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初恋は叶わないと言いますが、何番目の恋ならいいですか?

作者: 文月みい
掲載日:2026/02/22

たくさんの作品の中から選んでいただきありがとうございます。

 

 私には、ずっと好きな人がいます。


 幼い頃に参加したお茶会で、緊張していた私は、皆さんと上手く話せなくて、一人でお庭の花を見ていました。


(うわぁ、とても綺麗なお花ねぇ。)


 大好きなピンク色の花を見つけて、嬉しくて一人眺めていると、目の前に突然影が落ちました。


「君、一人で何をしているの?」


 驚いて振り返ると、そこには銀髪碧眼の整った顔立ちの男の子が立っていました。


 それが、私とエリオット様の出会いでした。


 緊張で上手く話せない私の側で、エリオット様は急かすことなく、ずっと待って話を聞いてくれました。

 

 エリオット様の隣は、不思議と居心地が良く、私の緊張も解けていきます。


「僕は、エリオット。テリエリア侯爵家の者だよ。君の名前を教えてくれる?」


「私は、ハリアーダ侯爵家が次女、ヴィアナと申します。」


 その時から、エリオット様との交流が続き、私はエリオット様に恋をしてしまったのです。


 エリオット様は、長身で美形、とても優しく紳士的で、女性からの人気も高く大変モテるのです。


 しかも、侯爵家の長男で将来も有望。所謂、優良物件と言われているのです。

 

 長男ということで、幼い頃から婚約者がいても、おかしくはないのですが、今のところエリオット様に婚約者ができたとの話しは聞きません。


 お祖父様の代までは、幼い頃に婚約者を決める事が多かった様です。でも、気持ちの無い婚約では上手くいかず、夜会や学園のパーティーの場で、婚約破棄を宣言するという不祥事が多くなったのです。


 それで今は、学園の卒業までに意中の相手を決めて婚約する、という事が多くなって来ました。


 私の両親も恋愛結婚で、兄と姉も愛する人を見つけて婚約しました。

 

 できるなら私は、エリオット様と結ばれたい。ずっと彼だけを想ってきたのです。

 そう…願っていたのに…。


 私は、衝撃の事実を知ってしまったのです。


「初恋は実らないのよ。」


 友人に招待されて参加したお茶会で、隣の席の女性たちが話している声が聞こえてきました。


 ''初恋は実らない''


 それなら、私の初恋であるエリオット様と私は結ばれることができません。


 その日はショックで、家に帰ってから部屋に籠り、一晩中泣いてしまいました。


 翌朝、泣いて腫れた目を見て、侍女のサリが冷やしてくれました。


「お嬢様、こんなになるまで泣いて、どうされたのですか?」


 サリの心配そうな顔に、申し訳ない気持ちでいっぱいになります。


(きっと、皆に心配をかけてしまったのね)


 学園では、淑女教育を受けています。それを今、実践するときです。

 笑顔を作り、落ち着いて穏やかに話します。


「大丈夫よサリ。昨日は、少し驚くことがあって、でもね、もう落ち着いたわ。心配かけてごめんなさいね。」


「謝らないで下さい、お嬢様。私の大事なお嬢様に何かあったら、私が原因を排除するので、いつでも仰ってください。」


 少し不穏な発言が気になりますが、サリの言葉に元気をもらいました。


 いつまでも落ち込んでばかりは居られません。私たちは、今年で学園を卒業します。

 エリオット様にも愛する人がいても、おかしくないのです。

 まだ今のところ何もないと言うだけです。


 考え方によっては、早めに知る事ができて良かったかもしれません。

 知らなければ、私は卒業前にエリオット様に自分の気持ちを伝えていました。


 初恋が実らないなら、私は失恋していたでしょう。それこそ、立ち直れません。


 それなら、エリオット様との未来の為に、違う初恋を見つければいいのです。


 誰かを好きになって、エリオット様に告白するより先に、その人に告白すれば初恋は実らず終わりです。

 

 そして、その後にエリオット様に告白すれば初恋にはならないので、大丈夫なはずです。


 ただ、不安があるとすれば、何番目の恋なら必ず成功するのでしょうか?


