第62話「お試しのバースクチーズケーキ」
第62話
ご愛読いただきありがとうございます。
『ぐーたら第三王子は、魔法の廃れた世界で、龍魔王の力をこっそり使い、世界を救う』が第14話で一区切りしたので、こちらに戻ってきました。
今後は、「トシードの物語」と「マサヴェイの物語」が交差していくところを上手に書けるといいなと思っています。
イネザベス先生の研究室。
トシード:「クリームチーズを・・・500・・・グラム・・・。よっし!ピッタリ!」
私は天秤とにらめっこしながら、材料の分量を正確に測っていく。
イネザベスとカコレットがスプーンを手に、じぃぃぃーーーとこちらを見ている。
(はやい!はやいから!まだ、混ぜてもいないんだから)
私は2人を無視し、泡だて器でクリームチーズを混ぜ始める。
そして、砂糖を加えて混ぜたところで、2人からのプレッシャーに負けて、ほんの少しだけ味見してもらう。
カコレット:「うんまーーーい!!!」
イネザベス:「ええ、美味しいですわ」
(い、いや・・・美味しいだろうけど・・・)
と心の中で思いながら、2人に向けて微笑む。
卵、少しの薄力粉、生クリームを加えていき、丸型に流し込む。
トシード:「これでよしっと。では、焼きますね」
カコレット:「何分焼くの?」
トシード:「50分ぐらいですかね。でも、冷めてからですよ、食べるのは」
カコレット:「えええーーー。そんなの聞いてないよ!」
トシード:(いやー、いま聞かれたし)
イネザベス:「カコレット!ちょっといいかしら」
そう言うと、イネザベスがカコレットの耳元で何かしら内緒話をしている。
私は気を取り直し、丸型を予熱しておいた石窯に入れる。
そして、3人で石窯の中を覗き込みながら待つ。
ケーキ生地が少しずつ膨らんでいく。
膨らんでいくのを見ていると、期待感も膨らんでいく。
イネザベスとカコレットがキャッキャしてきている。
そして、表面が焦げ、茶色にかわっていく。
まあるく膨らんだ滑らかな表面が濃い茶色で覆われ、甘酸っぱく甘く美味しそうな香りが研究室に充満している。
トシード:「そろそろよさそうですね~」
カコレット:「わーい、やったーーー。ウキウキ」
イネザベス:「ふふふ、楽しみですねー。ワクワク」
私はケーキを石窯から取り出し、テーブルの上に置く。
まあるく膨らんだ滑らかな表面は、見る見るうちにしぼんでいく。
カコレット:「なになに。これ。どういうこと。これでいいの?!」
トシード:「これでいいと思います」
イネザベス:「初めて見ますけど。本当に美味しそうですねー。ワクワク」
カコレット:「うん。美味しそうー。ウキウキ」
カコレットが、手に持ったスプーンでテーブルをトントンと鳴らしている。
トシード:「・・・・・」
イネザベスとカコレットが、じぃぃぃーーーとこちらを見てくる。
トシード:「うむむむむ。しょうがないですね~。端っこを少しだけですよ」
カコレット:「やったーーー」
イネザベス:「ふふふ、やりましたねー」
2人はそう言うとさっそく、ケーキの端っこをスプーンですくい、口へを運ぶ。
私もケーキの端っこをスプーンですくい、口へと運んだ。
(やっぱり、焼きたての味は気になるよね。見るからに美味しそうだもんね)
カコレット:「・・・うーん・・・ふわっとしていて、美味しいは美味しいけど・・・」
イネザベス:「そうね~。美味しいけど・・・」
トシード:「そうですね・・・、香りからイメージしていたような感じではないですね・・・」
見た目と香りが本当に美味しそうなだけに、味はその期待値を超えていない。
私の260年前の記憶では、味はもっと美味しく、感動的なはずだけど・・・。
トシード:「とりあえず。冷ましてから、もう一度、食べてみましょう」
カコレット:「そ、そうね。大丈夫よ、トシード。十分に美味しいわよ!」
イネザベス:「そ、そうしましょう。でも、いまでも美味しいですよ」
2人ともすごく気を使ってくれているのが、だだ洩れている。
そんなやりとりをしている内に粗熱が取れたようなので、冷蔵庫に入れる。
・・・・・・・・・・
3時間ほど経過し、充分に冷えたことを確認し、
「それでは、おやつにしましょうか」
カコレットの耳がピーーーンと立ったような気がした。
ササッとカコレットとイネザベスはテーブルに着き、スプーンを握りしめている。
私はケーキをテーブルに出し、アサームミルク紅茶の準備をする。
トシード:「ちょっとだけ待ってくださいね~」
イネザベス:「いよいよですね。楽しみですわ」
カコレット:「ウキウキです~」
トシード:「では、ケーキを切りますね。ちなみに、このケーキはバースクチーズケーキといいます」
イネザベス:「食べたことないですわ。どこで知ったのですか?」
トシード:「へっ。そっ、それは・・・、アスーカ教立図書館!そうそう、アスーカ教立図書館で古い菓子レシピの本を見たんです!そうなんです!」
イネザベス:「そうですか。そんな本があったんで・・・、わぁぁー、凄く美味しそうー」
私は、これ以上、突っ込まれると困ると思い、バースクチーズケーキを半分に切り、断面を二人に見せた。
カコレット:「すごい!すごい!美味しそう~」
トシード:「では、取り分けますね」
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