第35話「魔族の少女」
第35話
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木々が途切れたその瞬間、視界に飛び込んできたのは、草花が生い茂る美しい場所。
震えながら地面に座り込む少女。
その目線の先には、ゆっくりと迫りくる巨大なシルバー・レッドアイ・リザード。
ギラリと光る瞳は鋭く、口元から漏れる炎が、今にも放たれる予感を漂わせている。
猶予はない。
私は鉄のショートソードを手に取り、攻撃力強化と耐久性強化の魔法をかけ、さらに冷気を伴う水魔法を刀身に宿らせた。
冷たい輝きを放つ剣を握りしめ、私は少女とリザードの間に滑り込むように割って入った。
その瞬間、シルバー・レッドアイ・リザードの目がギョロリと私を捉えた。
さすがはBランクの魔物、圧倒的な威圧感を放っている。
その直後、怒りのファイヤーブレスが轟音と共に放たれた。
ゴオオオォォォーーーーーーーーーー
時間が止まったかのような感覚の中、私は全身の力を込めてショートソードを振り下ろした。
その冷気に包まれた刃は、燃え盛る炎すら引き裂き、シルバー・レッドアイ・リザードを一刀両断した。
断末魔の声が空に響き渡り、魔物の巨体が地面に崩れ落ちる。
まあ、私としては余裕だが、鉄のショートソードには酷だったようだ。
粉々に砕け散った。
振り返ると、少女は目をギュッと閉じ、肩をかすかに震わせている。
私は膝をつき、彼女の前にしゃがみ込んだ。
優しい声を意識しながら、目線を合わせて語りかける。
トシード:「もう大丈夫だよ」
少女の小さな体がビクリと跳ねた。
そして、恐る恐る顔を上げてくる。
その仕草はまるで、恐怖と好奇心の間で揺れているようだった。
ふと視線が彼女の前髪の隙間に引き寄せられる。
そこには・・・小さな、・・・けれど確かに存在感のある一本の角が、彼女の額からひょっこりと顔を出していた。
私はあえて何も言わず、微笑みを浮かべることで安心感を伝えようとした。
少女はしばらくの間、私の顔をじっと見つめていた。
その瞳には緊張と戸惑いが入り混じり、微かな希望の色も垣間見える。
しかし、突然彼女の表情がハッと変わった。
何かを察したのだろうか。
一瞬の沈黙の後、彼女は立ち上がり、振り返ることなく森の中へと猛ダッシュで駆けていった。
気を取り直して、まわりを見渡すと、薬草がたくさん入った籠が落ちている。
その丁寧に収集された様子は、一生懸命に大切に集めたものだと物語っている。
きっと少女の忘れ物だろう。
私はそっと籠を拾い上げ、水魔法で作り出した水球をその中に注ぎ込む。
そして、薬草の茎を水に浸してやる。
この小さな処置で、薬草は一日ほどの間、萎れることなくその鮮度を保てるだろう。
魔物との遭遇の危険を冒してまで、少女が一人で薬草を採りにくるなんて、よっぽどの訳があるのだろう。
少女は魔族とはいえ、妹のミレノアと同じ年ぐらいに見えた。
この森の奥地で独り歩きするのは危険すぎる。
それほどの危険を冒してまでも薬草を必要としていた理由とは何なのだろうか。
しばらく少女を待ったが、現れる気配はない。
もしかしたら、人間族を怖がっているのかもしれない。
私がここに居ると、薬草を採りに戻ってくることもできない可能性がある。
私は、イネザベスとカコレットからオーダーを受けた材料の収集のために、いったん、この場を離れることにした。
・・・・・・・・・・
帰りにこの場所に立ち寄ったが、薬草の籠はなくなっていた。
きっと少女が持って行ったのだろう。
よかった、よかった。
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