第3話 不協和音と、指のサイン
<SNS(X)タイムライン>
@RefrainBeat_AZUSA 2025/06/13 17:00:00 JST
#練習の壁 #ベースの悩み #リズム迷子
みんなで練習してるのに、どうしてこんなに音がバラバラなんだ…?
このままじゃ、バンドの音にならない。
@Tsukishima_Hibiki 2025/06/13 17:15:00 JST
#ドラムの難しさ #リズムの壁
リズム感が悪いって言われるけど、どうしたらいいんだろ?
オーナーさんが何かヒントくれるといいんだけどな。
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あれから4日。
リズムガーデンのスタジオに、重苦しい空気が漂っていた。
『リフレイン・ビート』の練習は、どうにも上手くいかない。
「せーのっ!」
響のカウントに合わせて、奏のギターと結月のキーボードが鳴る。
そして、響のドラムと梓咲のベースが加わる。
「あれ?」
響が首を傾げた。
奏も、結月も、戸惑いの表情を浮かべる。
梓咲は、いつものように無表情だが、
その視線は、ドラムの響に向けられていた。
「なんか、バラバラだね……?」
奏が不安そうに呟く。
確かに、4人の音が、どこか噛み合わない。
特に、バンドの屋台骨となるはずの、
ドラムとベースのリズムが、どうにもずれている。
「もう一回! 今度はもっと集中して!」
響が気を取り直して、再びカウントを始める。
何度やっても、結果は同じだった。
「もう、なんでだよー!」
響が苛立ちを隠せない様子で、スティックを床に投げ出す。
「私、リズム感悪いって言われるんだよね……。
どうしたらいいんだろ?」
体育会系の響にとって、
自分の感覚と合わない音を出すのは、
もどかしいことだった。
梓咲が静かに呟く。「ドラムがもたれるから、
ベースが走ってしまう」
的確な指摘だったが、響にはそれが
さらに響いた。「うっ……ごめん」
結月が「皆で力を合わせましょう」と
優しく声をかけるが、
スタジオにはどうしようもない閉塞感が漂っていた。
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その頃、怜は受付で、聞こえてくるスタジオの音に
耳を傾けていた。
彼女はショートヘアに伊達眼鏡。
手元の雑誌を読んでいるが、
その指先は、無意識のうちに机を叩いている。
トクン、トクン。
それは、スタジオから聞こえてくる演奏のリズムに、
完全に合致した、正確なリズムだった。
響が少し休憩しようとスタジオのドアを開けた時、
その光景が目に飛び込んできた。
「え、怜さん、すごい……」
響は思わず息をのんだ。
怜の指の動きは、まるで熟練のドラマーが
スティックを操るように、完璧だった。
響は、その指ドラムに釘付けになった。
梓咲も、響の視線の先に気づき、
そっと怜の手元を見る。
普段、感情を表に出さない梓咲の目が、
わずかに見開かれた。
悔しさと、驚きが、その瞳に宿る。
ちょうどその時、怜がスタジオ前を通りかかった。
彼女は眼鏡をかけたまま、
顔を向けずにボソリと呟いた。
「ベースが走ってる。ドラムはもたれてる」
メンバーがハッとし、顔を見合わせる。
怜は小さくため息をついた。
「ったく……」
そう言うと、怜は完璧なリズムを手拍子で示して見せた。
パパン、パンパン。
その手拍子の正確さに、メンバーは思わず見入る。
まさに、教科書のようなリズムだった。
怜の的確な一言と、完璧な手拍子に、
4人は自分たちの問題点に気づかされる。
「なるほど……!」
響は目を輝かせ、再びドラムセットに向かった。
梓咲も、無言でベースを抱きしめ直す。
奏と結月も、真剣な表情で互いに頷き合った。
怜は、ふっと笑みをこぼす。
普段は無表情な彼女の、
ほんの一瞬だけ見せた、穏やかな笑顔だった。
そして、また何事もなかったかのように、
カフェスペースへと戻っていった。
怜のアドバイスを受けて、
『リフレイン・ビート』の練習は再開された。
今度は、先ほどまでの不協和音は影を潜め、
4人の音が、少しずつだが、
互いに歩み寄り、調和し始めた。
完璧とは言えない。
それでも、確かに「バンドの音」が
少しずつ形を成していく。
スタジオには、ようやく笑顔が戻った。
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<SNS(X)タイムライン>
@RefrainBeat_AZUSA 2025/06/13 20:00:00 JST
#練習の壁 #ベースの悩み #リズム迷子
リズムが合わない。音が噛み合わない。練習はしてるのに、
なんか「バンドの音」にならない。
オーナーさんの手拍子が、妙に正確で悔しい。負けたくない。
@Tsukishima_Hibiki 2025/06/13 20:15:00 JST
#ドラムの難しさ #リズム感の神
今日も練習でドタバタ。特にリズムが難しい…。
でも、オーナーさんの指使い見たら、なんかヒントもらった気がする!
すごかったなぁ、あの指。
@RhythmGarden_Ray 2025/06/13 20:30:00 JST
#指導 #進歩 #無駄な時間ではなかった
少しはマシになったか。無駄な時間ではなかったようだな。
【次回予告】
奏:「疲れたねー、お菓子食べよ!」
響:「あ!この雑誌、ブレイズの記事だ!」
梓咲:「……(本を隠す)」
結月:「神楽坂様、もしかして…?」
第4話 サブタイトル:『秘密の音色と、甘い罠』