表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

90/103

第90話「大陸を駆ける二つの“無限”」

第90話

ご愛読いただきありがとうございます。

すでに、ブックマーク/星評価をつけてくださった皆様ありがとうございます!

龍魔王ヴィオデスが大陸を覆おうとしていた、混沌の時代。


私はヒーゴ魔法王国の第3王子、キヨフレッド・フォン・ヒーゴ。

5歳の私は、王族とはいえまだ幼く、政治も戦争も遠い世界の話だった。


「あなたがキヨフレッド王子ね?」

振り返ると、陽光のように明るい笑顔の少女が立っていた。

キシュレアン魔法王国の第1王女、サリア・フォン・キシュレアン。

7歳とは思えない気品をまといながら、しかしその瞳は好奇心で輝いていた。


「わたし、サリア。今日から仲良くしましょ!」

「え、あ……うん?」

王女らしい挨拶を期待していた私は、あまりの距離の近さに戸惑った。

だがサリアは気にする様子もなく、私の手を掴んで走り出した。

「ちょ、ちょっとサリア王女!?」

「サリアでいいってば! ほら、こっちこっち!」

その勢いのまま、彼女は木に登り――。

「わっ、高い……きゃあっ!」

案の定、落ちた。

「サリア!?」

「だ、大丈夫……ほらっ」

彼女の掌が光り、擦りむいた腕がみるみる塞がっていく。

「……王女なのに、そんな無茶を……」

「王女だからって、つまらないのは嫌なの。キヨも怪我したら言ってね。わたしが治すから!」

その笑顔は、幼いながらも眩しかった。


それからというもの、サリアは毎日のように私を振り回した。

「キヨ、あの魔物ちょっとだけ触ってみたい!」

「王女が魔物に触るな!」

「きゃーっ! やっぱり追いかけられたー!」

案の定だった。


「キヨー! 川に落ちたー!」

「なんで毎回巻き込むんだよ!」

王子としての威厳はどこへやら。

でも、気づけば彼女が来るのを楽しみにしていた。


・・・・・・・・・・


10歳になった頃、サリアがふと真剣な顔で言った。

「ねえキヨ……わたしたち、ちょっと変じゃない?」

「変って?」

「魔法の練習しても、全然疲れないの。みんなすぐ魔力切れになるのに」

言われてみれば、確かに。

周囲の大人たちは魔力切れで倒れたり、魔力回復薬を常に持ち歩いている。

なのに、私とサリアは――。

「……一度も魔力が尽きたことがないな」

「だよね。わたし、ちょっと怖い……」

サリアが不安そうに私の袖をつまむ。

王女らしからぬ弱さが、逆に胸を締めつけた。

「大丈夫だよ。サリアはサリアだ。変なのは世界の方だ」

「……もう、そういう言い方ずるいよ」

サリアは頬を赤くして、でも安心したように笑った。


異常に気づいた両国の賢人たちは、私たちを調べ始めた。

そして、信じられない事実が判明した。

「地脈魔力吸収……? それって、龍族の……?」

「うん。古代龍族だけが持っていた力らしい」

大地の下を流れる膨大な魔力――地脈。

そこから直接魔力を引き出すという、神話級の能力。

「でも、わたしたち人間だよ? 龍族の血なんてないし……」

「賢人たちも理由は分からないってさ」

サリアはしばらく黙り込んだ後、ぽつりと呟いた。

「ねえキヨ……もし、この力のせいで何かあっても……わたしのそばにいてくれる?」

「当たり前だろ。王女だろうがなんだろうが、サリアはサリアだ」

その瞬間、彼女はぱっと花が咲くように笑った。

「……うん! じゃあ、これからもよろしくね、キヨ王子さま!」

その笑顔を見たとき、胸の奥で何かが静かに動き出した。

この力がどんな運命を呼び寄せるのかは分からない。

でも、サリアとなら――どんな未来でも進んでいける気がした。


・・・・・・・・・・


成長するにつれ、サリアは大聖女と呼ばれるようになり、私は大魔導士として名を馳せた。

そしてついに、冥界の大森林を支配する暴君――龍魔王ヴィオデスとの大戦が始まった。

私は「白銀の剣士ブロン」という偽名を使い、前線に立った。

魔導士でありながら剣を振るったのは、魔力が無限であることを悟られぬようにするためだ。

サリアは後方で治癒と結界を張り続け、戦場の希望となった。

長い戦いの末、私は白銀の剣を龍魔王の心臓へと突き立てた。

その瞬間、世界は静まり返り、龍魔王の巨体が崩れ落ちた。

そして、大陸にようやく平和が訪れた。


そして私はサリアに想いを告げ、彼女は照れながらも頷いてくれた。

婚約の日、彼女は泣きながら言った。

「キヨ、ずっと一緒に戦ってきたんだもの。これからは一緒に生きていこうね」

私は静かに頷いた。

言葉にすることができないほどの嬉しさに包まれていた。


・・・・・・・・・・


しかし、平和は長くは続かなかった。

海を支配する龍海将ブルイドン――ヴィオデスの弟が動き出したのだ。

兄を失った怒りか、あるいは大陸支配の野望か。

ブルイドンは海底王国から大魔族軍を率いて大陸へ侵攻してきた。

ヴィオデスとの大戦で疲弊し、人口を大きく減らしていた大陸の種族たちは、もはや抵抗する力をほとんど残していなかった。

獣人族もエルフ族も人間族も、次々とブルイドンの軍に蹂躙されていく。

絶望が広がる中、ようやく各種族は手を取り合った。


獣人獅子族の戦士サマヴァー、エルフ族の弓使いエアリ、そして私とサリア。

4人が中心となり、獣人軍・エルフ軍・人間軍の連合軍が結成された。

サリアは震える声で言った。

「キヨ……また戦わなきゃいけないの?」

「守りたいものがある限り、戦うしかない。そして、守るよ」

彼女の手を握り返すと、サリアは涙を拭いて笑った。


・・・・・・・・・・


私たちの魔力は無限だ。

だが、それは決して誇るべき力ではない。

大地の魔力を吸い上げるということは、使い方を誤れば世界に危険を及ぼす恐れがある。

だからこそ、私たちは慎重に、そして覚悟を持って戦わなければならない。

龍海将ブルイドンは、兄ヴィオデスを超える力を持つと言われている。

海の魔力を自在に操り、巨大な津波や海竜を呼び出すその力は、まさに災害そのものだ。

だが、私たちには仲間がいる。

そして、サリアと私には“無限”がある。

この力が祝福なのか呪いなのかは分からない。

だが、世界を守るために使うと決めたのなら、それはきっと意味を持つ。


連合軍は大陸中央の平原に集結した。

空には黒雲が渦巻き、遠く海の彼方からは巨大な影が迫ってくる。

龍海将ブルイドン――その姿は、まるで海そのものが形を成したかのようだった。

私は深く息を吸い、サリアの手を握った。

「行こう、サリア。これが……俺たちの運命だ」

「うん。あなたとなら、どんな未来でも怖くない」

こうして、世界の命運を賭けた戦いが幕を開けた。

最後までお読みいただきありがとうございました。

気に入っていただけた方は、ぜひ、

・ブックマーク

・下の評価で5つ星

よろしくお願いいたしますm(__)m

つけてくれると、嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