第9話 初めての音録り、そして真実
<SNS(X)タイムライン>
@RefrainBeat_KANA 2025/07/03 15:00:00 JST
#デモ音源 #新曲 #ドキドキ
新曲のデモ音源、初めて作ってみるよ!
ちゃんと録音できるかな?みんなで頑張ろうね!
@Kino_Azusa 2025/07/03 15:30:00 JST
#レコーディング #音作り
デモ音源制作。未知の領域だが、経験値を得る良い機会だ。
果たして、どのような音になるのか。
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あれから3日。
『リフレイン・ビート』の面々は、
リズムガーデンのスタジオで、
パソコンと機材に囲まれて頭を抱えていた。
新曲『きらめきノート』のデモ音源を
自分たちで作ろうと挑戦しているのだ。
「あれ? なんで音が出ないんだろ?」
奏が録音ボタンを押すたびに、
なぜか「ブツッ」とノイズが入ったり、
リズムがずれてしまったりする。
パソコンの画面を前に、彼女は頭を抱えた。
「私たちの曲、『きらめきノート』が台無しだよ~!」
響が叫ぶ。
結月も、戸惑ったようにモニターを見つめている。
梓咲は、冷静に機材の説明書を読み込んでいるが、
やはり原因は分からないようだった。
「録音って、こんなに難しいんだね……」
奏がため息をつく。
何度やり直しても、一向に上手くいかない。
焦りと疲労が、メンバーの顔に色濃く浮かんでいた。
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その時、スタジオのドアが開き、怜が現れた。
彼女は無言で、メンバーが録音しているPC画面を覗き込む。
そして、ひょいとヘッドホンを取り、耳に当てた。
数秒。一聴しただけで、彼女の表情が厳しいものに変わる。
「これは酷いな」
怜の厳しい声が、スタジオに響き渡った。
メンバーは、ビクッと肩を震わせる。
「ドラムの音量、高すぎ。ベースはもっと前に出せ」
「このギター、潰れてる。キーボードはもっと透明感を」
怜は、的確な指示を連発する。
まるで、全ての音が可視化されているかのように。
メンバーは「ひぃ!」「耳が痛い!」と怯えつつも、
その的確さに驚きを隠せない。
怜の指示に従い、各々の音量を調整し、
演奏のバランスを修正していく。
怜は、時折、自ら機材に手を伸ばし、
調整を施すこともあった。
その手つきは、迷いがなく、洗練されていた。
数時間後。
怜は「これでいいだろう」と呟くと、
最終的な調整を終えた。
メンバーは、恐る恐る完成したデモ音源を再生する。
スタジオに響き渡ったのは、
さっきまでの不協和音とはまるで違う、
クリアで、まとまりのあるサウンドだった。
各楽器の音が鮮明に聞こえ、
きらめきノートのメロディが、
以前にも増して輝いて聞こえる。
「プロの音だ……!」
奏が感動のあまり、声を震わせた。
「自分たちの曲がこんなにカッコよくなるなんて!」
響も目を丸くする。
結月は、感動で胸がいっぱいになったように、
そっと目を閉じた。
梓咲も、その表情には珍しく感嘆の色が浮かんでいた。
怜は、そんなメンバーの反応をちらりと見て、
「貸しだからな」と素っ気なく呟いた。
そして、何事もなかったかのように、
スタジオを後にする。
後に残されたのは、感動に浸るメンバーと、
自分たちの手で作り上げた、
プロクオリティのデモ音源だった。
それは、彼女たちの音楽への情熱を、
さらに燃え上がらせるきっかけとなった。
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<SNS(X)タイムライン>
@RefrainBeat_KANA 2025/07/03 16:45:00 JST
#デモ音源 #苦戦中 #オーナーの教え
新曲のデモ音源作り、難しい…!
ノイズ入ったり、音量バラバラだったり…。
でも、怜さんが来てくれて、一気にプロの音になったの!
本当に感謝です!
@Kino_Azusa 2025/07/03 17:00:00 JST
#録音技術 #ミックス #理論と実践
レコーディングは想像以上に奥が深い。
オーナーの指導は厳しかったが、的確だった。
…いつか、私もここまで理解できるようになるのだろうか。
@RhythmGarden_Ray 2025/07/03 17:30:00 JST
#仕事 #技術継承 #まだ半人前
やれやれ。しかし、あの音源なら、まあ及第点だろう。
【次回予告】
神崎 晶:「ブレイズ…伝説は、まだ生きている」
響:「怜さんが昔バンドしてたって、聞いたんですけど…」
怜:「……(珈琲を一口)」
東堂 詠(CV: ハスキーな声):「会いたい、怜…」
第10話 サブタイトル:『ブレイズの影と、過去の旋律』