第72話「漆黒の未来視の魔族オロセル」
第72話
ご愛読いただきありがとうございます。
すでに、ブックマーク/星評価をつけてくださった皆様ありがとうございます!
強烈な魔力の波動――1号棟の方角だ。
「ここに居ても、何もできない・・・・・それに、あの魔力は・・・・・!」
直感が告げていた。黒マントの剣士ならば、イネザベスを守り抜くだろう。
私は決意を固め、踵を返す。
「・・・・・必ず戻る」
そう心の中で呟き、逃げるふりをして研究室を後にした。
私の足は迷いなく1号棟へと向かい、もう一つの迫り来る魔力の源へと急いだ。
背後から駆け寄る影――BBQで食べ過ぎてひっくり返って寝ていたはずの子白狼ガオンが、息を弾ませながら並走してくる。
小さな足音が芝生を叩き、夕暮れの風を切る。
トシード:「ガオンも気づいたか」
子白狼ガオン:「おん!すごいのがいるおん」
トシード:「よし!ガオン、行くぞ!」
ガオンは嬉しそうに頷くと、私へ向かって飛び上がった。
瞬間、白銀の布がパァッーーーと広がり、風を切ってひるがえり、私の体を包み込んでいく。ひとつながりの白狼のマスクとマントを纏った私は、白狼と一体となり、全身に力が湧いてくる。
トシード:「ふふふ。じゃあ、行くか!」
胸元の白銀のメダルには立体的な白狼が刻まれている。
その白狼が目を開けると、金色の瞳がキラッと輝きを放った。
ガォォォォーーーン!
・・・・・・・・・・
1号棟の芝生に、血の匂いが漂っていた。
割れた5階の窓から吹き飛ばされたらしき三賢モジャー・モーリンが地面に倒れ込んでいる。
腹には深々とナイフが突き立ち、赤黒い血が芝生を染めていた。
さらに落下の衝撃で骨は砕け、体は不自然に折れ曲がり、息は弱く、意識もほとんど途絶えかけていた。
その上空には漆黒の魔族――オロセル。
水晶球を撫でながら、冷たい声を響かせる。
「未来を語るモジャー・モーリンは、氷の中で沈黙させる。彼の運命はすでに私の水晶に映っているぞよ」
その言葉は、死の宣告のように芝生に響いた。
水晶球の赤黒い光が脈動し、モジャーの弱々しい呼吸を覆い隠すかのように揺らめく。
空気は凍りつき、芝生の先端に氷の結晶が広がり始める。
冷気が肌を刺し、吐息が白く曇る。
耳の奥で氷が砕けるような音が響き、世界そのものが凍りついていく錯覚に襲われた。
だがその瞬間――ガォォォォーーーン!
白狼ガオンの吠え声が空気を震わせ、邪悪な魔力を押し返す。
血の匂いを吹き飛ばし、芝生の草が波打つ。
夕暮れの空に白銀の波動が走り、闇を裂くように輝いた。
白銀の剣士ブロンは剣を構え、モジャーの前に立つ。
「ふふふ。じゃあ、いくか!」
夕陽が刃に反射し、漆黒の魔族の影を裂くように光を放つ。
白銀と漆黒――二つの力が芝生の上で対峙する。
未来を断ち切ろうとする魔族と、未来を守ろうとする剣士。
オロセルの水晶球が脈動し、赤黒い光が波紋のように広がる。
冷気が渦巻き、芝生を凍らせる。
ブロンの剣は白銀の輝きを増し、ガオンの吠え声が再び空気を震わせる。
その場の空気は張り詰め、音すら凍りついたようだった。
モジャーのかすかなうめき声が、唯一の人間的な響きとして芝生に残る。
だがそれも、オロセルの魔力に呑み込まれようとしていた。
オロセルの瞳は漆黒に染まり、冷笑を浮かべる。
水晶球の中には未来の断片が揺らめき、そこには血と氷に閉ざされた光景が映っていた。
彼の声は低く、しかし確実に心臓を締め付けるような響きを持っていた。
「未来は凍り、希望は砕ける。抗う者はすべて、氷の墓標に眠るのだぞよ」
ブロンは一歩踏み出す。
芝生が軋み、剣先が夕陽を受けて閃光を放つ。
ガオンは白銀の波動をさらに強める。
二つの存在が重なり合い、未来を守る力となる。
刹那、白銀の閃光と漆黒の闇がぶつかり合い、芝生を震わせる衝撃波が走った。
地面の砂が舞い上がり、木々がざわめき、夕暮れの空が一瞬だけ昼のように明るくなる。
衝撃は建物の壁を震わせ、窓ガラスが軋む音を立てた。
未来を断ち切ろうとする者と、未来を守ろうとする者――その戦いが、今始まった。
最後までお読みいただきありがとうございました。
気に入っていただけた方は、ぜひ、
・ブックマーク
・下の評価で5つ星
よろしくお願いいたしますm(__)m
つけてくれると、嬉しいです。




