表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

96/101

第96話「アーソン攻防戦」

第96話

ご愛読いただきありがとうございます。

すでに、ブックマーク/星評価をつけてくださった皆様ありがとうございます!

アスーカ教の大聖堂は、夜でも光を失わない。


天井に描かれた聖紋が淡く輝き、静寂の中に不気味な脈動を刻んでいた。

その中心に、アスーカ教皇は座していた。

白い法衣に身を包み、穏やかな微笑みを浮かべている。

だが、その瞳の奥には、底知れぬ闇が潜んでいた。

「……来たか、海の王よ」

霧のように姿を現したのは、重傷を負った龍海将ブルイドンだった。

海核を失った彼は、かつての威圧感をほとんど失っている。

その胸には、海核を抜かれた痕が黒く焦げ付いていた。

「……教皇。貴様の結界がなければ……私はここまで辿り着けなかった」

「礼は不要です。あなたは“必要な駒”なのですから」

教皇は微笑んだまま、ブルイドンの胸に手をかざした。

淡い光が広がり、ブルイドンの傷がゆっくりと塞がっていく。

「海核を失ったあなたは、もはや大海は操れない。

しかし――あなたの“存在器官”はまだ生きている」

「……海核を取り戻せば、私は……」

「ええ。完全体に戻れるでしょう。

そして、あなたの力は……我らの悲願に必要なのです」

教皇の声は甘く、しかし冷たかった。

アスーカ教皇の目的はただ一つ。

――神の座。

そのためには、

大地の魔力を操るキヨフレッドとサリアと、

海の魔力を操るブルイドンが必要だった。

「行きなさい、ブルイドン。

海核を奪還し、完全体へ戻るのです」

ブルイドンは静かに頷いた。

その瞳には、かつての力を取り戻すための執念が宿っていた。


・・・・・・・・・・


アーソンの空が、突然暗く染まった。

夜でもないのに、太陽が雲に呑まれたように光が消える。

サリアは窓から空を見上げ、息を呑んだ。

「……この気配……まさか……!」

次の瞬間、空が裂けた。

「サリア!! 来い!!」

サマヴァーが駆け込んできた。

その後ろには弓を構えたエアリが続く。

「ブルイドンが来た! 海核を奪い返しに!」

サリアは封印箱を胸に抱えて強く抱きしめた。

その中には、七重封海陣で封じた海核が収められている。

「……キヨを傷つけたあの龍……!」

サリアの瞳に怒りが宿る。

3人はアーソンの城壁へと駆け上がった。


・・・・・・・・・・


城壁の上から見下ろすと、

アーソンの外に広がる平原が、まるで海のように揺れていた。

「……海水……? いや、違う……!」

エアリが震える声で言った。

「ブルイドンの魔力……残滓だけで、ここまで……」

その中心に、黒い影が立っていた。

龍海将ブルイドン。

だが、以前のような巨大な姿ではない。

人型に近い、縮んだ姿。

海核を失った影響で、力が大幅に弱体化しているのだ。

しかし――その瞳だけは、深海の闇のように赤く燃えていた。

「サリア……海核を返せ……!」

ブルイドンが叫ぶと同時に、

周囲の空気が水に変わり、城壁に圧力がかかる。

サマヴァーが剣を構えた。

「来るぞ!!」


・・・・・・・・・・


ブルイドンが腕を振ると、

空気が海水の刃となって飛んできた。

「《ライト・シールド(光盾)》!!」

サリアが結界を展開し、海水の刃を弾く。

だが、衝撃で足が滑り、膝をついた。

「サリア!!」

エアリが矢を放つ。

矢は光の軌跡を描き、ブルイドンの肩に突き刺さった。

「ぐっ……!」

ブルイドンがよろめく。

弱体化している証拠だった。

サマヴァーが叫ぶ。

「今だ、押し返すぞ!!」

サマヴァーが地面を蹴り、ブルイドンへ突撃する。

剣が海水の皮膜を切り裂き、ブルイドンの胸に深い傷を刻んだ。

「ぐああああああ!!」

ブルイドンが叫び、海水が爆発するように周囲へ飛び散る。

サリアは結界を張り直し、仲間を守った。

「サマヴァー、エアリ……ありがとう……!

今のブルイドンなら……押し返せる……!」

エアリが矢を連射し、

サマヴァーが剣で海水の攻撃を弾き返す。

3人の連携は完璧だった。


・・・・・・・・・・


ブルイドンは膝をつき、荒い息を吐いた。

「……海核……返せ……!

それさえあれば……私は……!」

サリアは封印箱を抱きしめ、叫んだ。

「返すわけない!!

あなたは……キヨを……!」

その瞬間、ブルイドンの瞳が赤く光った。

「ならば……奪うまで……!」

ブルイドンが最後の力を振り絞り、

サリアへ向かって突進した。

「サリア!!」

サマヴァーが割って入るが、

ブルイドンの海水の腕が彼を弾き飛ばす。

エアリの矢も、海水の壁に阻まれた。

サリアは逃げない。

封印箱を胸に抱き、結界を張った。

「来るなら来なさい……!

あなたの海核は……絶対に渡さない!!」

ブルイドンの腕が結界に触れた瞬間――

「――《リバース・タイド(七重封海陣・反転)》!!」

サリアが術式を反転させ、

海核の封印力を逆流させた。

「ぐああああああああああッ!!」

ブルイドンの胸の傷が光り、

海核を失った痕が再び裂ける。

海水が噴き出し、ブルイドンは地面に崩れ落ちた。


ブルイドンは立ち上がろうとしたが、

足が震え、力が入らない。

「……サリア……貴様……!」

サリアは涙を浮かべながら叫んだ。

「もう来ないで……!

あなたは……キヨを……!」

ブルイドンは悔しげに歯を食いしばり、

霧のように姿を消した。

重傷のまま、再び逃げ去ったのだ。


サリアはその場に崩れ落ちた。

封印箱を抱きしめ、震える声で呟く。

「……キヨ……守ったよ……」

サマヴァーが肩を貸し、

エアリが涙を拭いながら微笑んだ。

「サリア……よく頑張った……」

アーソンの空に、ようやく光が戻った。

だが、戦いは終わっていない。

ブルイドンは必ず戻ってくる。


サリアは封印箱を抱きしめ、

眠り続けるキヨフレッドの元へと戻っていった。

「キヨ……」

その瞳には、ある決意が宿っていた。

最後までお読みいただきありがとうございました。

気に入っていただけた方は、ぜひ、

・ブックマーク

・下の評価で5つ星

よろしくお願いいたしますm(__)m

つけてくれると、嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