第51話「白狼のダンジョン」
第51話
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翌朝、早い朝食を一人でとると、「夜まで部屋に籠る。覗くなよ」と侍女ジーンに強く伝える。
ジーンは「またですか」という顔で頷いている。
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風魔法で空を高速でかっ飛ばす。
空気抵抗に負けないように、身体強化魔法を2重でかけておくのが重要だ。
朝陽の中、風を切り裂きながら、空を駆けると、身体を包む魔力の煌めきが、陽光を反射してキラキラと輝き、私の身体を隠す。
空を飛ぶというのは、いつでも爽快だ。
ともかく気持ちがいい。
両手を羽のように広げ、グルグルと回転する。
最高だ!!
1時間ほど飛ぶと、広大な“冥界の大森林”が見えてきた。
その手前に展開されているのは、旗の紋章からするにエチゼルト騎士団の本陣だ。
父カフレッド、長兄イサルトはそこにいることだろう。
何人かの兵士がこちらのほうを指さしているのが見える。
「キラキラしている何かが飛んでいる~」とかなんとか言っているのだろう。
念のため、私だと気づかれないように高度を上げておく。
“冥界の大森林”の上空に入ると、対象をモンスターに絞った探知魔法を発動する。
確かに、Dランク魔物多数、Cランク魔物多数、Bランク魔物チラホラといることがわかる。
Dランク魔物:Cランク魔物:Bランク魔物=50:45:5
といった割合だ。
これだけCランクとBランクの魔物がいると防衛で精一杯なのもわかる。
そして、この防衛は3か月以上も続いている。
それなのに魔物の数が減る様子がないということは、奥地で魔物を生み出す何かがあると考えるのが妥当であろう。
そういえば、根本原因の撲滅のための精鋭部隊を送り込むと父は言っていたがどうなったのだろうか。
なかなかに命がけのミッションであると思う。
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“冥界の大森林”に入って、さらに1時間ほど飛んだところで、念のため、騎士団がいないことを確認し、激流の川のほとりに着地した。
急勾配を下る水は、岩肌を激しく叩き、白い飛沫を空中に舞い上げている。
その姿は、荒々しくも美しい。
場所によっては巨大な岩が水流を受け止め、深い淵を作っている。
その深みでは、透明な水が青緑色に輝き、岩陰に隠れる魚たちの影がちらつく。
水音は絶えず耳に響き、低く唸るような音と、勢いよく飛び跳ねる音が混ざり合う。
歩みを進めていくと、空気がひんやりと変わる瞬間が訪れた。
目的地である“白狼のダンジョン”の入り口である。
険しい崖、薄暗い岩壁の裂け目、そこから漂う空気は静寂に満ちている。
る。
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“白狼のダンジョン”の入口をくぐると、外界の明るさは消え去り、闇が支配する。
洞内の空気は冷たく、足からは湿った岩の感触が伝わってくる。
光魔法で周囲を照らすと、光が岩壁をなぞり、鍾乳石の繊細な彫刻が視界に現れる。
天井から下がる鍾乳石は、巨大な牙のように迫り、地面に立つ石筍は、守護者のように静かに立ち尽くしている。
どこか遠くから滴る水の音が響き渡り、その音は洞窟の奥深くへと誘う道しるべとなる。
欲しいのは、
・魔法属性エンチャント魔道具のための大サイズの魔石
・起動魔道具のための中サイズの魔石
つまりは、
・Aランクの魔物
・Bランクの魔物
を倒したいのだ。
そして、“白狼のダンジョン”は、魔物の数は少ないが、Bランク以上の魔物しか出ないという超高難易度ダンジョンである。
キヨフレッドだった頃、このダンジョンにある“白狼のマスクとマント”が欲しくて、来たことがある。
まさか、再びこのダンジョンを訪れることになるとは思いもしなかった。
Sランク魔獣“白狼ガオン”はいるのだろうか。
せっかくだから、魔石を集めながら、白狼ガオンがいるかもしれない最下層まで行ってみるつもりだ。
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親方マサムニルにもらったランク3の剣に強化魔法をかける。
なお、魔物から素材を良い状態でとるために、魔法属性は付加しない。
魔法により燃えたり、凍ったり、汚れたりさせないために。
綺麗な素材を入手するためのコツは、一撃でスパッと絶命させることなのだ。
・種類:鋼の剣
・攻撃ランク:3 × 10(攻撃力強化)
・耐久ランク:3 × 10(耐久性強化)
・魔法属性:---
さらに、自分自身には、身体強化魔法をかけ、攻撃・防御・素早さをアップさせる。
この状態ならAランク魔物程度までならなんでもない。
私はBランク/Aランクの魔物を倒し、中サイズ/大サイズの魔石と素材をアイテムボックスに仕舞いながら、ダンジョンの最下層を目指してどんどん進む。
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“白狼のダンジョン” の最下層。
緩やかなスロープを下っていくと、巨大で重厚な扉が現れた。
この先に待ち構えるであろう脅威に対して覚悟をしっかりともっていない者に開くことを躊躇させる威圧感をギンギンに放っている。
高さは天井近くにまで届き、その幅は何人がかりで押しても動きそうにないほどだ。
扉全体は黒鉄で作られたような質感を持ち、不屈の強さと威厳が宿っている。
扉の中心には巨大な円形の紋様が彫り込まれており、その周囲には複雑な幾何学模様が絡み合い、古代の文字が隠されている。
扉の向こうに潜むものが尋常ならざる存在であることを予感させる。
扉の前に立つだけで、その存在感に圧倒され、進むべきか引き返すべきかを迷わせる。
これはただの扉ではない。
生か死か・・・運命の分かれ道である。
私は、もともと引き返す気はないが、大きく深呼吸をし、再度、覚悟を決める。
この先、ギリギリの激しい闘いが待っていることに心が奮い立ち,からだが小刻みにふるえる。
身体強化を5重掛けし、扉に両手をかけ、押し始める。
トシード:「ふぬぬぬぬぬーーーー!!!!!」
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