に迫り来る最中に咲耶が勇気を抱き、兵数に匹敵する桁違いの精神力で戦えたのは基房の本心が分かったからである。千里や一族が逃げた後も奥間に残り自らの命を咲耶の元に預けたという結論に彼女も戦う前に屋敷の裏で嬉し涙を流し十兵衛はそっと見守っていた。

やがて今日が最後の夜となる事を覚悟していた二人の剣士もかさんだ傷からの出血が酷くなりそのまま倒れ込んでしまうがそれでも刀を握って威嚇した。


「それ以上近づいてみろ!?この刃で頚動脈を引き裂いてくれるっ!!」


己の体を赤く染め上げながら牙を尖らせる姿は夜叉その者である。

だが今までその命を懸けて護り続けた扉は主によって呆気無く開けられた。


「もう良い。良く戦ってくれた」


奥の部屋から出てきた基房が倒れ込んだ咲耶を強く抱きしめ、構える兵士達を見上げる。


「私の首が欲しいのならやろう。だがこの二人はもう逃がしてくれ」

「それは出来かねます」


廊下の奥の曲がり角から出て来た細身で黒い狩衣姿の中年男性。”竹元 蘇軾そしょく”が兵の列をかき分け先頭に顔を出した。


「我々の主君はあなたの指揮術を大変高く買っていらっしゃる。その命を生かす代わりにこちらで力を発揮して頂きます」

「お主たちの君主とは?」


蘇軾が苦笑いをしながら己の顎に生えた無精髭ひげを撫でた。


「梅原の分家です」

「何!?」


松野側の三人が目を丸くする。


「千里様が基房様の正室として嫁がれた後、疎ましく思う反感の声が高まりましてねぇ。この混乱に乗じて歴史を塗り替えようとしたのですが、いやぁさすがは基房様。上手く逃がしましたな」


あっぱれと言った形で扇子をひろげ口元を隠す蘇軾。


「貴様、自分が何を申したか承知の上か?」


怒る基房だったが見下すように扇子の奥から蘇軾の陰気に満ちた笑みが見える。


「えぇ、重々承知の上でございます。なぁにこの期に及んで千里様のお命までは頂戴いたしません。ただ基房様には一度お亡くなりになったという虚実の元、これからは分家の中でその生涯、尽力を注いで頂きたく参りました」


普通に考えれば確実に殺される所を好条件の取引で打診をしてきた蘇軾の顔は自信に満ち溢れていたが、基房はその首を横に振った。


「この命、そこまでして永らえようとは思わぬ。気に入らぬなら殺せばいい」


不本意な返答に蘇軾も厳しい表情になり扇子を閉じる。怒りが抑えられなかったのか奇声を上げながら周りに居た自分の軍の兵士を次々と殴りつけていった。


「なぜっ!?何故です!?人間自分を一番愛でる物でしょう?この様な好条件一生ありませぬぞ」

「合わぬのは条件では無く信条。生憎私は梅の木より桜の木が好きでな」


その瞬間咲耶の頭の中に十兵衛との会話が蘇る


「・・・聞かれていたのですね」


基房の腕の中、弱弱しい声ではにかむ咲耶に彼は微笑んだ。


「私も非力ながら民の拠り所になりたかった。それだけのこと」


だがそんな脆くも温かい時間を蘇軾が引き裂いた。


「ふん、連れ出せ」


その掛け声と共に敵軍の兵士が基房と咲耶を引き離し彼を連行しようとした。


「咲耶ぁあ」

「基房様ぁあ」


倒れたまま叫ぶ咲耶の脇腹を蘇軾が思いっきり蹴り飛ばし、彼女の口から出た血が床に吹き飛んだ。


「侍女風情がたぶらかしおって、さてはもののけの類?この場で成敗してくれる」


蘇軾の扇子の柄から刃が出て来ると咲耶に向けようとする。


「やめろおおおお!!」



『ぐしゃあ』



無情な刃が振り下ろされると大量の血しぶきをあげたが皆が目を丸くした。


「じゅ、十兵衛・・」


身を挺した十兵衛の背中から肺にかけて刃物が埋まり、手を動かせなくなった蘇軾が何回も十兵衛の体を踏みつける。


「く、ぬうう」

「このぉおおお」


十兵衛の体から脱する前に咲耶の刀が蘇軾の心臓を貫いた。


「ぐふっ」


蘇軾も”ポタポタ”と吐血しながらその場に倒れ込み、壁や床一面に飛び散った血はもはや三人の中の誰の物なのかも分からなくなる位その場を赤で埋め尽くす。その惨状の中で必死にもがく基房だったが頑丈な兵士達に行く手を阻まれ連行された。


