第59話「龍魔王公爵ボルゼブ」
第59話
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“冥界の大森林”。
Aランク魔獣ケルベロスを倒した場所に、白狼のマスクとマントを纏い降り立つ。
ケルベロスは番犬だ。
きっと何かを守っていたはずだ。
私はケルベロスが背を向けていた方向に警戒しなら進む。
しばらく進むと微かな違和感に気づく。
一見、木々が生い茂った森の中のようだが、木々に違和感がある。
その違和感が何なのかじっくりと周りを見渡す。
トシード:「あっ、そういうことか」
白銀メダルの白狼ガオン:「なんだ?なにがだ?」
トシード:「ふふふ、ははは、わからないか?」
白銀メダルの白狼ガオン:「いいから、はやく教えろ!」
トシード:「ほら、よーーーく見て」
そういいながら、白銀メダルの白狼ガオンに右の森と左の森を交互に見せる。
白銀メダルの白狼ガオン:「うーーーん、わからん」
トシード:「もーーー、諦めないで、ほら、よーーーーーーく見て!」
白銀メダルの白狼ガオンは「むむむむむ」といいながら、頑張ってみている。
白銀メダルの白狼ガオン:「あっ、そういうことかーーー」
トシード:「ふふふ、そういうこと」
右の森と左の森はミラー反転となっている。
まったく同じ木々が左右対称で並んでいる。
白銀メダルの白狼ガオン:「それでどっちが偽物だ?」
私はニヤッと笑い、魔法で風を右から左に吹かせる。
白銀メダルの白狼ガオン:「なるほど。右の森が偽物だな」
トシード:「そういうことだな」
葉が風で揺れる方向でどちらが偽物かわかる。
そして、土魔法で岩を生成し、高速で右の森に向かって発射する。
岩が木々に当たるとパリィーーーンという音とともに、結界が割れ、キラキラキラと崩れ落ちていく結界片の向こう側に巨大な洞窟の入り口が見えた。
・・・・・・・・・・
洞窟の周りに魔物はいない。
警戒しながら洞窟に近づき、足を踏み入れる。
ひんやりとした風が流れており、わずかな湿気が肌にまとわりつく。
暗闇の奥からは、強い存在感を感じる。
その瞬間、足元から奥へと、2列の光がともり、光の道が闇の中に浮かび上がる。
どうやらこの2列の光の間を歩んで来いという誘いのようだ。
私は迷うことなく足を速める。
洞窟の奥深くへと足音が響き、空間の静けさがより際立つ。
どれほど奥深くまで進んだことだろう。
もう入り口の外の光は見えない。
前方には、巨大で重厚な門がそびえる。
黒く鈍い光を帯び、それは堂々たる門だ。
両側には巨大な石柱がそびえ立つ。
冷たい風が隙間を抜けて低いうなり声のような音を響かせている。
その巨大な門の前に人影がある。
そして、その人影は門よりも強い存在感を放っている。
私は速度を落とし、ゆっくりと警戒しながらその人影に近づいていく。
巨大な黒い羽を背に広げ、深紅に輝く大きな眼。
指先は異様に長く、黒く鋭い爪が生えている。
周囲には幾千万の蠅が渦を巻き、腐臭が立ち込める。
魔族:「きたか。待ちわびたぞ、ひっひっひっ。白狼ガオンを纏う剣士よ」
白銀メダルの白狼ガオン:「俺はお前が嫌いだ。会いたくはなかったがな」
魔族:「ひどい奴だ。私は待ち望んだ再会だというのに、ひっひっひっ」
白銀メダルの白狼ガオン:「ふっ、また、260年前のようにやられたいのか」
魔族:「ちっ、相変わらず、むかつく奴だ。その新しい剣士には悪いが、恨み晴らさせてもらう」
トシード:「いや、申し訳ないが返り討ちにさせてもらうぞ、龍魔王七公爵がひとり
、ボルゼブ!」
ボルゼブ:「!!!!!」
トシード:「どうした?」
ボルゼブ:「なぜ我が名を知っている!?」
トシード:「なんでだろうな、ふっ」
ボルゼブ:「そうか。復活したのは我々だけではないということか、白銀の剣士ブロン!」
トシード:「我々?」
ボルゼブ:「ひっひっひっ、考えている余裕なんぞないわ!!!」
ボルゼブは漆黒の翼をふるわせ、飛び上がる。
彼の眼が不気味に赤く光った瞬間、無数の黒槍が空間を引き裂きながら降り注ぐ。
私は即座に反応し、地を滑るように後退しながら剣を振るい、迫る黒槍を斬り払う。
だが、すべては囮だった。
足元から突如現れた腐蝕の触手が私を絡め取ろうと這い出し、空間そのものがボルゼブの呪詛に侵蝕されてゆく。
ボルゼブ:「ひっひっひっ、逃がすかーーー」
その声とともに、空間に亀裂が走り、空気が沸き立つ。
私とガオンは怯まない。
風を纏うように跳び、黒の連撃をすり抜けて一気に距離を詰める。
その刹那、空気が一瞬にして裂け、蒼白く輝く剣が蠅の障壁をすり抜けてボルゼブの肩を斬りつける。
しかし、剣はボルゼブの肩に少し食い込んだところで、崩壊する。
次の瞬間、襲い来るボルゼブの蹴りを、腕をクロスして防御するが、私は吹き飛ばされる。
ボルゼブ:「ひっひっひっ、脆い剣だなーーー」
くっ、準業物だと私の魔法には長くは耐えきらないか。
白銀メダルの白狼ガオンが「参ったな~、どうする?」という顔でこちらを見てくる。
パンッパンッとマントの埃を叩きながら、私は立ち上がる。
そして、私は「やれやれだな」といいながら、2本の剣をアイテムボックスから抜き出す。
魔法を纏った2本の剣は蒼白く輝きを放つ。
ボルゼブ:「ひっひっひっ、2本になったところで脆い剣は脆い剣だ、ひっひっひっ」
トシード:「ふふふ、そうだな」
私はボルゼブに向かって低い体勢で突っ込む。
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