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第61話「ビーフストロガノフ」

第61話

ご愛読いただきありがとうございます。

すでに、ブックマーク/星評価をつけてくださった皆様ありがとうございます!


『ぐーたら第三王子は、魔法の廃れた世界で、龍魔王の力をこっそり使い、世界を救う』を並行して執筆中です。

ムツート連合国の盟主シロンドルフ王家の第3王子マサヴェイ・シロンドルフの物語です。

そちらもあわせてよろしくお願いいたします。

エチゼルト領の本邸。

父カフレッドと長兄イサルトが“冥界の大森林”から戻ってくるという連絡があった。

母ウティルダからは朝からルンルンしている雰囲気があふれ出ている。


Aランク魔獣ケルベロスを倒した場所の近くで魔法陣で封印された巨大で重厚で黒く鈍い光を帯びた門が発見されたこと。

そして、この門の特徴が古文書にある“魔界門”と酷似すること。

実際に、この1か月間、Dランク魔物しか現れていないこと。


これらのことを鑑みて、警戒レベルを下げる判断をしたようだ。


エチゼルト騎士団は、半数が帰任、半数が特別警戒任務で3か月毎の交代制。

エドザー王国第1騎士団、第2騎士団は帰任。

代りに、エドザー王国第3騎士団が魔界門の調査団の護衛も兼ねて特別警戒任務にあたる。


家へ帰れることを騎士たちは喜んでいることだろう。

結果的に、ほぼほぼ1年間の任務だったが、当初はどれぐらいの期間になるかは見通しが立っていなかった。

そんな状態で帰りを待つ家族にとっては途方もなく長く感じていたことだろう。


ボルゼブの「そうか。復活したのは我々だけではないということか」という言葉から安心はできないと思いつつも、とりあえずは、騎士団が帰任できてよかった。


・・・・・・・・・・


食堂の扉が開かれ、父カフレッドと長兄イサルトが姿を現す。

その後ろには執事のセバスが続く。


父 カフレッド

母 ウティルダ

長兄 イサルト

次兄 ソウミリアン

私 トシード

妹 ミレノア


夕食に全員がそろって母は嬉しそうだ。


食卓にはビーフストロガノフの湯気が立ちのぼる。

父がナイフを入れると、柔らかな牛肉がほろりと崩れ、濃厚なソースがとろりと絡む。


母ウティルダ:「ビーフストロガノフのお味はどうかしら?」


長兄イサルトは無言で一口運び、目を細めてうなずく。

次兄ソウミリアンはパンでソースをぬぐいながら、「おいしい」とつぶやく。

私は、口に広がる酸味とコクのバランスに思わず笑みがこぼれたる。

妹ミレノアは「おかわり!」と元気に声を上げ、皆の笑いを誘う。


父カフレッド:「ウティルダの腕は料理長以上だな。とても美味しいぞ。これは芸術だ」

母ウティルダ:「ふふふ、ありがと、あなた。でも、それは料理長に失礼よ、ふふふ」


母の味を十分に楽しみ、デザートの時間になる。


ウティルダ:「イサルト、それで今後はどうするの?」


来月から

長兄 イサルトは王立学園を卒業

次兄 ソウミリアンは王立学園の4年生

私 トシードは王立学園の3年生

妹 ミレノアは王立学園に入学

であり、

母ウティルダと妹ミレノアも王都の別邸で暮らすことになる。


長兄イサルト:「はい、エドザー王国騎士団を目指したいと考えています」


王国には4つの騎士団がある。

近衛騎士団 団長イサード 実践向けの剣術を振るい強い心で諦めを知らない剛力の剣士

第1騎士団 団長ソリアム 天才肌で圧倒的センスで剣を閃かせる疾風の剣士

第2騎士団 団長シンリー 正統派の剣技を振るう技巧の剣士

第3騎士団 団長ハジメルド 豪快な一撃を繰り出す突撃の剣士


まずは、入団試験があり合格すると、その後3か月の共通訓練の後に配属となる。

長兄イサルトはソリアムのファンだから、第1騎士団に入団したいのだろう。


母ウティルダ:「そうなのね。では、来月からはみんなで王都で暮らせるのね。嬉しいわ、ふふふ」


長兄イサルト:「入団試験がありますから、まだ確定はしていませんが・・・」

母ウティルダ:「あなたならきっと大丈夫よ。頑張ってね、ふふふ」

長兄イサルト:「は、はい!頑張ります!」


会話が落ち着いたことを見計らって、父が視線を私に向ける。


父カフレッド:「トシード。剣10本はどうなった?」

トシード:「は、はい?」

父カフレッド:「セバスから受け取った剣だ。魔法剣の研究は進んでいるのか?」


それのことか・・・、研究に使ったと思っているのか・・・


トシード「そのことなのですが・・・」

父カフレッド:「どうした?」

トシード「すべて壊れました」

父カフレッド:「!!!なかなかに素晴らしい剣だった思うが・・・いったい何をしたのだ」

トシード「強い魔力を通したのですが、粉々に崩壊しました。耐久力が足りないようです。準業物ではダメですね」

父カフレッド:「むむむむむ。業物が必要ということか?業物で足りるのか?」

トシード「わかりませんが、シンリ―団長の剣相当であれば大丈夫だと思います」

父カフレッド:「つまりは、業物の剣ということか」


業物の剣は家宝である。

それぐらいに希少価値のあるのが業物の剣なのだ。

エチゼルト家には3本の業物の剣がある。

1本は父が使っている。

1本はきっと騎士団に入団が決まった時に長兄に渡すつもりだろう。


父は渋っている。

残り1本の家宝の業物の剣を破壊するかもしれない私に渡していいものか。

しかし、魔法剣を開発しろといったのは父だ。

私はジト目で父をみる。


父カフレッド:「むむむむむ」

母ウティルダ:「あなたっ」

父カフレッド:「ふぅー、そうだな・・・。わかった・・・」


・・・・・・・・・・


宝物庫からセバスが業物の剣を持ってきて、父に渡す。

次兄ソウミリアンが不満そうな顔で見ている。


父カフレッド:「トシード。大切に使え」


私は父から業物の剣を受け取る。


トシード:「はい。でも、崩壊しても許してくださいね」


父は微妙な顔で頷き、母は満足そうな顔で頷く。

最後までお読みいただきありがとうございました。

気に入っていただけた方は、ぜひ、

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よろしくお願いいたしますm(__)m

つけてくれると、嬉しいです。

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