「咲耶ぁ!咲耶っ」

「・・・・・・・・!」


もはや基房の言葉に答える事も出来ないくらい弱った咲耶を奥間に留めたまま曲がり角でその姿を見失った。

咲耶もまた、言葉を聞くだけでも精一杯だったがその声が遠くなるにつれて反比例するが如く自分の心臓の音が耳に鳴り響く。

三人共横たわったまま”死”をすぐ傍に感じ取っていた。


「・・・じゅ・・う、べい・・・」


血だらけの手を伸ばし、虫の息で呼びかける咲耶だったが、肺を刺された十兵衛は返事を出来ずに意識も遠のき始める。心の中では何回も咲耶の事を叫んだが自分の弱さに憤慨しながら月の綺麗な空の下、この世との別れを悟り一滴の涙をこぼした。

その時頭の中に聞き慣れない男の声が響く。


「その全てを懸けてでも護りたいか?」


同じ人物の声は咲耶にも届いていたのか二人共、生と死の狭間の暗闇の中で血に染めた拳を強く握った。


「護りたいっ!」


別々の場所から同時に決意を掲げると突然大きな光に体が包まれた。

・・・・・・・・・・・・

次に十兵衛が目を覚ましたのはそれから数日後の白昼の事。

風が吹く草原の中で自分の手を見て唖然とした。

その手は人間の物では無く、長い爪を大量の羽毛が覆っている。それにわずかではあるが自分の物では無い記憶が混じっている。顔は分からないが強大な敵と戦い死に面した時、同じ志を持った十兵衛達と命が繋がった映像が断片的にだが走馬灯のように映った。


「っ咲耶様は?咲耶様!」


今、自分に起きている事を何一つ理解できないままの十兵衛だったがすぐにあの廊下での殺し合いを思い出し、声を上げて正気を保った。だが起き上がった彼の周りには誰も居なく風になびく草の音だけがどこまでも重なってこだまする。

不安や恐怖、いやな予感が十兵衛の心を支配するが、一刻も早くどんな現実が待っていたとしても向わなければならない。どこにたどり着くかもわからないまま一直線に草原の中を駆け抜ける。

