第92話「激突」
第92話
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大地が震えた。
世界そのものが悲鳴を上げているようだった。
キヨフレッドが地脈魔力を解放した瞬間、平原の色が変わった。
大地の奥底から溢れ出した光が、地面を走り、空へと昇る。
その光は稲妻のように鋭く、しかし炎のように温かい。
対するブルイドンは、空を覆う巨大な影となり、海の深淵をその身に宿していた。
翼を広げるたび、空気が海水に変わり、風が潮の匂いを運ぶ。
その存在だけで、世界が“海底”へと引きずり込まれていく。
「白銀の剣士よ……その力、海の深さに届くと思うなよ」
ブルイドンの声が轟いた瞬間、空が裂けた。
海水の奔流が滝のように降り注ぎ、平原が一瞬で海へと変わる。
キヨフレッドは剣を構え、前へ踏み出した。
その足元で大地が砕け、光が噴き上がる。
「届かせるさ。お前を止めるためなら!」
二つの力が激突した。
――ドォォォォォンッ!!
世界が揺れた。
地脈の光と海の闇がぶつかり合い、空が白く染まる。
衝撃波が戦場全体を吹き飛ばし、兵士たちは地面に押し倒された。
誰も立っていられない。
誰も近づけない。
サマヴァーでさえ、牙を食いしばりながら後退した。
エアリは弓を握りしめたまま、ただ震えるしかなかった。
「……なんだ、あれは……人間の戦いじゃない……」
誰かが呟いたが、その声は風にかき消えた。
・・・・・・・・・・
サリアは結界の中心に立ち、両手を広げていた。
だが、その顔は涙で濡れていた。
「キヨ……! もうやめて……!
そんなに傷ついて……!」
キヨフレッドの体は、すでに何度も海水の刃に切り裂かれていた。
海水はただの水ではない。
ブルイドンの魔力を帯びた“海そのもの”だ。
触れれば皮膚を焼き、骨を削る。
それでもキヨフレッドは前へ進む。
剣を振るたび、血が飛び散る。
その血が地面に落ちると、地脈の光が揺らぎ、サリアの結界が軋む。
「キヨ! 戻ってきて!
お願いだから……!」
サリアは叫ぶ。
だが、結界を維持するために一歩も動けない。
駆け寄ることも、抱きしめることもできない。
ただ、涙を流しながら見守るしかなかった。
・・・・・・・・・・
ブルイドンが咆哮した。
「弱き者よ! その身を削ってまで抗うか!」
海の奔流が渦を巻き、巨大な水柱となってキヨフレッドに襲いかかる。
その高さは城壁の十倍。
大地を抉り、空を裂くほどの力。
キヨフレッドは剣を構えた。
だが、体は限界に近い。
足が震え、視界が揺れる。
「キヨーーーッ!!」
サリアの叫びが響いた。
その声が、キヨフレッドの心を貫いた。
「……まだだ。
まだ、倒れるわけにはいかない!」
地脈魔力が再び爆発した。
白銀の光が剣に集まり、刃が太陽のように輝く。
「――斬り裂けぇぇぇぇ!!」
剣が振り下ろされ、光が奔流を切り裂いた。
海水が蒸発し、霧となって空へ散る。
ブルイドンの目が見開かれた。
「なに……!?」
キヨフレッドはそのまま突き進む。
血を流しながら、足を引きずりながら、それでも前へ。
「お前を……止める!」
白銀の剣がブルイドンの腹に突き刺さった。
――ズガァァァァァンッ!!
衝撃が世界を揺らし、空が裂け、海と光が爆発する。
その光景は、もはや“戦い”ではなく“創世”だった。
・・・・・・・・・・
光が収まったとき、キヨフレッドは膝をついていた。
剣を支えにしなければ、倒れてしまうほどに傷ついていた。
ブルイドンは腹に大穴を開け、黒い海水を滴らせながら後退した。
その巨体が揺れ、空が暗くなる。
「……人間ごときが……ここまで……」
ブルイドンの声は、もはや雷鳴ではなかった。
サリアは結界を維持したまま、涙を流し続けていた。
「キヨ……キヨ……!
お願い、もう立たないで……!
これ以上傷つかないで……!」
だが、キヨフレッドはゆっくりと立ち上がった。
血に濡れた顔で、サリアの方を見て微笑む。
「大丈夫だ……サリア。
まだ……終わってない」
その姿に、サリアは声を失った。
涙が止まらない。
誰も近づけない。
誰も助けられない。
ただ、世界の命運を背負った一人の剣士が、
海の深淵と向き合っていた。
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