第63話「至高のバースクチーズケーキ」
第63話
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バースクチーズケーキは、しっとりと落ち着いた表情を見せている。
表面の焦げは艶やかで、断面からは濃厚なチーズの香りがふわりと立ち上る。
私はケーキを切り分け、お皿に移す。
その手元を、イネザベスとカコレットがスプーンを握りしめながら見つめている。
カコレット:「・・・ごくり・・・これが・・・冷やした後の本気のケーキなのね!」
イネザベス:「ふふふ、いただきます」
二人はスプーンで一口すくい、そっと口に運ぶ。
その瞬間、研究室の空気が変わった。
表面は真っ黒に焦げており、表面はカリッ、中はとろっとレア、チーズ感が強く濃厚、香ばしさがある。
カコレットはスプーンを握りしめ、目を輝かせて叫んだ。
「な、なんですかこの味!チーズが踊ってる!口の中でタンゴしてる!」
イネザベスは一口食べて、目を閉じたまま静かにうなずいた。
「・・・これは・・・人生で初めて“焦げ”に感謝した瞬間ですわ・・・」
二人の感動は止まらず、スプーンがまるで指揮棒のように空を舞う。
カコレット:「もう一口!いや、もう一人分!おかわり!」
イネザベス:「このケーキ、毎日食べたいわ!」
そんな熱狂の中、トシードは静かにアサームミルク紅茶を注ぎながら、眉間にしわを寄せていた。
(・・・おかしいな・・・記憶ではもっとこう・・・なんというか・・・チーズが暴れていたはず・・・)
私はそっと断面を見つめる。
(記憶では、もっと“とろける革命”だった気がするのだが・・・)
カコレット:「どうしたの?いらないなら、もらうわよ!」
イネザベスは笑いながらティーカップを傾ける。
私は肩をすくめて微笑み、つぶやいた。
「いや、もっと美味しくできるはずだ」
・・・・・・・・・・
私は、その日の違和感を忘れられなかった。
(もっと濃厚に・・・いや、もっととろけるように・・・)
私は次の日から、白衣を脱ぎ、エプロンを締め、研究者から職人へと変貌した。
卵の数を変え、クリームチーズの銘柄を変え、焼き時間を秒単位で調整する。
石窯の前で腕を組み、焼け具合をもらすことなく観察する。
一方、イネザベスとカコレットは、毎日届けられるケーキに歓喜し、目がキラキラしている。
カコレット:「今日のは、昨日より“とろけ”が深いですわん!」
イネザベス:「昨日のは“焦げ”が語りかけてきたけど、今日は“香り”が歌ってる!」
しかし、15日目を過ぎた頃から、二人の様子に変化が現れ始めた。
カコレット:「・・・・・あれ?服のボタンが・・・・・反抗期?」
イネザベス:「スカートが“地殻変動”を起こしてますわ・・・・・」
それでも、トシードの探究は止まらない。
「あと1%、あと1℃、あと1分・・・!」
そして30日目。
研究室に並べられた最後のケーキは、まるで漆黒の宝石のようだった。
断面はとろりと輝き、香りは空気を震わせるほど濃厚。
三人は無言でスプーンを運び、それを口に含んだ瞬間——
「・・・これだ」
「・・・これですわね」
「・・・これしかない!」
至高のバースクチーズケーキが、ついに完成した。
イネザベスとカコレットは、満ち足りた笑顔で鏡の中の自分たちを見る。
「ちょっと丸くなったけど、幸せの証ですわね」
「“美味しさ”って、体にも染み込むんですね・・・!」
私は満足げに頷きながら、次の挑戦を呟いた。
「次は・・・“カロリーゼロの奇跡”を目指しますか」
こうして、30日間に渡った研究室のティータイムは、甘さと笑いと少しの膨らみを残して幕を閉じた。
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