一方、基房もこの数日間生きた心地がせず一切の食事を摂らないまま竹本分家の家臣たちの手を焼かせていた。

咲耶に千里、自分のせいで二人の人間を窮地に立たせてしまっている罪悪感に一秒一秒が重く感じる。


「どうか生きていてくれ・・・」


虚しく儚い神頼みに全てを委ねるしかない不甲斐の無い自分自身に一番憤慨していたのかもしれない。

同じ願いを抱えた十兵衛も草原を抜けたのは夕刻を過ぎた頃だった。町外れの河原に着くと水面に映る自分の顔を見て、手を見た時と同様驚愕した。


「鷹?」


あの惨事から自分だけがこうして息をして立っているがそれは既に十兵衛自信の命では無い事を彼の心は悟っている。

もはや現段階で生きているのかもわからず近くの橋の下に身を隠しながら放心状態で上りゆく月を黙って眺める。


「咲耶様・・」


それから何時間か経ち、急に泥の様な眠りに誘われた十兵衛は白く深い霧の中で迷っていた。


「ここは?」


まるで現在の自分の精神を現わしたその空間の中に人の気配はない。だが誰かが居る、あの暗闇の中に居た時と同じ感覚。


「その命を代償に転生てんしょうの義は済んだ。そなたの覚悟を宿せ」


再び頭の中に声がした。


「咲耶様は!?教えてくれ、咲耶様は無事なのか!!?」

「咲耶はその肉体を失い輪廻の喪に服している」


それは咲耶が死んだ事。自分だけが生き残ってしまったことを意味したが今の十兵衛には認める事も、受け止めきる事も出来るわけがない。

そのまま頭が真っ白になり、足元がふらつく。


「ㇵ、ハハ・・馬鹿な・・」


無情な現実は夢や、まやかしを告げずに黙って雪の様に降り積もる。


「・・・馬鹿な・・馬鹿な・・さ、咲耶様が・・・うぉぉぉおおおおおおおお!!!!!!」


その場に崩れ落ちた十兵衛は”何故自分だけを助けたのか?”その喪失感と怒りで天を仰いだ。


「そなたに与えられた命はこの世に未練を持った罪と罰。しかしこれからの世に可能性を含んだ起源点にもなりうる」

「何、訳の分からぬ事を言っておるのじゃぁあああっ」


床を叩く十兵衛の長くとがった爪が掌に突き刺さり血が滲み垂れる。


「咲耶の生命は絶えたがその魂までは死んでおらん。彼女は長い年月の中で新しい旅に出るために再び生まれ変わるであろう。その時に成長する魂を護り抜くのがお主の務め」

「・・・生まれ変わる?・・いや、待て、魂を護るとはいかにすればよいのだっ!!!」


咲耶に会えるのであれば物のにでも力を求める、面を上げた十兵衛の心は乱れていた。


「近い将来、あの者の魂を狙う物が必ず現れるであろう。その時にどんな手を使ってでも救い出すのだ」


神なのか悪魔なのかわからないささやきに立ち上がった十兵衛の決心は固まる。最初に国衙で拾われた時から答えは一つしかない。


「いいだろう・・・某が、この加山十兵衛がこの命に代えても咲耶様の命、御守りしよう」


十兵衛が決意を述べた瞬間に霧が晴れ、奥から同じ顔をした鳥人間が現れた。


「我が名は霊獣コカトリス。この国の秩序を守る者。そなたに我の力と知識の全てを授けよう。受け取るがいい」


手を差し伸べるコカトリスに十兵衛もその血だらけの掌を差し出した。


「承知した。覚悟を宿そう」


お互いがその手で結んで契りを交わした瞬間、十兵衛の目の前は光りだし足元が揺れた。

目の前の世界が乳白色に染まる中、彼の記憶の中の咲耶が色褪せる事無く心に蘇る。

乞食こじきの様に落ちぶれた所に笑顔で手を差し伸べられた時の事、共に戦場に赴き背中合わせの体勢で命を預け合った事、夜に屋敷の縁側で日本酒を注がれそのまま飲みながら月を観察した事、一緒に桜の木を眺めた時の事。

「さよなら」も言えずに離れる事になった主君に再び会える事を信じて十兵衛は目を閉じ、瞼にしまいきれなかった雫を一滴だけ床に垂らした。

現実世界に戻ってきた十兵衛の心に迷いは無くぼんやりと輝く月を見上げる。


さらに咲耶が亡くなったのと同じ頃、千里もその若い生涯を絶ったのであった。

蘇軾の流した基房の死亡説を真に受け、取り残された人生に絶望した結果の事である。彼女が自らの命を絶つ直前、走馬灯の様な思い出の中の最後の映像は基房と散歩した時に見た何気ない花。


「基房様、この花は見慣れぬ品種で・・」

「これは凌霄花のうぜんかずらという異国を渡ってきた花らしい」

・・・・・・・・・

死の直前に流れた彼女の血と側近でありながら彼を護りきれなかった桜一族に残した恨みが、毒々しいほど濃い朱色を床一面に広げたのであった。


やがて基房と咲耶が見据えていた戦が激化してくる中で蘇軾も悪運と共に命尽きて忘却へと旅立つ。


それからしばらく経った昼下がり。竹本蘇軾の息子”蓬莱ほうらい”も血に濡れ息を引き取った父蘇軾の仇打ちに燃え梅原分家の城を目指していた。

蘇軾は元々梅原家お抱えの奇術師。陰陽道の中の計算式と膨大な地学識により天候や自然現象を把握し戦型を優位に運ぶ数少ない哲学者。息子の蓬莱もまた蘇軾同様膨大な知識を会得し、次の世を作る手助けを志していた矢先の事件に梅原家に対する不信感を抱いていたのだ。


