第34話「悲鳴が聞こえる」
第34話
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最近、“冥界の大森林”の魔物が活発化しているらしい。
数も増えているし、Cランクの魔物がエチゼルト領の近くに現われることもわりとあるそうだ。
このため、エチゼルト騎士団は定期的に見回りと、魔物駆除を行っている。
領民の安全を守るのは大切な仕事だ。
昨晩の夕食時に、私も騎士団と一緒に見回りに行く気はないかと問われたが、速攻で断った。
ただ、父も兄達も予想はしていたようで、特に無理強いはしてこなかった。
朝食の後、父と兄達は騎士団を引き連れて“冥界の大森林”の見回りへと出かけていった。
それを見届けると私は自室に戻り、革製の肩掛けバッグからDランク冒険者風の皮の服と鉄のショートソードを取り出し、ササッと着替えた。
このバッグは、イネザベスからもらったアイテムボックスである。
魔道具を持ち運ぶのは大変だろうということで、セーリ大草原遠征のあとにプレゼントされた。
さっそく使っている。
実に便利だ。
現状、アイテムボックスは作ることができず、ダンジョンの宝箱から見つけるしか入手方法はない。
このため、希少価値であり、とても高価な代物である。
ただ、交換条件があって、エチゼルト領に戻ったら、“冥界の大森林”で魔物を倒し、魔道具研究のための材料を集めてくることである。
イネザベスとカコレットのヒィッヒィッヒィッという片方の口角が上がった悪い顔を思い出し、ズゥーーーンとした気持ちが蘇ってきた。。。
しかし、私はアイテムボックスが欲しくて、シブシブ頷いたのである。
さて、準備は整ったので、闇魔法で姿を隠すと、本邸を抜け出し、“冥界の大森林”へと向かうことにする。
・・・・・・・・・・
“冥界の大森林”。
魔王が統治する魔族の領域である。
キヨフレッドの時に、魔族とは何度か闘ったことがあるが、見た目は人間族と変わらないが、角が生えているのが特徴だ。
人間族よりも強靭な肉体を持っているし、強力な魔法は使えるし、長生きだし、厄介な存在であった。
ただ、個体数は人間族に比べると多くない。
260年前の大陸全土を巻き込んだ大戦で、魔族もだいぶ人口を減らし、大人しくなっていたようだが、最近、魔物が活性化しているということから、魔王や魔族が力を取り戻しつつあるのかもしれない。
さて、イネザベスから渡された材料リストには、Bランク以上の魔物から採れる物ばかりが書かれている。
私だからいいけど、なかなか無茶な要望リストだ。
あの2人は魔物の強さのことをあんまりわかっていないと思う。
材料が歩いているようにしか見えていないのだろう。
さすが、世間離れした研究者である。
まあ、Bランク以上ならだいぶ森林の奥の方なので、エチゼルト領と冥界の大森林の境界を見回っている騎士団と遭遇することはないので、そこは安心である。
私は、Cランク以下の魔物は無視して、どんどんと森の奥へと入っていった。
・・・・・・・・・・
「キャァァーーーーー」
悲鳴だ。
反射的に身体強化魔法を自分にかける。
そして、3倍の速度で悲鳴のする方へ、木々の間をとにかく急ぐ。
木々の間を駆け抜けるたびに、枝葉が腕や顔に触れ、鋭く痛む。
足元は不規則に盛り上がる根や苔むした石。
だが、立ち止まる暇はない。
悲鳴が再び耳をつんざき、焦りが体をさらに前へと突き動かす。
私は魔法で強化された身体を限界まで駆使して走る。
空気を切り裂く音と、心臓の鼓動が耳に響く。
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