第66話「バースクチーズケーキ製造魔道具《焦げの祝福》の誕生」
第66話
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トシード:「はっ、はい、そーですねー・・・。材料、分量、混ぜ加減、焼き加減など条件はすべてそろっているので・・・」
といいながら、みんなの顔を見回す。
イネザベスが
「どういうことかしら?」
といいながら微笑み返してくる。
(むむむ、何が言いたいのか、わかっているくせに・・・他の3人もなにやら良くないことを考えていそうだ・・・)
カコレット:「ティータイムが、バースクチーズケーキなしでは成立しませんの!」
ムネルダ:「お願い!毎日食べたいの!」
センナ:「そうね。そうよね。王家の名にかけて、量産を希望しますわ!ふふふ」
(ええーーー、無茶ぶりだな)
私は目が点になり、無言で放心状態となってしまった。
センナが
「トシードさん。ごめんなさい。私も少し揶揄い過ぎたようです。手伝いますわよ」
といいながら優しく見つめてくれる。
私ははっと気を取り直し
「い、いえ、大丈夫です。お任せください。良いアイデアを思いつきました」
センナ:「ほんとうですか?」
私はすっと立ち上がりテーブルに両手をつき
「ええ。バースクチーズケーキ製造の専用魔道具を開発します」
と宣言した。
イネザベス:「なるほど。素晴らしい」
カコレット:「おおおおおおーーー」
ムネルダ:「キャーーー、ステキ」
センナ:「さすが、トシードさんですね。やっぱり好きになってよかったわ」
4人の声が混じる。
トシード:「え、え、え・・・。センナさん、最後が聞き取れなかったのですが」
センナ:「いえ。なんでもないわ。お気になさらずです」
他の3人からの視線がなんとなく呆れた感じで冷たい。
どうやら、聞き逃しては話いけないことを、聞き逃してしまったようだ・・・。
トシード:「で、でも・・・。もう一度、お願いします」
センナ:「また、機会があったらですわね。ふふふ」
・・・・・・・・・・
バースクチーズケーキ製造魔道具
その名も《焦げの祝福》。
この魔道具は4つの部分にわかれており、それぞれ
・材料投入部
・材料計量部
・材料混ぜ合わせ部
・窯部
である。
材料を入れ、調理ボタンを押せば、自動でバースクチーズケーキを焼き上げてくれる。
焼きあがったバースクチーズケーキは冷蔵庫で冷やして完成である。
窯部には最もこだわっており、私の研究の成果を惜しみなくつぎ込んでいる。
赤魔石で温度を1℃、1秒単位で制御し、焦げ目の艶と中のとろけを完璧に再現できる。
1時間に1つのバースクチーズケーキを作ることができる。
5人にとっては十分すぎる生産能力である。
完成したケーキの表面は、まるで漆黒の宝石。
断面からは香りが立ち上り、空気が震えるほどの濃厚さ。
カコレットとムネルダは楽しくてしょうがないようで、どんどん作る。
研究室に出入りする学園性たちも嬉しそうに食べてくれるが、明らかに供給が需要を超えている。
食べる方が間に合わない。
冷蔵庫がどんどん埋まっていく。
それをさすがに見かねたイネザベスが
「カコレット!ムネルダさん!そこまでよ!いったん停止」
カコレット:「えええーーー、嫌です、嫌」
ムネルダ:「私ももっと作りたいですーーー」
3人が制御盤の前でワチャワチャともめている。
そのワチャワチャがどんどん激しくなっていく。
センナ:「トシードさん!」
トシード:「は、はい!」
センナ:「見てください。大変です!」
トシード:「えっ、えっ・・・えええーーー」
私の大声で3人も静かになる。
ドロ、ドロ、ドロ。
窯部から黄色く輝くドロドロとした液体が溢れ出してきた。
どうやらバースクチーズケーキが液状化しているようだ。
私は急いでその液体を大きな鍋で受け止める。
カコレット:「えー、やだ、どうしよう、どうなったの、だれがやったの」
ムネルダ:「私じゃないよーーー」
イネザベス:「お前たちだろ!!!」
カコレット:「違う、認めない、黙秘します」
ムネルダはオロオロしはじめた。
イネザベス:「トシード!何とかしろ!」
私が停止ボタンが押すと、液体は止まった。
私は
「少し見せてください」
といいながら、3人に割って入り、制御盤を確認する。
「どうやら設定が変わってしまったようですね」
ムネルダ:「ほっ・・・、魔道具が壊れたわけじゃないのね。よかった・・・」
カコレット:「トシード。こういうことが起こらないようにロック機能がいるわね」
(むむむ、カコレットが言う機能は確かにあったほうがよいとは思うが、そもそも想定外の原因はあなたですから!!!)
と声に出して言いたいところだが、それよりもイネザベスの行動が気になる。
イネザベスがグラスに液状化バースクチーズケーキを入れている。
そして、飲み始めた。
カコレット:「えええーーー」
ムネルダ:「飲むんですかーーー」
センナ:「美味しいそうですね」
トシード:「の、のんだ・・・」
イネザベス:「うん、素晴らしく美味しい」
そういって頷いている。
カコレット:「ほんと!私も飲む!」
ムネルダ:「私もです!」
センナ:「では、私も」
トシード:「そ、そうなの。じゃあ、飲んでみようかな・・・」
カコレット:「これは・・・飲むバースクチーズケーキ・・・!」
ムネルダ:「お、おいしいーーー」
センナ:「本当に美味しいですわ、ふふふ」
トシード:「た、たしかに、おいしい」
新感覚の感動の新商品が生まれた瞬間であった。
その後、センナの提案でこの魔道具は王立学園のカフェテリアに寄付することになった。
すると、翌日からカフェテリアには長蛇の列。
・食べるバースクチーズケーキ
・飲むバースクチーズケーキ
は、王立学園の名物になった。
「バースクチーズケーキを食べてこそ、学園生」
という言葉が生まれるほどだ。
私たちは、カフェテリアの隅でバースクチーズケーキと紅茶を楽しみながら、静かに微笑む。
王立学園での生活は今日も平和に流れている。
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