「咲耶・・・私は結局何も出来ず、誰も止められなかった」


城内も合戦の準備で慌ただしく、兵士が刀を握り女は食料の準備に明け暮れ、誇りと名誉の元に命を絶ちに行く姿を奥間から見つめる基房も甲冑に身を包んでいたが隠居の身であり、未だ動けずにいる。

「生前父がお世話になり、私もその力を梅原の一族に捧げたく参りました」

梅原家主君、羽重はがさねに仕えるべく蓬莱の志願に強力な味方がついたと喜び、戦意を上げる城内は最高潮の盛り上がりを見せていた。

蘇軾の功績もあり容易に城内の高層部にその才覚を受け入れられた蓬莱は羽重の部屋の位置を調べ、黒い狩衣の中に手持ちの扇子を仕舞い込む。

だが、蓬莱よりも早く玉座の間へと入ったものが居た。


「羽重、覚悟ぉおお」


梅原家に仕える兵軍の隊長が刀を握り主君である羽重の部屋へと奇襲をかけたのだ。

驚く間もなく即座に羽重は掛け軸裏の緊急用脱出路から別間へと逃げ切りその場を後にする。追いかけようとする兵長は今までの戦で鍛え上げた巧みな剣術で羽重の護衛を次々と切り付け部屋を赤く染め上げるが脱出路に入られぬ様、数人の護衛達も皆行く手を阻み続ける。

別室で呼吸を止め気配を消していた羽重だったが安堵の息をついた。


「おぉ、基房殿。主も助長に参ったか」


部屋に入った基房に駆け寄ろうとした羽重だったが凍りついた。基房が鞘から刃を取り出したのだ。


「な、何故?」


羽重の質問を無視して黙って近づく基房が斬りつけた。


「ぐふぅっ、何故だ・・・?・・・・・・何故偽物だと解った!」

「以前私は羽重殿に『一度脱出経路に入ったら騒ぎが止んで家臣が合言葉を呟くま

で出ない様に』言いました。もしその掟を破いた場合、斬りつけられても文句を言わぬ約束も交えてな・・・故にあの夜から私の中の夜叉は誰にでも向いている。そう、主君にも」


