第7話 真夜中のリズムガーデン
<SNS(X)タイムライン>
@RefrainBeat_KANA 2025/06/26 21:00:00 JST
#ライブ成功 #打ち上げ最高 #夜のスタジオ
今日はお泊まり会気分でみんなで打ち上げ!
ライブの疲れも吹っ飛んだよ!
そういえば、響ちゃんがなんか「夜のスタジオで変な音が…」
って言ってたけど、まさか本当に…?
@Tsukishima_Hibiki 2025/06/26 21:30:00 JST
#スタジオの噂 #怖い音 #忘れ物
忘れ物しちゃった…。夜のスタジオ、なんか出るって噂あるんだよな…。
でも、行くしかない!
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あれから3日。
文化祭ライブを終えた『リフレイン・ビート』の面々は、
リズムガーデンのカフェスペースで打ち上げをしていた。
梓咲の体調もすっかり回復し、
みんなの顔には達成感と喜びが満ち溢れている。
「私たちの曲、『青空スコール』、
みんな盛り上がってくれたね!」
奏が嬉しそうに言うと、響が大きく頷いた。
「うんうん! オーナーさんのベースも、
マジで最高だったし!」
梓咲も、小さく「助かった」と呟く。
「まさか神楽坂様が、あそこまでとは……」
結月が感嘆の声を漏らす。
プロ級の腕前を持つ結月にとっても、
怜のベースは驚きだったようだ。
「本当、オーナーさんって、只者じゃないよね!」
響が改めて言うと、全員が頷いた。
怜はカフェのカウンターの隅で、
そんな賑やかな光景を遠巻きに見守っている。
手にしたビールを、ゆっくりと一口。
彼女の表情は相変わらず無表情だが、
その瞳の奥には、どこか満足げな色が宿っていた。
話題は、夜のスタジオの噂に移った。
「ねぇ、このスタジオ、夜になると変な音が聞こえるって
聞いたんだけど、まさか幽霊とか!?」
奏が怖がりながら響に尋ねる。
響は「まさかー! そんなわけないでしょ!」と
笑い飛ばすが、どこか声が震えている。
梓咲が「霊的なものより、物理的な爆音の方が迷惑だ」と
現実的なツッコミを入れた。
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打ち上げが終わり、それぞれのメンバーが帰路につく。
静まり返ったリズムガーデンに、夜の帳が降りていく。
怜は、片付けを終えると、スタジオの奥へと向かった。
誰もいない静かなスタジオ。
怜は、ふとドラムセットに近づいた。
かつて自分が座っていた椅子に腰を下ろし、
懐かしむようにスティックを手に取る。
カチャリ、と部屋にわずかな金属音が響く。
床を踏む、微かな足音だけが、彼女の存在を知らせる。
そして、怜がドラムを叩き始めた。
その瞬間、怜は普段かけている伊達眼鏡を外した。
彼女の瞳には、かつての情熱が溢れ出す。
叩きつけられるドラムの音は、
魂を揺さぶるような超絶的なソロへと変わった。
怜の脳裏には、ブレイズの代表曲
『Burning Soul』の激しいフレーズがよぎる。
その音は、まるで彼女の心臓の鼓動そのものだった。
その頃、響は自宅に向かう途中だった。
「あー! やっべ! スタジオにスマホ忘れた!」
響は慌てて引き返し、リズムガーデンへと戻る。
鍵は開いていた。どうやら怜がまだいるらしい。
恐る恐るスタジオのドアに近づくと、
中から、信じられないほどのドラムの音が聞こえてきた。
響は息をのんだ。
それは、これまで聞いたどんなドラムとも違っていた。
クリムゾン・シールドの鳴海律架のドラムもすごいが、
この音は、もっと、魂を揺さぶる。
まるで、音に感情が宿っているかのようだ。
そっとドアの隙間から中を覗き込む。
そこにいたのは、ドラムセットに座り、
無心にスティックを操る怜だった。
眼鏡を外し、髪を振り乱しながら、
圧倒的なグルーヴを叩き出している。
その姿は、昼間の無表情なオーナーとは、
まるで別人だった。
響は、その光景を目の当たりにし、
鳥肌が立つほどの衝撃を受けた。
「怜さん……!?」
まさか、あの伝説のドラマー「RAY」が、
目の前にいるとは。
響の心臓が、高鳴っていた。
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<SNS(X)タイムライン>
@RefrainBeat_KANA 2025/06/26 23:00:00 JST
#ライブ成功 #打ち上げ最高 #夜のスタジオ
今日はお泊まり会気分でみんなで打ち上げ!
ライブの疲れも吹っ飛んだよ!
そういえば、響ちゃんがなんか「夜のスタジオで変な音が…」
って言ってたけど、まさか本当に…?
@Tsukishima_Hibiki 2025/06/26 23:30:00 JST
#衝撃の事実 #伝説のドラマー #鳥肌が止まらない
忘れ物取りにスタジオ戻ったら、とんでもないもの見てしまった…。
あれは、絶対神の領域…!
@RhythmGarden_Ray 2025/06/27 00:00:00 JST
#音 #夜 #余韻
静寂。響く音。それは、ただの残響か。
【次回予告】
結月:「クリムゾン・シールド様の演奏は、まさしくプロの領域ですわ…」
奏:「でも、なんだか、苦しそうに見える時もあるよね?」
怜:「……(珈琲を一口)」
第8話 サブタイトル:『プロの音色と、影の旋律』