過去のささやき
リサ・エヴァーハートはブラックウッド・アカデミーの混雑した廊下を進みながら、ドレスを直した。生徒たちのざわめき、ロッカーがバタンと閉まる音、教師たちが秩序を呼びかけるような声が、いつもの日常的なシンフォニーに溶け込んでいた。彼女はゆっくりと息を吐き出し、昨夜からずっと付きまとっていた不安感を振り払おうとした。
彼女はまた夢を見た。
悪夢
子供の頃から彼女を悩ませてきたのと同じ悪夢――破壊された戦場の真ん中に、影のような人影が立っている。彼は彼女に背を向けていたが、彼女はいつも彼が誰なのか分かっていた。彼の存在感は圧倒的で、悲しみと想像を絶する力が入り混じっていた。夢はいつも同じ結末を迎える。彼が彼女の方を向き、不気味な光を放つ瞳で、暗闇に包まれる前に手を差し伸べる。
リサは首を横に振った。ただの夢だ。
彼女はロッカーにたどり着き、ぼんやりとダイヤルを回した。声が彼女を考えから引き戻した。
「リサ！大丈夫？」
振り返ると、親友のクレアが心配そうに見つめていた。クレアはリサの気分を読み取る才能があり、たとえ隠そうとしていても、その気配を察する才能があった。
「ええ、ただ…疲れてるだけ」リサは苦笑いをこらえながら呟いた。
クレアは隣のロッカーに寄りかかり、黒い巻き毛を片方の肩に投げ出した。「嘘でしょ。ここ何週間も様子がおかしいわね。また夢のせい？」
リサはためらった。「何でもないわ」
「ええ。いつも会話の途中でぼんやりするから」
リサはため息をつき、ロッカーを閉めた。「わからないわ、クレア。ただ…今回は何か違う気がするの」
「どんな感じ？」
リサは説明しようと口を開いたが、言葉が喉に詰まった。迫り来る破滅感をどう表現すればいいのだろう？
彼女が答える前に、学校の入り口近くで騒ぎが起こった。数人の生徒が息を呑み、後ずさりし、他の生徒は興奮してささやき合った。リサは眉をひそめ、つま先立ちになって人混みの向こうを見渡した。
そして、リサは彼を見つけた。
戸口に少年が立っていた。意識せずとも、その存在感は圧倒的だった。背が高く、痩せているが力強く、黒髪は少し乱れていた。しかし、彼女の目を引いたのは容姿だけではなかった。彼の周りの空気がどこか違和感を覚えたのだ。重苦しく、暗く、まるで世界そのものが彼の存在によって少し歪んでいるかのようだった。
リサは息を呑んだ。まさか。
彼だ。
夢に出てきた少年だ。
鋭い視線が生徒たちを捉え、自分が引き寄せている注目など気にも留めない様子に、リサの心臓は高鳴った。そして、ほんの一瞬、彼の視線がリサと合った。
リサは周囲のすべてが消えていくのを感じた。周囲の音、声、足元の地面さえも。
その瞬間は、始まったのと同じくらいあっという間に終わった。少年は目をそらし、まるで彼女に気づかなかったかのように校舎の奥深くへと歩いていった。
リサは凍りついたように立ち尽くし、手はかすかに震えていた。
クレアがリサを小突いた。「誰？」
リサは大きく息を呑んだ。
「わからない」と嘘をついた。
しかし、心の奥底では、彼女はすでに知っていた。
そして、彼女は恐怖に震えていた。
コル・ヴァエルロスは、その視線を嫌悪していた。
ブラックウッド・アカデミーに足を踏み入れた途端、既に人々の視線が彼に向けられていた。囁き、好奇の視線、そして時折見せる警戒の表情。どこへ行っても、それはいつも同じだった。彼は人々が無視できない存在感を放ち、空気に漂う重苦しさで人々を不安にさせた。
彼は気にしなかった。
彼がここにいるのは、ジェイコブにそう促されたからに過ぎない。「今は溶け込め」と彼は言った。「何か行動を起こす前に、魔女たちが何を企んでいるのか見極める必要がある」
コルは反論はしなかったが、学校が嫌いだった。彼にとって学校は無意味だった。この人間は誰一人としてどうでもいい。何もかもどうでもいい。だが今は、ついていくことにした。
彼は廊下を見渡し、状況を判断しようとした。汗と香水の匂いが感覚を刺激したが、その奥に何か――何か違うもの――を感知した。かすかだが、どこかで感じ取った馴染みのあるエネルギー。
そして、彼の視線は彼女に釘付けになった。
リサ・エバーハート。
一瞬、空気の中で何かが動いた。彼女は目を見開いて彼を見つめた。まるで幽霊でも見たかのように青白い顔色だった。コルは微笑んだ。彼は彼女だと分かった。
そして、あっという間に、その瞬間は過ぎ去った。
「ちくしょう」近くのグループから誰かが呟いた。「この人、見ただけで人を殺せそうな顔してるな」
コルは軽く笑った。彼らには何も分かっていない。
放課後。
リサは考える時間が必要だったので、急いで部屋を出て行った。しかし、二歩も踏み出そうとしないうちに、声が彼女を止めた。
「じっと私を見つめている」
彼女は凍りついた。
ゆっくりと振り返ると、コルがそこに立っていた。腕を組んだまま、鋭い視線を向けて彼女を見つめていた。
「わ、私は…」
「ああ、君は…」彼の口調は読み取れなかった。非難しているのではなく、ただ…好奇心に満ちていた。
リサは大きく息を呑んだ。「君はただ…見覚えがある、それだけだ」
コルはしばらくの間、彼女をじっと見つめた。
彼の視線に、彼女の肌がゾクゾクした。
それから、彼はかすかに笑った。
「君の言う通りだ」
リサは瞬きした。「何だって？」
彼が近づいてくると、彼女は息が詰まるのを感じた。
「前に会ったことがあるよ」
その夜遅く…
リサはベッドに座り、天井を見つめていた。彼女が見たものの、決して理解できなかった幻覚。
ページをめくると、彼女の手は震えた。
そして彼女はそれを見つけた。
住所。
彼女は答えを求めていた
このエピソード2は、一見別々の視点から始まったように見えるかもしれませんが、全て繋がっています。リサはこのシリーズで大きな役割を果たし、コール自身にも大きな影響を与えています。夢を見た理由、彼女が彼を知っているように感じた理由、コールの行動、そして以前会ったことがあるという彼の言葉は真実だったのです。リサは実は、かつての自分の生まれ変わりなのです。これら全ては、時が経てば明らかになるでしょう。基本的に、この旅の中でほぼ繋がっていると言ってもいいでしょう。物語が進むにつれて、最後までお付き合いいただければ幸いです。二人に起こる変化、そして彼らのキャラクターがどのように成長していくのか、きっと見ていただけるでしょう。
