第37話「持っててよかった」
第37話
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耳と尻尾があることから獣人とわかる。
ひとりは獅子族の男性、なかなか立派な鎧を身に着けている。
あとは、猪族の男性と兎族の女性。
3人とも息も絶え絶え、いまにも力尽きそうな弱い目ではあるが、警戒心は感じる。
トシード:「心配するな。敵意はない」
獅子族の男性:「・・・・・」
どうやら、声も出せないほどに弱っているようだ。
3人とも肉体が大きく切り裂かれ、出血がひどい。
この状態で生きていられるのだから、獣人の肉体の強さを実感する。
トシード:「大丈夫だ。これはエクスポーション。私を信じて飲むんだ。このままだと死んでしまうぞ」
持っててよかった~、エクスポーション。
私は回復魔法を見せるのはヤバイと思い、エクスポーションを1本づつ飲ませる。
一瞬で傷が完治し、3人はゆっくりと上半身を起こす。
しかし、血液を失い過ぎているため、眩暈がしているのだろう。
それ以上は、動くことはできないようだ。
しばらく安静だな。
3人からじっくりと眺められる。
ちょっと恥ずかしい。
獅子族の男性:「助けていただいて感謝する」
3人が頭を下げる。
トシード:「いや、そんなにお気になさらず。それよりも何があったの?」
猪族の男性と兎族の女性が「どうします?」的な目で、獅子族の男性を見つめる。
獅子族の男性:「詳しくは申し上げられないのだが・・・、ブラック・ドラゴンと闘い、傷を受けてしまい、何とかここまで逃げてきたのだ」
トシード:「そうか。特に問い詰める気はないので、大丈夫だよ。私はトシード」
獅子族の男性:「それはかたじけない。我はシンエ。そして、チョエイとカンキだ」
獅子族の男性がシンエ
猪族の男性がチョエイ
兎族の女性がカンキ
見るからにシンエが王子で、チョエイとカンキが護衛のように思われるが、まあ、言いたくなさそうなので、言及しない方が無難だろう。
トシード:「あのー、グリーン・ドラゴンを探しているのだが。鱗が欲しくて。どこにいるか知ってます?」
シンエ:「グリーン・ドラゴンなら風吹く谷にいるはずだ。あっちの方角だ」
トシード:「おおー、ありがと。さっそく・・・」
この3人を残して行くわけにもいかないか。
せっかく助けた命なのに、ここでドラゴンに襲われるとまだ闘えないだろうし。
トシード:「そうだ、ここで昼食を食べようと思っているんだけど、一緒にどうかな?」
シンエ:「・・・なんだか、気を使わせてしまったようで、すまない。この借りはかならず返す」
そういうとシンエが頭を下げ、それに続いてチョエイとカンキも頭を下げる。
トシード:「まあ、ここで出会ったのも何かの縁ですよ」
そういい笑顔で応えた。
私は、アイテムボックスのバッグから、これまで倒した魔物の肉/薪/フライパンを取り出し、魔道具で薪に火を着け、肉を焼き始める。
3人は少しは動けるようになったようで、チョエイとカンキが肉を焼くのを代わってくれた。
さすが獣人、体力あるな~と感心してしまう。
私はワインを取り出し、3人にボトルを1本ずつ渡すと、顔から嬉しさがあふれ出ている。
持っててよかった~、ワイン。
私はまだ子供なので、ワインを水で薄めて飲む。
気持ちは大人なのでそのまま飲みたいが、一応、身体には気を使っている。
身体がまだ小さいので、薄めないと酔いがまわってしまい、この後のグリーン・ドラゴンとの闘いに行けなくなってしまうのはよろしくないからね。
と、自分に言い聞かす。
美味しい肉をたらふく食べ、ワインを酌み交わせば、おのずと仲は良くなっていく。
最終的には、一人でグリーン・ドラゴンと闘うのは大丈夫なのかと、心配される始末だ。
そこは、実力的に大丈夫なのだが、一般的に人間族の子供が一人で闘えるのも、変といえば変だろうし、回答に困っていると、
シンエ:「どうした?やはり困っているのか?」
トシード:「まっ、まあ~、落ちている鱗を探そうかなと思ってる・・・」
シンエ:「ハッハッハッ、確かに、グリーン・ドラゴンの巣である風吹く谷に行けば、落ちているとは思うが。危険だな」
トシード:「うーん、どうしようかな~」
カンキが何やらシンエに耳打ちしている。
シンエ:「トシード。我が家にグリーン・ドラゴンの鱗があるから、それをプレゼントしたいが、どうかな?」
トシード:「えっ、いいの?欲しい」
シンエ:「ふはっはっはっはー、素直で気持ちがいいぞ。わかった。では、チョエイ。体力もある程度回復しただろう。とってきてくれないか」
チョエイ:「はっ。承知いたしました」
チョエイはそう言い、立ち上がり頭を下げると、猛スピードで消え去った。
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