第80話「怪物討伐」
第80話
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冥界の大森林から戻ったキラの報告は、同盟軍の作戦本部に衝撃を与えた。
魔王軍は失われた柱を補うため、魔族同士を融合させる禁断とも思える儀式を行い、巨大な怪物を生み出している――。
その怪物は、最終的には魔族数十体分の魔力を宿し、前線に投入されれば戦線は崩壊する。
この情報は、同盟軍にとって“最後の警告”だった。
「・・・・・討たねばならん。あの怪物が動き出す前に」
参謀長の言葉に、作戦本部の空気が張り詰める。
「討伐隊の指揮は――イサード少将に任せたい」
その名が出た瞬間、場の空気が変わった。
エドザー王国近衛騎士団団長 兼 同盟軍第一師団少将 であるイサード。
実戦向けの剣術を極め、剛力と胆力を兼ね備えた男。
諦めを知らず、どれほど劣勢でも前に進む“エドザー王国最強の剣士”と呼ばれている。
イサードは静かに頷いた。
「怪物がどれほどの力を持とうと、斬れぬものではない。
――俺が行く」
その声は低く、しかし揺るぎなかった。
・・・・・・・・・・
討伐隊は、エドザー王国の最新鋭魔道具と精鋭騎士を総動員して編成された。
・圧縮魔力式高威力魔石砲台
・連射型魔石砲
・供給魔力量リミット機能付き高威力起動魔道具
さらに、キラが案内役として同行することになった。
彼女はイズナ隊長の遺志を継ぐため、震える足を押し殺して前に進む。
「・・・必ず、あの怪物を止めましょう。隊長のためにも」
イサードは彼女の肩に手を置いた。
「お前の仲間の犠牲には、俺が必ず報いる」
その言葉に、キラは静かに頷いた。
霧の谷――
そこは以前よりも濃い瘴気に包まれ、魔力が渦を巻いていた。
「魔力濃度、異常値です・・・! 魔石砲の威力が落ちます!」
「心配するな。レギュレーターを最大出力にしろ」
イサードの指示で、青白い光が広がり、周囲の魔力の揺らぎを抑え込んでいく。
「魔石砲、安定しました!」
「よし――撃て!」
轟音が谷に響き渡り、魔石砲の光が霧を切り裂く。
だが、その光の先に現れたのは――
「来た!」
巨大な影。
魔族の身体を無理やり繋ぎ合わせた異形の怪物。
複数の腕、複数の顔、複数の翼が不規則に蠢き、全身から黒い魔力が噴き出している。
「魔石砲、連射開始! 高威力魔石砲台、全門開放!」
連射魔石砲と高威力魔石砲台が火を噴き、光の雨が怪物に降り注ぐ。
だが、怪物は怯むどころか、魔力の壁を展開して攻撃を弾いた。
「効いていない・・・・・!」
「いや、効いている。だが、あれは魔力の塊だ。魔力を断ち切らねば倒せん」
イサードは剣を抜いた。
その刃には、エンチャント魔道具による“魔力断絶”の属性が付与されている。
「俺が行く。魔石砲は援護に徹しろ」
「団長! あれは危険すぎます!」
「ふっ、険でなければ、俺の出番はない」
イサードは一歩踏み出し、霧の中へと走り出した。
怪物が咆哮し、黒い魔力の奔流を放つ。
地面が抉れ、岩が砕ける。
だがイサードは止まらない。
魔力の奔流を剣で切り裂き、一直線に怪物へと迫る。
怪物の腕が振り下ろされる。
イサードは剣を構え、全身の力を込めて受け止めた。
衝撃で地面が割れ、周囲の霧が吹き飛ぶ。
「ぐっ・・・! だが・・・折れん!」
イサードは跳躍する寸前、背後から迫る“別の腕”の気配に気づいた。
「2本だけではないか・・・!」
振り返るより早く、背中を薙ぎ払うように巨大な腕が迫る。
イサードは剣を横薙ぎに振り抜き、魔力断絶の光刃でその腕を切り裂いた。
だが、切断面から黒い魔力が溢れ、肉が蠢き、すぐに再生する。
「再生・・・いや、融合した魔族たちの魔力が互いを補っているのか」
怪物は咆哮し、複数の顔が一斉に呪詛を唱え始めた。
霧が震え、空気が歪む。
「魔力干渉・・・来るぞ!」
次の瞬間、怪物の周囲に黒い魔力の渦が生まれ、“重力のような圧力”がイサードを押し潰そうと迫った。
「ぐ・・・・・っ!」
膝が沈む。
鎧が軋む。
骨が悲鳴を上げる。
キラが叫ぶ。
「イサード少将!!」
だがイサードは、歯を食いしばりながら前へ踏み出した。
「こんな・・・圧力・・・!」
地面に亀裂が走るほどの重圧の中、イサードは剣を地面に突き立て、魔力断絶の光を全身に巡らせた。
「――断ち切るのは魔力だけではない。
お前たちの“呪い”ごと、斬り裂く!」
剣が光を放ち、周囲の黒い圧力が一瞬だけ薄れた。
その隙を逃さず、イサードは地を蹴った。
怪物の翼が広がり、黒い羽根が無数に飛び散る。
それは羽根ではなく、魔力を帯びた“刃”だった。
「全方位攻撃・・・!」
空間を埋め尽くす黒刃がイサードを襲う。
だがイサードは剣を高速で振り回し、
光の軌跡で防壁を作りながら突き進む。
「はああああッ!!」
黒刃が弾け飛び、イサードは怪物の懐へ飛び込んだ。
怪物は複数の腕を同時に振り下ろす。
その速度は、先ほどよりも速い。
「・・・強化してきたか!」
イサードは一撃ごとに剣を合わせ、
衝撃で足元の岩が粉砕される中、
一歩、また一歩と前へ進む。
「イサード団長! 魔石砲、援護射撃いきます!」
援護射撃を背にイサードは前へと進む。・
怪物の胸部――魔力核が脈動し、
黒い光が収束していく。
「・・・来るぞ。最大級の魔力放出だ!」
怪物が口を開き、黒い奔流を吐き出した。
それは先ほどの比ではない、
“谷を丸ごと消し飛ばす”ほどの魔力の津波だった。
イサードは剣を構え、魔石の力を刃に集中させた。
「――突破する!!」
黒い奔流と光の刃が激突し、
世界が白と黒に染まる。
爆風が谷を揺らし、
討伐隊の騎士たちは思わず身を伏せた。
「団長!!」
「少将!!」
爆煙の中から、
一筋の光が走った。
イサードだ。
黒い奔流を切り裂き、怪物の胸部へ一直線に突き進む。
「これでーーー終わりだッーーー!!」
そして――
怪物の胸部――魔力の核が集中する部位へと剣を突き立てる。
「魔力断絶――破ッ!!」
剣が光を放ち、怪物の魔力が一気に崩壊する。
怪物は苦悶の咆哮を上げ、全身が黒い霧となって崩れ落ちた。
「・・・終わったわ・・・!」
キラが涙し、膝から崩れ落ちる。
討伐隊の騎士たちも歓声を上げた。
イサードは剣を収め、静かに呟いた。
「イズナ・・・お前の遺した情報が、勝利を呼んだぞ」
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