ショートショート1「農学校」
ぼくはある本を読んで農家になることに決めた。
両親や中学の教師はぼくの夢を応援してくれ、学校は奨学金まで出してくれた。ぼくは自然豊かな農学校の寄宿舎で、同級生たちと共同生活をすることになった。夜は相部屋の友人がハーモニカを吹き、となりの部屋の愉快な仲間たちも集まって歌を歌うこともあった。学校は農学校だったので試験も通信簿もなかったけれど入学して一年たつとみな伸び伸びと逞しく育っていた。
二年目になると一年目の学科で学んだことを実地で学ぶようになることが増えた。なかでもぼくには家畜を捌く才能があったようで、よく先生に誉められた。
学科で学んだのは、たとえば適者生存、優等種と劣等種の分類、間引き、縄の縛り方、電気ショックの打ち方、ジュウキの扱い方、苦境に於いて自己を律する方法、無線操作、パラシュート降下法、地政学、語学、主体思想、そのどれもがいまの僕を形作っていると思う。
畜舎の豚のことを番号で呼ぶのはかわいそうなので、ぼくだけは名前で呼んであげることにしている。森本親子の面倒を見始めてから半年になる。豚たちには、投薬やそのたびに起きる瞳孔の変化や痙攣に丁寧に対応してやらないと実験データがとれないので家族のように接する事が大事だと密かに思っている。
今日僕は念願かなって卒業を迎える。この農学校で学んだことの全てを総統に捧げるつもりだ。
ぼくは荷物を鞄に詰め、支給されたSSの制服に腕を通し、胸ポケットにあの本、マ○ンカンプを入れておいた。




