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第97話「封命供魔」

第97話

ご愛読いただきありがとうございます。

すでに、ブックマーク/星評価をつけてくださった皆様ありがとうございます!

ブルイドンは、これからも何度でも攻めてくるだろう。

海核を奪い返すために。

完全体へ戻るために。

そして――大陸を海の底へ沈めるために。


サリアは知っていた。

彼が海核を取り戻した瞬間、この世界は終わる。

「……守らなきゃ。

キヨが守った世界を……守らなきゃ」

アーソンの空は、今日も不穏な雲に覆われていた。

ブルイドンの残滓が、遠く海の方角から漂ってくる。

弱体化しているとはいえ、彼の執念は消えていない。

だが――

アーソンには、他の都市にはない“強み”があった。

この街には結界魔法陣がある。

設計したのは、他ならぬキヨフレッドだ。

街路、塔、城壁、水路――

すべてが魔法陣の線を描くように配置されている。

街全体がひとつの巨大な魔法陣として機能し、

城の中心地下に置かれた“核”から魔力を循環させる構造。

キヨフレッドは、この街を“守るための都市”として作り上げていたのだ。

サリアはその構造を利用し、海核を永遠に封じる結界を張ろうとしていた。


・・・・・・・・・・


アーソン城の地下深く。

そこは古代から封印術の聖地とされ、大地の魔力脈が交差する“魔力の心臓部”だった。

高い天井。

冷たい石壁。

広大な空間に、魔力の脈動が響く。

そして――

その中央には、二つの玉座が並んでいた。

一つは “魔力の導き手”。

もう一つは “魔力の供給者”。

この二つの玉座は、

アーソン全体の魔法陣を動かすための“両輪”だった。


●魔力の導き手

街全体の魔力の流れを制御し、

魔法陣の形を維持する役割を持つ。


●魔力の供給者

魔法陣に魔力を注ぎ込み、

結界を維持するための“源”となる玉座。

強大な魔力を持つ者だけが座ることを許される。


そして、この二つの玉座の“間”には、魔力の位相がずれた“存在しない空間”が生まれる。

そこは物理的にはただの空間だが、魔力的には“空白”として扱われる特殊な領域。

その“存在しない空間”こそが、海核を隠す場所となる。

魔力による光の屈折でその空間に置かれたものは見えなくなり、かつ、魔力探知にも反応しない。

ブルイドンがどれだけ探しても見つからない。

だが――

サリアとキヨフレッドが手を取り合い、

二人の魔力が重なったときだけ、

海核は“存在”を取り戻す。

だからこそ、

サリアはこの場所を選んだ。


・・・・・・・・・


サリアはキヨフレッドの身体をそっと玉座に座らせた。

彼は相変わらず眠り続けている。

呼吸は弱く、魂は深淵に沈んだまま。


サリアは深く息を吸い、玉座の間に海核を封じた封印箱を置いた。

そして、隣の玉座に腰を下ろし、キヨフレッドの手を握りしめた。

玉座の間の空間のある海核が揺らいだ。


「……キヨ。

あなたと一緒なら、私は……どこまでも行ける」

その表情は、悲しみではなく、決意に満ちていた。


サリアがキヨフレッドの手を離すと、海核は光を失い、完全に“存在しない空間”へと沈んだ。


・・・・・・・・・・


そのとき――

サマヴァーとエアリが駆け込んできた。

「サリア! 何をする気だ!」

「サリア、やめて!

その魔力……普通じゃない……!」

サリアは、ただ静かに言った。

「ブルイドンは……必ず来る。

海核を奪い返すために。

そのたびに、誰かが傷つく……

キヨみたいに……」

エアリは唇を噛んだ。

サマヴァーは拳を握りしめた。

「だから……私が止める。

この結界で、海核を永遠に封じる」

サリアは微笑んだ。

「大丈夫。

私一人じゃないから」

彼女はキヨフレッドの手を握りしめた。

「キヨの魔力を……借りるの」

サマヴァーとエアリの顔が青ざめた。

「まさか……禁術を使う気か……!」

サリアは静かに頷いた。


・・・・・・・・・・


禁術・ソウルバインド・オファリング(封命供魔)


生命活動を停止させ、

肉体を“魔力の器”として扱う禁術。

魂を捧げ、命を結び、魔力へと変換する儀式魔法。


サリアはキヨフレッドの手を握り、額をそっと寄せた。

「キヨ……ごめんね。

でも……あなたと一緒なら……私は戦える」

サリアは涙を一粒だけ落とし、

術式を展開した。

「――《ソウルバインド・オファリング(封命供魔)》!」

魔法陣が光を放ち、

空気が震え、光が渦を巻いた。

キヨフレッドの身体から、静かに魔力が流れ出す。


同時に、サリアの魔力も結界へと注ぎ込まれていく。

「サリア!!

やめろ!!」

サマヴァーが叫び、

エアリが泣きながら駆け寄ろうとする。

だが、サリアの周囲に展開された結界が、

二人を近づけさせなかった。

サリアは振り返り、微笑んだ。

「大丈夫。

キヨが……一緒だから」

その瞬間――

サリアとキヨフレッドの生命活動が静かに停止した。

心臓の鼓動が止まり、呼吸が消えた。


二人の身体は、結界を維持するための“魔力の器”となった。


アーソン全体の魔法陣が輝き、街路が光り、塔が共鳴し、水路が蒼く染まる。

街全体が、まるで巨大な心臓のように脈動し始めた。

玉座の間の“存在しない空間”に置かれた海核が、2人の魔力を受けて安定し、完全に封じられた。


・・・・・・・・・・


サリアは静かに目を閉じる。

「……キヨ。

ずっと一緒にいられるね……」

その表情は、悲しみではなかった。

満ち足りた幸福だった。

サマヴァーは膝をつき、拳を握りしめた。

「サリア……

お前……そんな……」

エアリは泣き崩れた。

「サリア……キヨ……

どうして……どうしてこんな……!」

だが、結界は美しく輝き、海核は完全に封じられている。

ブルイドンが何度攻めてこようと、この結界を破ることはできない。

サリアとキヨフレッド――


二人を代償に築かれた絶対の封印。

アーソンの地下深くで、二人は静かに眠り続けていた。

世界を守るために。

互いのために。

そして――

永遠に寄り添うために。

最後までお読みいただきありがとうございました。

気に入っていただけた方は、ぜひ、

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よろしくお願いいたしますm(__)m

つけてくれると、嬉しいです。

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