エリザベス
呪われた者たちが迫り来るにつれ、ジェイコブは刃を握りしめた。彼らの動きは最初は遅く、ためらいがちだった。しかし、ジェイコブは騙されないことを分かっていた。彼らが攻撃を仕掛ける瞬間、恐ろしい速さで襲い掛かってくるだろう。
リサは呼吸を整え、力を呼び起こした。指先で黄金の光がパチパチと音を立てた。しかし、疑念が彼女を苛んだ。あの怪物たちに足止めされるわけにはいかない。
「全員と戦うなんて無理だ」ジェイコブは呟いた。「こんな風には。」
リサは彼の言う通りだと分かっていた。ここで力を無駄にすれば、コルを救うまで持ちこたえられないだろう。
その時、呪われた者たちが襲いかかった。
ジェイコブが先に動き出し、刃は一番近い怪物を斬り落としたが、その怪物は倒れるどころか、不自然に体をよじり、まるで時間が逆戻りしたかのように再び組み合わさった。リサは閃光を放ち、怪物を2体蒸発させたが、さらに次々と襲い掛かってきた。
ジェイコブは小声で悪態をついた。「逃げなきゃ」
リサはためらった。逃げればコルを置き去りにしてしまう。
それでも、ジェイコブの視線を受け止めた瞬間、他に選択肢がないことを悟った。
彼女は拳を握りしめ、踵を返して走り出した。ジェイコブはすぐそばにいた。呪われた者たちは彼らを追いかけ、虚ろな目が暗闇の中で輝いていた。リサはさらに体を押し上げ、足を速く動かそうとした。
突然、空気が変わった。深く、力強い力が森を駆け抜け、リサとジェイコブは立ち止まった。それはリサがこれまで感じたことのない存在だった――重く、息苦しく、絶対的な存在だった。
そして、彼女が現れた。
一人の女性が視界に入った。長い赤い髪をなびかせ、黒いマントが地面にほとんど触れていない。彼女の存在だけで呪われた者たちは波紋を起こし、初めてためらった。
リサは息を呑んだ。
ジェイコブは彼女の隣で身を固くした。 「そうだ
ジェイコブは信じられないような声でその名を囁いた。
「…エリザベス。」
エリザベスの金色の瞳が二人を見つめたが、彼女は何も言わなかった。代わりに片手を上げた。呪われた者たちは即座に反応したが、そんなことは問題ではなかった。彼女の指先から金黒のエネルギーが噴き出し、戦場全体を飲み込んだ。
リサは目を覆った。再び見ると、呪われた者たちは消えていた。滅ぼされたのではなく、消し去られたのだ。
その後に続いた沈黙は耳をつんざくほどだった。
エリザベスが二人の方を向くと、リサの心臓は激しく鼓動した。
「後戻りはできない」と彼女は簡潔に言った。
ジェイコブは目を細めた。「なぜ?」
エリザベスの表情は読み取れなかった。「彼を止めなければならないからだ。」
リサは大きく息を呑んだ。
コル。
彼女は彼と別れ、彼の運命から距離を置こうとした。しかし、心の奥底では、ずっとそう感じていた。不可能だった。
ジェイコブは本能と理性の間で揺れ動き、ためらった。しかし、エリザベスを見ると、議論するよりも賢明だと悟った。
彼は鋭く息を吐いた。「じゃあ、行こう。」
リサは「彼を置いて行けない」と言い、手が震えていた。
嵐は今来たのではなかった。
すでに到来していた。
そして、コルはその中心にいた。