第83話「エドザー王立学園 修了の儀」
第83話
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エドザー王立学園 修了の儀。
冬の陽が差し込む大講堂。
高い天井から吊るされた水晶のシャンデリアが、朝の光を受けて七色に輝いていた。
エドザー王立学園、五年生の修了の儀。
王国中から貴族や高官が集まり、厳かな空気が張り詰める。
壇上に立つのは、学園長モジャー・モーリン。
魔族オロセルとの戦いで負った傷は癒えたものの、左足はまだ本調子ではなく、黒檀の杖を頼りに立っていた。
そして、白く長い髭を撫でながら、例によって例のごとく、ありがたくも長い祝辞が始まる。
「若き芽よ、知の庭を旅立ち、己が道を歩め。知識は剣となり、志は盾となる。されど、真の力とは、己を知ることに他ならぬ・・・」
(長い・・・!)
生徒たちの中には、すでに目を閉じて精神を飛ばしている者もいたが、壇上の三人は背筋を伸ばしていた。
首席、ミツルク・フォン・ヒノーヴァー
次席、センナ・フォン・エドザー
三席、ムネルダ・フォン・キーバッハ
モジャー・モーリンが三人に金・銀・銅のメダルを授けると、会場は拍手に包まれた。
その拍手の波が広がる中、最後列の席では――
「・・・ふっ、1点差か」
私ことトシード・フォン・エチゼルトは、静かに笑った。
狙っていた“影の席”は、マクシムに奪われた。
彼もまた、目立たぬことを望んでいたのだろうか。
マクシムと目が合う。
彼もまた、微笑んだ。
(やるな・・・)
(そっちこそ・・・)
誰にも気づかれぬまま交わされた、影の席と薄明の席(ビリ2)の無言の敬意。
だが、お互いに知る由もない。
トシードが“白銀の剣士ブロン”として暗躍してきたことを。
そして、マクシムがムツート連合国の盟主シロンドルフ王家の第3王子マサヴェイであり、“黒雷の龍剣士” “影の守護者”として暗躍してきたことを
修了の儀が終わる頃、センナがそっと私の袖を引いた。
「トシードさん、お願いがあるの。サマヴァーに、一緒に来てくれませんか?」
その声には、王女としての使命と不安が混ざっていた。
「・・・・・ああ、・・・・・いいよ。卒業後の進路は決まってないというか、イネザベス研究室にとりあえず残るつもりだったから」
そう言って、私は静かにうなずいた。
その瞬間、センナの肩がふわりと緩んだ。
緊張がほどけたように、胸元で組んでいた手がほどけ、ほんの少しだけ私の方へと身を寄せる。
目元がふわっと和らぎ、まるで春の陽だまりのような笑みが浮かんだ。
「・・・よかった」
小さく、けれど確かにそう呟いた声は、私にしか聞こえなかったかもしれない。
その頬には、ほんのりと紅が差していた。
王女としての威厳を保とうとする姿勢の奥に、素直な喜びがにじんでいた。
センナは、私の袖を握ったまま、しばらく手を離さなかった。
その手は、震えてはいない。
けれど、どこか名残惜しそうに、指先に力がこもっていた。
頼られている。
・・・いや、それだけじゃない。
この旅に、私が必要だと、彼女は本気で思ってくれている。
そう思うと、胸の奥が少しだけ温かくなった。
こうして、私の新たな旅が始まる。
王女付きの魔道具師として。
そして、センナを守る者として。
それが、どんな運命を呼び寄せるのかは、まだ誰も知らない――。
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