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第98話「千年の静謀」

第98話

ご愛読いただきありがとうございます。

すでに、ブックマーク/星評価をつけてくださった皆様ありがとうございます!

アスーカ教皇――その正体は、千年を生きるダークエルフだった。

白い法衣に身を包み、慈悲深い微笑みを浮かべるその姿は、

誰もが“聖なる存在”と信じて疑わない。

だが、その瞳の奥には、

千年の時を生きた者だけが持つ、深い闇と飽くなき欲望が潜んでいた。

彼は焦らない。

怒らない。

慌てない。

なぜなら――

時間は、彼の味方だからだ。

「人間は短命ゆえに焦り、争い、滅びる。

だが、我らダークエルフは違う。

千年でも、二千年でも……機会が訪れるまで待てばよい」

教皇は静かに笑った。

その笑みは、慈悲深さを装いながらも、底知れぬ冷たさを帯びていた。


・・・・・・・・・・


アスーカ聖堂の地下は、地上の華やかさとは対照的に、

冷たい石と古代の魔力が満ちる静寂の空間だった。

その中心で――

龍海将ブルイドンの身体が、石床に崩れ落ちていた。

呼吸は浅く、蒼い鱗は色を失い始めている。

海核を奪われ、サリアの結界に弾かれた傷は深く、

彼の魔力はほとんど枯渇していた。

アスーカ教皇は、その様子を静かに見下ろしていた。

「やはり……今のあなたでは無理ですか」

ブルイドンは苦しげに息を吐いた。

「……私は……どうすれば……

海核を……取り戻さねば……」

「簡単です」

教皇は優しく微笑んだ。

その声は、まるで子どもをあやすように柔らかい。

「“眠る”のですよ」

「……眠る……?」

「ええ。あなたは龍族の血を引き継ぐ者。

長い眠りにつけば、海魂も肉体も回復する。

百年でも、二百年でも……」

ブルイドンの瞳が揺れた。

「……その間……海核は……」

「サリアとキヨフレッドが守り続けるでしょう。

心配はいりません」

教皇は静かに、しかし確信を持って言った。

「私はダークエルフ。

時間は、私の味方です」

ブルイドンの呼吸が乱れ、意識が揺らぐ。

海核を失った痛みと、結界に弾かれた衝撃が、

彼の精神を深い闇へと引きずり込んでいく。

「……必ず……取り戻す……

海核は……我が……」

「ええ。

その時が来るまで、ゆっくりお眠りなさい」

教皇は手をかざし、

ブルイドンの身体を“永い眠り”へと誘う魔法を発動させた。

蒼い光が龍海将の身体を包み、

彼は静かに眠りについた。

その眠りは、百年か、二百年か――

人間には想像もつかないほど長い時間。

だが、教皇にとっては、

ほんの“ひととき”に過ぎなかった。


ブルイドンを見つめながら、教皇は静かに呟いた。

「急ぐ必要はありません。

サリアもキヨフレッドも、封命供魔によって永遠に眠り続ける」


・・・・・・・・・・


彼はゆっくりと歩き、聖堂の天井に描かれた巨大な聖紋を見上げた。

「結界は強固だが……永遠ではない」

アーソンの結界は、

キヨフレッドが設計した街全体の魔法陣と、

サリアとキヨフレッドの生命力を代償にした封命供魔によって維持されている。

強固。

絶対。

破れない。

――だが、永遠ではない。

「百年後か、千年後か……

結界に必ず“綻び”が生まれる」

教皇は微笑んだ。

「その時こそ、海核を奪い、

私は世界の根源を手にする」


彼の目的は、

海核そのものではない。

海核は“鍵”に過ぎない。

大地の魔力を操る者――キヨフレッドとサリア。

海の魔力を操る者――ブルイドン。

その3つが揃ったとき、

世界の根源魔力――“創世の力”が開かれる。

「神の座は……すぐそこにある」

教皇の声は静かだった。

だが、その静けさこそが恐ろしい。

千年を生きる者の悪意は、怒りも焦りも伴わない。

ただ、

確実に、

ゆっくりと、

世界を蝕んでいく。


・・・・・・・・・・


アーソン城の地下深く。

大地の魔力脈が交差する“魔力の心臓部”。

そこには2つの玉座が並び、

その間には“存在しない空間”が揺らめいていた。

海核はその空間に置かれている。

触れようとしても手はすり抜け、

魔力探知でも反応しない。

だが――

サリアとキヨフレッドが手を取り合い、

2人の魔力が重なったときだけ、

海核は“存在”を取り戻す。

封命供魔によって、二人の生命活動は停止した。

だが、魂は消えていない。

2人の身体は、結界を維持するための“魔力の器”となり、

アーソン全体の魔法陣を動かし続けている。

街路が光り、

塔が共鳴し、

水路が蒼く輝く。

街全体が、

まるで巨大な心臓のように脈動していた。

サリアとキヨフレッドは静かに目を閉じている。

「……キヨ。

ずっと一緒にいられるね……」

その表情は、悲しみではなく――

満ち足りた幸福だった。


・・・・・・・・・・


アスーカ教皇は、

遠くアーソンの方向へ視線を向けた。

「封命供魔……

美しい術です。

ですが、永遠ではない」

彼は微笑んだ。

「百年後か、千年後か……

結界が揺らぐその瞬間、

私は海核を手に入れる」

その声は、

静かで、確実で、

そして底知れぬ悪意に満ちていた。

千年を生きる者の計画は、

人間の尺度では測れない。

サリアとキヨフレッドが守った世界は、今は平和に包まれている。

だが――

その平和の裏で、ダークエルフの教皇は静かに、確実に、歩みを進めていた。

最後までお読みいただきありがとうございました。

気に入っていただけた方は、ぜひ、

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よろしくお願いいたしますm(__)m

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