第41話「特別な赤ワイン」
第41話
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毎晩、食卓には3種類のワインがでる。
泡、白、赤である。
そして、それぞれのワインに合わせた料理が出される。
といっても、アットホームな雰囲気の晩餐である。
ワインも料理も、はじめからすべてテーブルに置かれており、各自が好きなものを好きなだけ取り分けてよい形式だ。
はじめにスパークリングワインで乾杯し、魚介と白ワイン、肉と赤ワインで食事を進めていく。
白ワインは、はじめは低温で飲むが、そのまますべてを飲みほさずおいておくのが楽しみだ。
温度変化で起きる、香りや味わいの変化を楽しみ、どの温度が好きかの話題で盛り上がる。
私は白ワインがとても好きになっていた。
しかし、昨晩はいっきに赤ワインに引き込まれた。
その赤ワインは別格というか不思議であり、衝撃的であった。
メルロの単一品種で造られた赤ワインであり、爽やかなアロマを纏い、凝縮感のある果実味に穏やかな酸味とタンニンで、甘く優しくまろやかな口当たりが特徴なのだが、テロワールの影響なのか唯一無二、つまりは独特なのだ。
香りにも味わいにも、独特のインパクトがあるのだが、複雑さを持っていながら統一感があり、スパイラル状に美味しさを高め、相乗効果でエレガントを極めていく。
ジャエール:「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ。どうじゃ。不思議だろうてのお~」
驚いた顔の私を見ながら、ジャエールが楽しそうに目を細めている。
気づけば、センナもムネルダも私が飲むのを期待とともに見守っていたようだ。
2人はこの赤ワインのことを知っているようで、知らない人がどんな反応をするのかをワクワクして待っていたようだ。
トシード:「い、いや。どうというよりも、・・・びっくりです。表現できないけど、他のワインとは違うというのはわかります。初めての体感です」
2人からは隠しきれないワクワクが全面にでてきてしまっている。
ジャエール:「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ。そうじゃろうて。この赤ワインはここでしか飲めないのじゃ。しっかりと充分に味わってくれなのじゃ」
トシード:「ここでしか?」
ジャエール:「そうなのじゃ。この地域から持ち出すと独特の雰囲気がなくなってしまうのじゃよ。メルロの単一品種で造られた赤ワインとしては最高級に美味しいのだけれどもじゃな。雰囲気がなくなってしまうのじゃ」
このワインはある一区画のメルロ畑で収穫されたメルロを使用し、破砕/圧搾/熟成もこの区画にある小さな専用シャトーで行わなければならないという、コスト度外視での製造が必須なのである。
そして、この区画からワインを持ち出すと、一週間ほどかけて、独特の雰囲気が落ちていくそうだ。
トシード:「それは、どういう理屈なのですか?」
ジャエール:「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ。興味があるのじゃな」
トシード:「はい。とっても」
ジャエール:「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ。しかし、儂もわからんのじゃ。」
トシード:「えっっっ。」
ジャエール:「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ。神のみぞ知るというやつじゃな。ただ」
トシード:「ただ?」
ジャエール:「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ。前のめりじゃな。ただ、その区画には洞窟があるのじゃ」
トシード:「洞窟ですか」
ジャエール:「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ。明日、行ってみるかのお」
トシード:「ぜひ!」
センナとムネルダも頷いている。
・・・・・・・・・・
ということで、いつもよりも早い朝食の後、馬車に揺られて、そのメルロ畑を目指している。
整然と並ぶブドウの木々が広がり、それぞれの木が緑の葉と果実を重たげに揺らしている。遠くに見える丘には霧がかかり神秘的である。
あの丘の向こうに目的のメルロ畑があるそうだ。
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