 初恋が実らないのは分かりましたが、二番目の恋からは大丈夫なのでしょうか。

 

 あぁ、私は何故、あの時ちゃんと話を聞いていなかったのでしょう。ショックで頭真っ白になってる場合ではありませんでした。


 しかし、悩む前に取りあえず行動あるのみです。私は、その日から新しい恋の相手を探しました。


 友人のシンシア様にお願いして、相手のいない男性を紹介してもらっていますが、なかなか好きになる男性がいません。

 

 しかも私の顔を見ると、みんな無視して去って行くのです。私ってそんなに嫌われる顔をしているのでしょうか。

 

 それにどんなに素敵と言われる騎士科の生徒も、次代の魔術師団長と噂される生徒も、同じ学年の第一王子様だって、エリオット様と比べると、霞んで見えます。

 

 誰を見ても、結局エリオット様と比べてしまい、エリオット様を思い浮かべて、エリオット様の素敵さがより実感できるだけです。


 エリオット様の事ばかり考えて会いたくなってきます。

 

 私は、違う初恋を見つけるまで、エリオット様に会うことを控えています。

 

 エリオット様に会うと、どうしても好きが溢れてしまって、気持ちを抑えることが難しいのです。

 

 このままでは、初恋関係なく告白してしまいそうです。


 エリオット様との未来の為に、今は耐えなければいけないのです。



♢♢♢♢♢♢



「ヴィアナ、最近、君に避けられてる気がするんだけど、僕が君に何かしたのかな?」


 学園中庭のベンチで一人サンドイッチを食べていると、エリオット様が私の元にやって来ました。


 久しぶりに見るエリオット様は、やっぱり素敵です。優しく低めの声も、聞いてると落ち着きます。


「ご…ご機嫌ようエリオット様。お久しぶりですね。ただ、最近は忙しくて、なかなか会えなかっただけです。」


 私は、エリオット様に嘘は吐きたくありません。実際、初恋探しで忙しかったので、嘘ではありません。


「そうか。避けてた訳じゃないんだね。それを聞いて安心したよ。あっ、隣いいかい?」


 エリオット様が、私の隣に座りました。久しぶりで嬉しくて、とてもドキドキします。


「エリオット様は、昼食は済んだのですか?」


「いや、まだだよ。君を見つけたから嬉しくて声をかけてしまった」


 エリオット様が、私を見て嬉しそうに笑顔になります。

 

 私は胸がキュウと苦しくなります。やっぱりエリオット様が一番好きです。

 

 たぶん、この先どうやってもエリオット様より好きな人なんて現れないでしょう。


 でも、初恋のエリオット様とは結ばれません。エリオット様を見ていると悲しさで胸が苦しくて泣きそうです。


「ヴィアナ、そんな泣きそうな顔をして、どうしたの?」


 エリオット様が、私の目元を親指の腹で優しくなぞります。

 エリオット様の顔が近くに見えます。


「…っ、どうして…エリオット様が…初…恋…なの…」


 突然の事に、動揺してしまい私は失言してしまいました。


 これでは、エリオット様に好きだと伝えてる様なものです。


「…今の…ヴィアナ、それって、どういう意味?」


 エリオット様が、さらに近づいてきて、今にも抱き締められてしまいそうです。


「ごめんなさい、エリオット様。何も聞かないで…」


 私は、その場から離れようとしますが、エリオット様は、逃がさないと言わんばかりに、私を抱き寄せます。


「ヴィアナ、僕は君が気持ちを伝えるまで、待つつもりだったんだよ。でも、君がそんな顔をするなら、もう待たない。いいよね?ヴィアナ」


 エリオット様が、私の顔を覗き込み、そのまま額にキスを落とします。


 一気に顔が熱くなります。きっと、私の顔は真っ赤です。


「あぁ…真っ赤な顔のヴィアナも、すごく可愛いね。そのまま、連れ帰りたいよ」


 エリオット様の口からとんでもない言葉が聞こえました。

 

