第7話「チョコレートケーキ」
第7話
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王都のエチゼルト邸の食堂。
長兄イサルトと次兄ソウミリアンと共に私も席に着く。
しばらくすると、扉が開かれ、執事コグスを伴った父カフレッド入ってきた。
(ようやく夕食が食べられる~、もう腹ペコだよ~)
と思いつつも、そんな態度や顔色は見せず、上品に静かにしている。
コグスが椅子を引き、父も着席する。
いよいよ食事の始まりだ。
今日は入学式だったので、豪華なお祝い料理が並ぶはず。
とても楽しみだ。
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ちなみに、キヨフレッド・フォン・ヒーゴだった時の私の一番の楽しみは美味しいものを食べること。
美味しいものさえあれば、すべての疲れは吹っ飛ぶ。
お祝いの時に美味しいものを食べるのは当然として、
苦しい時ほど、美味しい料理に美味しいお酒をみんなと楽しんだものだ。
なお、エドザー王国では、お酒を飲める年齢に法律はない。
ただ、エチゼルト家として、14歳の王立学園卒業式以降で飲酒が許されている。
ほとんどの貴族の家は、14歳の王立学園卒業式以降で飲酒が許されているので、エチゼルト家が特別というわけではないので、私としても文句はない。
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・野菜たっぷりのスープ
・角鶏のソテー
・パン
・チーズ
・干しブドウ
(あれれっ、そんなはずは、、、最後にきっとお祝いのケーキとか出るはずだ!)
なんということでしょう、、、いつもと同様のメニュー
この料理も美味しいけど、けど、けど、、、
執事コグスと目が合う。
いかん、いかん、露骨に落胆の表情を見られてしまったか・・・
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私は、自室で、火魔法と風魔法で、デスクの上のランプを灯したり、消したりをボケ―としながら繰り返していた。
はぁーーーと深いため息をついた瞬間、ノックの音が聞こえた。
私はあわてて、火を消し、ドカドカっと、デスクの上の本を落としてしまった。
トシード:「どっ、どうぞー!」
執事コグス:「どうなされましたか?」
トシード:「いや、なんでもない。ちょっと本を読んでいたらウトウトしてしまったようだ」
コグスは「そうでしたか」と言い、ポケットから“火の魔石”を取り出すと、デスクのランプに火をつけ、本を拾ってくれた。
私は、椅子に座ったまま、コグスの美しい所作に見入ってしまった。
コグスは改めて私のことを見つめると、
執事コグス:「本日は、ご入学おめでとうございました」
と一礼した。
すると、侍女がチョコレートのホールケーキを持って入ってきた。
私の顔がぱっと明るくなったのがわかったのだろう。
コグスが微笑むのも見えた。
私がチョコレートを大好きであることを、どこで知ったかなんて、コグスに聞いたりはしない。
本当は気になるが、やっぱり聞いたりはしない。
取り分けられたチョコレートケーキとアールグレイの紅茶がデスクに置かれた。
私は心の中で踊っているが、それは気づかれていないことを祈ろう。
トシード:「あり・・・いや、こんなことせずとも、よいものを。余計なことだ」
執事コグス:「それは大変申し訳ございませんでした。せっかくご用意させていただきましたので、一口だけでもお召し上がりいただけると我々は嬉しく思います」
とういうと、コグスは侍女の顔をみた。
侍女は戸惑いながらも頷いている。
トシード:「そっ、そうか。それならいただこう」
執事コグス:「はい、ぜひそうしていただければと思います」
私は頷いた。
トシード:「そうだ、、、残りのケーキは、お前たちで食べてくれ」
コグスは微笑みながらお辞儀をし、侍女とともに退室していった。
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私はデスクに置かれたチョコレートケーキを見つめた。
濃厚なチョコレートの香りが漂い、心が弾む。
瞳を輝かせながら、一口目をフォークに乗せ、静かに口に運んだ。
甘さとほろ苦さが絶妙に交わるチョコレートの味わいが、口いっぱいに広がる。
目を閉じて、舌の上でゆっくりと溶ける感覚を楽しむ。
その瞬間、自然と微笑みが浮かんだ。
心の中の小さな喜びが、静かに膨らんでいく。
(これだよ!最高だーーー!)
と、心の中で叫びながら、私はフォークを再び手に取る。
一口、また一口とケーキを味わう。
ケーキの美味しさに夢中になっている間、世界は私とこの素晴らしいデザートだけになった。
私は誰にも邪魔されることなく、この瞬間の幸福を独り占めしていた。
最後の一口を口に含む。
私は満足げに息をつき、フォークをデスクに置いた。
トシード:「本当に美味しかった」
と呟き、目を細めた。
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