そして基房は気配がする天井を睨みつける。そこには陰陽札を使い天井に張り付いた蓬莱が笑い地面へと降りた。


「さすがは松野基房殿、父が敬服しただけの事はある。だが私はそう簡単にはいきませぬぞ」


そのまま新しい陰陽札を狩衣から取出し握りしめるが自分より若い青年から対峙を求められた基房は少々気が引けている。


「私はただの死にぞこない。それよりも前に同じ様な奇術を見た事がある・・・お主の操っている兵長を元に戻せ!」


だが基房の願いも虚しく蓬莱の手の中にあった札が勢いよく燃え始めて焦げた。


「残念ですが命尽きた様です」


とても残念とは思えない笑みを浮かべ自分の作品が壊れる事で完成した優越感に浸る蓬莱に基房は剣を構えた。


「お主の中の狂気は復讐では無く己の野望の元、ただひたすら呪われた血筋にとらわれているようだの」

「ほう、何を言うかと思えば。そう、父の死など到底きっかけに過ぎませぬ。私はこうすることで自分の陰陽道の術式を進化させて事象の創造と終幕にたどり着くのです」


蓬莱も蘇軾と同じく扇子の柄から刃を取り出し基房に対して正面から構える。


「今、私の体の表面は術式によって甲冑と同じ物質になっており、固く刃物を通し


兼ねる無機質な状態。さぁ、いかがなさいます?」

あざ笑いながら刃を光らせる蓬莱だが、向かう基房も一切動じない。


「個としての名がある以上お主も人の子、神の力は持たぬだろう」

「やってみますか?」


そのまま黙って構えた直後、二人は命の尺度を図ろうと駆けだした。


「ぁぁぁああああああああ!!!!」



『バサァアアア』



向けた刃がお互いに刺さる直前に強い風が吹き始める・・・鳥のシルエットを晒して。


「何奴?」


蓬莱が一歩引くと風の中を睨みつけた。


「お二人とも見苦しいですぞ」


姿をあらわにした鳥型の生き物に二人とも息を呑む。


「蓬莱殿、そのような術式を何万と心得ようと決して人は神になどなれませぬ」

「貴様は他者の術式で召喚された物の怪か?」


興味津々の蓬莱であるが刃からは手を離さず基房に向けられている。


「神とは能力にあらず、輪廻の中を巡る生命の営みそのもの。向けられた刃など所詮は人間によって作られた武器と意志」

次に鳥は基房を見つめる。

「基房様、貴方は死に場所を求めているようですが、まだ気づきませぬか?」


「・・・何?」


基房は構えた剣を下す。


「貴方様に後ろに仕えて、死してもまだ”幸せに生き永らえる事”を願い続ける存在に気づかず死を望みますか?」

「!!っ」


その瞬間、鼓膜を越えて基房の脳裏によぎった存在。


「さくや・・・咲耶の事か!?」

「咲耶様はとても美しゅうお姿で見守っておいでです。白地に薄い桜の刺繍がたくさん付いた着物を御召になられてます。思い出しませぬか!?」


それは内縁ではあるが基房と咲耶が結ばれた時に咲耶が松野の屋敷に着て来た桜家に伝わる衣装。


”温かい陽だまりの中、海の様に広がる快晴に包まれた心”



