第68話「動揺」
第68話
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ぐーたら第三王子は、魔法の廃れた世界で、龍魔王の力をこっそり使い、世界を救う
第19話「動揺」も合わせてお楽しみください。
マクシムは頻繁にイネザベス研究室に出入りするようになった。
熱心に魔道具の勉強をしている。
イネザベスもカコレットも勉強熱心なマクシムはウェルカムだ。
それに、なによりもマクシムは聞き上手である。
イネザベスもカコレットも嬉しそうに魔道具の設計技術について語っている。
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魔石の研究と魔法陣の研究は王立学園にて細々と行われていた。
そして20年ほど前に、魔石から魔力を取り出す機構を発明したのがモジャー・モーリンである。
これにより魔石と魔法陣を組み合わせることで魔法の再現ができるようになった。
現在では
赤の火属性魔石で、ストーブ
青の水属性魔石で、加湿器
緑の風属性魔石で、扇風機
茶の土属性魔石で、浄水器
黒の闇属性魔石で、遮光カーテン
黄の光属性魔石で、ランタン
などが一般的は生活の便利グッズとして家庭に普及しているが、当時は驚愕の発明品として世間の注目を浴びた。
この功績により、モジャー・モーリンは、エドザー王国の三賢となり、王立学園の学園長に就いた。
そして、モジャー・モーリンは魔法陣研究と魔道具開発に力を注ぎ、多くの弟子を育成していった。
その弟子のひとりが、新進気鋭の魔道具発明家と呼ばれるイネザベス・クスヴァリである。
モジャー・モーリンが創った魔石から魔力を取り出す基本機構は、取り出し効率が25%であった。
これを改良し、取り出し効率75%に引き上げたのがイネザベスである。
これにより、生活魔道具の低消費魔力化が実現し、魔道具の長時間連続駆動や、威力UPや、小型化など使い勝手が大幅に向上した。
そして、出力が上がったことで武器魔道具という新たな道も切り開いた。
“魔石砲”が代表作であり、エドザー王国の防衛力強化に貢献している。
そのイネザベスの弟子がカコレット・サハナイトであり、私ことトシード・フォン・エチゼルトである。
カコレットは専門が武器魔道具であり、“魔石砲”の改良に取り組んでいる。
私といえば、唯一の発明として認知されているのは魔石通話器”モシモシ”であり、この発明により“天才”と呼ばれたこともある。
しかし、これ以降の発明はイネザベスに発表してもらっており、私は“イネザベス先生のところの助手”という扱いだ。
“天才”と呼ばれなくなって久しく、世間からの注目はなくなっており、ひっそり生活を満喫している。
モジャー・モーリンからすれば、カコレットと私は孫弟子となり、すれ違えば声をかけられ可愛がられている。
我々は、モジャー・モーリン一門なのである。
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マクシムがノートを片手に話しかけてきた。
「ト、トシードさん、教えてください」
トシード:「えっ、なに?私にわかることなら・・・」
マクシム:「はい・・・、よろしくお願いします」
マクシムがノートを見せてくれた。
そこには魔道具発明年表がきれいに整理されていた。
マクシム:「あのー、1年前ぐらいから発明の速度があがっているのですが、何かあったのですか?」
ドキッ!!!
なぜ・・・、なぜ、それを私に聞くのだ。
私は動揺を必死に隠したつもりだが、マクシムが私の顔を覗き込んでくる。
マクシム:「ど、どうかしましたか?」
トシード:「い、いや・・・、な、なんでもないですよ」
マクシム:「そ、そうですか・・・、何か変な質問をしてしまったかと思いました・・・、すみません」
トシード:「うーん、なんだろうねー・・・」
といいながら深く考えるふりをする。
マクシムは静かに私の回答を待っている。
トシード:「イネザベス先生は何かいってました?」
マクシム:「いや、それがそこはあまり詳しく教えてくれなくて。カコレット先生もです」
トシード:「そうなのかー・・・」
マクシム:「そうなのです。なので、しつこく聞くもの申し訳ないなと思いまして・・・」
なるほど、イネザベスもカコレットも、私が目立たないように気を使ってくれているのだな。
本当に信用できる2人だ。
ありがたい。
といっても、あまり曖昧にするのも、秘密がありそうで逆効果な気もするよな・・・。
どうしようか・・・
私はだいぶ悩んでしまっている。
マクシム:「す、すみません。無理しなくて大丈夫ですよ・・・」
トシード:「い、いや。なにがあったのか思い出していたのです・・・確か・・・アスーカ教立図書館で・・・魔法陣の理解が・・・進んだって・・・いっていたような・・・気がするけど・・・」
マクシム:「な、なるほど。アスーカ教立図書館ですか。納得です」
トシード:「そ、そう。それならいいのだけども」
マクシム:「あ、ありがとうございました。これですっきりしました」
トシード:「それは良かった。でも、なんでそんなにいろいろ調べているの?」
マクシムの表情が動揺しているように一瞬見えたが、気のせいだろうか。
マクシム:「い、いえ、ま、魔道具に・・・そう、魔道具にとっても興味があるのです」
トシード:「ふーん、なにか作りたいものでもあるの?」
マクシム:「い、いえ、ま、魔道具が作りたい・・・というよりも・・・み、そう、み、見ているのが好きなのです!」
トシード:「そうですか。そういう趣味もありますよね」
マクシム:「そ、そうなのです。トシードさんの魔石通話器”モシモシ”は素晴らしい発明ですよね!どうやったら思いつくのですか?」
ドキッ!!!
私は動揺を必死に隠したつもりだが、マクシムが私の顔を再び覗き込んでくる。
トシード:「そ、それは・・・テレポートホールの・・・魔法陣を・・・イネザベス先生に教えてもらった・・・から・・・です」
マクシム:「そうなのですか~。やはりイネザベス先生はすごい方なのですね」
トシード:「そ、それは、そ、そうです。まったくそうです。そう、そうです。間違いないです」
マクシム:「ふふ、トシードさんはイネザベス先生を尊敬しているのですね。わかります」
えっ、凄いとは思ってないけど・・・
でも、ある意味で尊敬はしているかもしれない。
いままで気づいてなかったけど。
私は無言で頷いた。
マクシムは納得した笑顔を残し、棚に並んでいる魔道具のところに戻っていった。
そして、何かしらノートにメモを猛烈に書き込んでいる。
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