 こんなことを言われたら、どうしたらいいのか分かりません。私は、オロオロと視線を彷徨わせます。


 それに、何だかエリオット様の声も顔も、聞いたことも見たこともない程、甘く糖度が増した気がします。


 これではまるで、エリオット様が私のことを想っているようで、勘違いしてしまいそうです。


「ヴィアナ、大丈夫?もう一度キスしたら、僕を見てくれるかな」


 その言葉に、私はハッとして、顔を上げると私を見つめるエリオット様と視線がぶつかります。


「あの…あの、私…。まだダメです。別の…別の初恋がまだ見つかってないので、ダメなんです」


 エリオット様の眉根がピクリと動きます。何だか、笑顔が少し恐いです。


「ヴィアナ、どうして別の初恋を見つける必要があるの?ヴィアナは、僕のことは嫌い?」


 そんな風に聞くなんてズルいです。嘘は吐きたくないので、これでは好きだと伝えるしかなくなります。


「エリオット様に、嘘は吐きたくありません。でも、本当のことも今は言えないのです。まだ私の初恋は終わってないのですから。」


 エリオット様が、私を優しく見つめています。いつものように、私が話すのを待っているのです。


 私は観念して、全てエリオット様に話すことにしました。


 初恋は実らないと聞いたので、新しい初恋を見つけて振られたかったこと。そしたら、エリオット様との恋が実るので、待っていて欲しいことなど、全てを話しました。


「一つ確認してもいいかい?ヴィアナは僕のことが好きなんだよね?あっ、これは告白にならないから、正直に言っても大丈夫だよ。」


 エリオット様が、嘘を吐く事はないので、返事をするだけなら大丈夫なのでしょう。


「もちろんです。でも、初恋のままは駄目なのです。私はエリオット様と結ばれたいのです。」


 エリオット様が、私を優しく抱きしめます。


「ヴィアナ安心して。僕は今のヴィアナが二度目以上の恋だから、ちゃんと結ばれるよ」


 えっ?私が二度目以上の恋?


 エリオット様が、私を好きだと言って下さるのは嬉しいけれど、何だか胸の奥がモヤモヤします。


「エリオット様は、初恋を終わらせていたのですね?」


 自分の言葉に、胸がズキリと痛みます。


「僕はね、幼い頃に会ったヴィアナに、初めての恋をしたんだ。それから、会うたびにヴィアナに恋をしてるんだよ。今の綺麗で純粋で可愛らしいヴィアナにも何度目かの恋をしてるんだ。」


 初恋も二度目以上の恋も全部私?


 不思議です。エリオット様の言葉に、さっきまでの胸の奥の痛みや、モヤモヤが全部無くなりました。


「ヴィアナ、別に同じ人に何度恋をしてもいいからね。僕は何度もヴィアナを好きになるよ。」


 それなら、私も何度もエリオット様を好きになっているので、初恋では無いのかもしれません。


「それなら、新しい初恋を探さなくてもいいのですね。私はエリオット様に好きだと伝えてもいいのですか?」


 エリオット様が嬉しそうに笑って、私の頬にキスをします。また、私の顔は真っ赤です。


「もちろんだよヴィアナ。僕も君を愛しているよ。それにね、女の子は愛するよりも愛される方が幸せになれるんだよ。」


 また、衝撃の事実を知ってしまいました。


 それなら、愛してもらってる私は絶対に幸せになります。


「エリオット様、私も同じ分だけ貴方に愛を捧げます。だから、一緒に幸せになりましょうね。」


「あぁ、ヴィアナ。さすがだね。僕はすでに世界で一番幸せだよ。」


 結局、何番目の恋なら必ず成功できるのか?


 それは、正確には分かりませんでしたが、愛する気持ちがあれば、何番目でも関係ないのかもしれませんね。



 

                  Fin

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