『タンッ』



咲耶が嫁ぎに来た時の空を思い出し基房の目から涙があふれ出し、剣を落とす。


「・・すまぬ、誠にすまぬ・・咲耶っ」


その隙をついて蓬莱が短刀を構え動き出したが、そのまま転んだ。


「う・・重い!何故だ!?」

「その体の表面を石にした」


蓬莱が手で狩衣の中を見ると術で無機質になっていた体が灰色になっている。


「これは術式?」

「この術は誓眼といって神と契約した能力。主の様に人工的に作ったものでも、生き物の死の上に獲得する物でもない」

鳥の目は金色に光ったまま蓬莱を冷たく見下ろすが、神々しい光は蓬莱にとって神そのものだった。


「あ、あんたの名前は?」

「加山十兵衛の意志を引き継ぎ、桜咲耶を永年護衛し続ける存在。我の名は霊獣コカ・・!」

「げほっ、げほっ。さくやぁあああ」


咲耶の事を思い出しむせながら泣き叫ぶ基房に、眩しすぎて伏せたまま動かない蓬莱。誰もコカトリスの見せ場を見ていない。


「おいぃいいいいいっ!!」

慌てふためくコカトリスを余所よそに蓬莱は伏せながら密かに術式を唱えていた。


「しまった」


コカトリスが振り返った時には蓬莱の体が透け始める。


「基房様!」


護衛が駆けつけて蓬莱を切り付けるが既に彼の体は透け、剣を空振る。


「ふはははあ、貴様達には捕まらない。私は自分の陰陽道を極め、人間の上に立ち神をも伏せる存在となるのだ」


高らかに笑うとその姿を完全に消した。


「待て!」


護衛や兵は城の内外を駆け回るが蓬莱は近くに居ない様だ。


「蓬莱、取り逃したか。・・・・そう言えば、十兵衛!?コカトリス殿、お主」

・・・・・・・・・

基房が振り返ると、蓬莱同様そこにはコカトリスの姿も無かった。

「・・・・・」

先程の騒ぎが嘘の様に静まり返った部屋の中、黙って剣を取ると上へとかざした。


「十兵衛・・私は・・・生きよう。生きて大義を経て咲耶に会いに行くとしよう」


切なく、儚げな展開に合言葉を言う機会を逃した本物の羽重も涙を流しながら、しばらく掛け軸の裏に留まった。


その後、後白河上皇が戦に敗れ、武家中心の政権となり貴族が去った世にも松野は梅原家の中で尽くしながら生きた。

千里に対する謝罪と咲耶に対する想いを心の臓に刻みながら・・・。

・・・・・・・

・・・・・

・・・

・・

「やだ」

「?」

「やだよ」

「何がだ?」


今コカトリスが言っていたことが本当なら、私”桜 子春”は咲耶の生まれ変わり的な言い方だけど、私は私だよ。


「やだよ、咲耶のダミー人形なんかじゃない!」

「小春…」


そのまま黙って布団に突っ伏した。しばらくするとコカトリスが気を使って毛布を掛けて電気を消してくれたのに素直にお礼は言えなかった。

今日の所はもう寝て頭の中をリセットしたい。

・・・・・・・

・・・・・

『ザァアアア』

次の日、生憎外は雨ふり。

結局コカトリスとは口をきかないまま、ピンク色の傘を差しながら慣れた道を登校する。

少し申し訳ない気もするけど、今はカルト的な前世の話よりももっと優先しなきゃいけない事がある。


(今日は香織にちゃんと説明しなきゃ)


でも、いつも迎えてくれるはずの香織の姿が席に居なかった。


(えっ?何で?)


学校の傘立てに香織の傘が無かった時に嫌な予感はしたけど・・それが現実っていう形になった。そのまま窓の外を見ていると隣に気配。


「ちょっと、いい?」


そこに居たのは梅原さんだった。


「あ、うん」


そのまま廊下に連れ出されて顔を見れば不機嫌そうに私を睨んでくる。


「あのさぁ?変な事言うけど私は実の事が好きなんだよね。で、桜さんは?」

「え?・・その」


いきなりの事に頭が真っ白になってしまった。


「勉強にスポーツだって頑張ってる。でもみんなそこしか見てくれないんだわ。もう息がつまりそうで・・・だけど実は違う。実が居てくれる時だけが私が私で居られるんだよね」


才色兼備だからこその悩み。きっと一生掛けてもわかりきってあげられない悩み。松野君はその悩み事を受け止めきれるキャパを持っているのかもしれない。


「だから・・」

「え?」


まだ何か言いたそうだがその言葉は聞きたくない。


「だからさ、ね。もしただのクラスメイトなら深く関わりすぎると不安になっちゃうんだよね。最近こっちにも二人の噂が色々と聞こえて来るからさ」

「えぇ?」


噂って・・・そんな二人きりの時間も無かったのに目線というのは怖い物だ。


「私は・・・」

・・・・・・・


(私だって松野君の事が好きだ)


本音を言おうとした時、香織の顔が浮かぶ。


松野君は好き・・・でも、もう誰にも嫌われたくない・・・。


「私は別に付き合ってないし、そんなんじゃないし・・・」


つい本音とは打って変わって自分を護るために嘘をついてしまった。


「・・・そう。ならいいんだ!ごめんねいきなり、話はこれだけだからさっ。気を悪くしないでねしないで、それじゃ」


最初とは打って変わりにこにこ顔でご機嫌のまま去って行った梅原さん。

その場は凌いだけど・・・これはまずい。もう誰とも関わらず傷もつかなければどんなに楽なのだろうか?

溜息を一つついて教室に戻った。

その日の放課後、またまた竹本に屋上へ続く階段へと呼び出されると本人は焦った表情で見つめて来る。


「どったの?」


正直もう、一人になりたいのだが彼が呼ぶのであれば何か危機迫る話かもしれない。


「いや、その・・不味い事になってな」

「?」


”私との噂が立った事”などと言ううつつを抜かしたらピコピコハンマーで殴ってやる!


「実は昨夜、うちの組織の者が誰かに奇襲をかけられてな。幸い命に別条は無かったが結構深い傷を負ってしまった」

「凌霄の手下?」


だが竹本は首を横に振った。


「いや、奴に関わる気配はない。もっと別の徒党じゃないかと思う。動きが読めない以上お前自身は勿論、周りの人間にも当分配慮を怠らない方がいいかもしれない」


私の家族や友達・・・香織!

居ても立っても居られなくなってそのまま走りだす。


「おい!桜っ」


竹本の制止を振り切ってそのまま雨降りの外に出て全力で足を進める。ただ香織の顔を一目見たい。そして昨日の事を謝って仲直りしたい。

射してる傘が邪魔になってきたので閉じ、マフラーもバッグにしまう。

濡れた体で急ぐは香織の家


~つづく~



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