第69話「魔族暗殺部隊」
第69話
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エドザー王国の王都、その片隅に広がるスラム街。
昼でも暗い裏路地は、湿った石壁に苔が張り付き、腐臭と冷気が漂っていた。
人々が足を踏み入れることを避けるその路地の奥に、さらに深く潜る隠し階段がある。
重々しい鉄扉を押し開けた瞬間、外界とは隔絶された異界の空気が押し寄せてきた。
そこは魔族の暗殺部隊が潜む地下拠点。
冷たい空気が常に満ち、燭台の炎は黒煙を吐きながら不気味に揺れている。
壁には古代文字が刻まれた魔法陣が浮かび上がり、赤黒い光が脈動するように明滅していた。
床は血を思わせる赤い石で敷き詰められ、ところどころに魔石が埋め込まれ、まるで心臓の鼓動のように鈍い光を放っている。
中央の石卓には王都の地図が広げられ、名が記された羊皮紙が並んでいた。
赤い印が打たれた場所は、王国の知恵袋たちの居所である。
・宰相ミツトー・フォン・キーバッハ
・三賢セサス・タクィナス
・三賢カンベルトゥス・クロヌス
・三賢モジャー・モーリン
・魔道具発明者イネザベス・クスヴァリ
その名は、王国の未来を支える柱であり、同時に破壊すべき標的でもあった。
黒い幕を背にした玉座に腰掛けるのは、魔族の暗殺部隊のリーダーであるオヴィーネ王。
鋭い眼光が部下たちを射抜き、沈黙の中に圧倒的な威圧を放っている。
ホビンスは屍のような冷気を漂わせながら刃を研ぎ、金属音が地下室に響く。
ツヴァルは影の中で低く呪文を唱え、囁きが壁に反響して不気味な旋律を生み出す。
クーゲンは奇怪な器具を組み立て、歯車の軋む音が不協和音を奏でる。
オロセルは水晶球に未来の断片を映し出し、赤黒い光と共鳴するように揺らめく。
ホルクスは無言で剣を磨き、その刃に映る光が冷たい閃光を放った。
拠点全体は、まるで生き物のように呼吸しているかのごとく、不気味な鼓動を響かせていた。
この地下空間こそ、王国の心臓を狙う暗殺計画の巣窟――そして、破滅が始まろうとしていた。
沈黙を破ったのは、刃を研ぐホビンスだった。
「宰相ミツトー・フォン・キーバッハは俺がやる。政治の中枢を腐らせるのは、墓の冷気を知る者の役目だぁぁぁぁぁ」
ツヴァルが影の中から笑みを漏らす。
「ならば三賢セサスは私だ。人心を惑わす術で、彼の知恵を民から切り離す。お前らの粗暴な手では足りぬわ、ぬふふふふふ」
クーゲンは器具を組み立てながら鼻で笑った。
「ふん。学問の柱、カンベルトゥス・クロヌスは私が崩す。錬金術の変化で知識そのものを瓦解させる。誰にも譲らん」
水晶球を撫でるオロセルが冷たい声を響かせる。
「未来を語るモジャー・モーリンは、氷の中で沈黙させる。彼の運命はすでに私の水晶に映っているぞよ」
最後にホルクスが剣を鞘に収め、低く言葉を吐いた。
「魔道具の発明者イネザベス・クスヴァリは俺が斬る。技術の芽は剣で断ち切るのが最も確実だ」
互いの言葉は鋭くぶつかり合い、協力の気配はない。
各々が己の力に絶対の自信を抱いていた。
その時、玉座に座るオヴィーネ王が立ち上がり、冷たい声で告げた。
「よかろう。お前たちの欲望をそのまま割り振りとする。だが忘れるな――暗殺は同時刻に行え。王国の心臓を一度に貫くのだ。」
その言葉に、部隊は沈黙した。
作戦などない。
決定されたのはただ一つ――五つの命を、同じ刻に奪うこと。
・宰相ミツトー・フォン・キーバッハ 暗殺担当:ホビンス
・三賢セサス・タクィナス 暗殺担当:ツヴァル
・三賢カンベルトゥス・クロヌス 暗殺担当:クーゲン
・三賢モジャー・モーリン 暗殺担当:オロセル
・魔道具発明者イネザベス・クスヴァリ 暗殺担当:ホルクス
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