第70話「建国記念祭」
第70話
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エドザー王国の建国記念祭「黎明の日」
王国の始まりを祝う一大行事。
黎明の儀式―――
王城前の広場は、まだ夜の冷気を抱きながらも、群衆の熱気で満ちていた。
石畳の上には無数の松明が並び、炎の列が王城へと続く道を照らし出す。
空は深い群青から淡い紫へと移ろい、やがて黎明の兆しが訪れようとしていた。
広場中央に設けられた高壇に、イエヤード・フォン・エドザー国王が立つ。
その姿は金糸を織り込んだ白の礼服に包まれ、背後には王国の紋章旗が風に揺れていた。
王の眼差しは静かに遠くを見据え、まるで太陽の到来を呼び寄せるかのようであった。
その隣には、宰相ミツトー・フォン・キーバッハが控える。
黒と深紅の儀礼服に身を包み、手には「黎明パン」を載せた銀盆を抱えていた。
彼の役目は、王国の始まりを象徴する糧を民へ分かち与えること。
宰相の厳かな表情は、王国の未来を支える責務の重さを映していた。
群衆は息を潜め、鐘の音が低く鳴り響く。
その瞬間、東の空が裂けるように光を放ち、太陽が姿を現した。
黄金の光が王城の尖塔を染め、広場全体を神聖な輝きで包み込む。
王は右手を高く掲げ、声を響かせた。
「――黎明は訪れた。我らが王国は、今日も新たなる始まりを迎える」
宰相は銀盆を掲げ、黎明パンを割り、群衆へと差し出す。
民は歓声を上げ、各々がパンを掲げて太陽の光を受け止める。
その光景は、王国全体が一つの祈りとなり、未来への誓いを刻む儀式であった。
鐘の音、歓声、そして朝日の輝きが重なり合い――
王城前の広場は、まるで神々の祝福を受ける聖域のように荘厳な空気に包まれていた。
黎明の光が王城を黄金に染めると、広場に響いていた鐘の音が次第に高らかに変わり、合図のように楽師たちの演奏が始まった。
太鼓の重低音が大地を揺らし、角笛の響きが空へと伸びる。
群衆は歓声を上げ、王国の始まりを祝う熱気が一気に広がった。
イエヤード・フォン・エドザー国王は壇上から降り、威厳ある歩みで大通りへと進む。
その背には王国の旗が翻り、白金の鎧を纏った近衛騎士団が列を成して続いた。
王の姿はまるで黎明そのものを体現し、民衆は道の両側から歓呼の声を浴びせた。
宰相ミツトー・フォン・キーバッハは王のすぐ後ろに従い、銀盆に残された黎明パンを掲げながら歩む。
彼の歩みは重々しく、王国の未来を支える柱としての責務を象徴していた。
行列は王城から大通りを抜け、王都の中心にある大広場へと続いていく。
太陽はすでに高く昇り、黄金の光が行列全体を照らし出す。
王国の民は歌い、踊り、笑い、王と共に新しい一日の始まりを祝った。
その光景は、まるで王国全体が一つの大河となり、黎明の流れに身を委ねているかのようであった。
しかし、その華やかさの裏で――影に潜む者たちが、冷たい眼差しで標的を見据えていた。
黎明の儀式が終わり、響いていた鐘の音はやがて軽やかな楽の音へと変わった。
王と宰相が退場すると同時に、大広場の空気は厳粛さから解放され、民衆の歓声が波のように広がった。
石畳の大通りには色鮮やかな屋台が次々と並び、甘い菓子や香り高い茶が振る舞われる。
蜂蜜を染み込ませた焼き菓子、果実を練り込んだパイ、そして「黎明パン」を模した小さな菓子パンが子どもたちの手に渡る。
湯気を立てる茶壺からは芳しい香りが漂い、冷えた朝の空気を柔らかく包み込んだ。
路地では楽師たちが笛や太鼓を奏で、若者たちは輪になって踊り始める。
老人たちは椅子に腰掛け、茶を片手に孫たちの笑顔を見守り、商人たちは声を張り上げて自慢の品を売り込む。
王立学園名物の食べるバースクチーズケーキと飲むバースクチーズケーキには、さっそく長蛇の列ができている。
王都全体が一つの大きな宴となり、昼から夜まで続く喜びの渦に包まれていくのだ。
子供たちは菓子を頬張りながら走り回り、若者たちは踊りに熱を帯び、老人たちは昔語りを始める。
茶と菓子の香り、歌と笑い声、踊りの足音――それらすべてが重なり合い、王国の繁栄を祝う一つの交響曲となっていく。
夜に灯火を消し、星空を眺める「王国の未来を星に託す」儀式で祭りが締めくくられるまで祭りは続くのだ。
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