第33話「家族水入らずの夕食」
第33話
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エチゼルト領への帰省のため、馬車に揺られている。
エドザー王領から広大なセーリ大草原を北へ縦断すれば、2泊3日の旅の末、エチゼルト領にたどり着く。
1年ぶりのエチゼルト領の本邸である。
玄関に、執事のセバスと侍女のジーンの姿が見える。
セバス:「トシード様、お帰りなさいませ」
トシード:「ああ」
私は、そっけない態度を示し、そのまま部屋へと急ぐ。
何名かの侍女とすれ違ったが、誰しも目をそらし、固まっている。
部屋へ入り、ようやく一息をついた。
休みの日は、家にいる時間がどうしても長くなる。
ふー、これから1週間、グレているトシードを演じることを考えるだけで疲れてくる。
父と兄達は一足先に帰省しているため、家族全員が揃った状態である。
夕食だけは、家族水入らずである。
まじで、気が重い。
父 カフレッド
母 ウティルダ
長兄 イサルト
次兄 ソウミリアン
妹 ミレノア
そして
私 トシード
夕食に全員がそろって母は嬉しそうだ。
ウティルダ:「今日のローストビーフは私が作ったのよ。お味はどうかしら?」
カフレッド:「そうなのか、それは貴重なローストビーフだな。とても美味しいぞ」
ウティルダ:「ふふふ、ありがと、あなた。騎士団が“冥界の大森林”でブラウン・ダブルホーン・ブルを獲ってきてくれたのよ」
イサルト:「母上。私とソウミリアンも騎士団に同行し、魔物駆除を行ってきました!」
ソウミリアン:「ブラウン・ダブルホーン・ブルではないですが、同じCランクの魔物を倒しました!」
ウティルダ:「それは、大活躍でしたね~、ふふふ」
兄達は、嬉しそうに照れている。
そして、父はよくやったぞという雰囲気で頷いている。
ミレノア:「トシード兄様は?」
うっ、余計なことを・・・
私は空気のような存在として静かに目立たないようにしていたのに、見つけないでほしい・・・
ウティルダ:「トシードは先ほど帰ってきたばかりですからね。そうそう、聞きましたよ。魔道具作りの天才と呼ばれているのですね」
ミレノア:「トシード兄様は天才なの?」
ウティルダ:「そうよ。お父様から教えてもらいましたから間違いないわよ」
カフレッドが気まずそうな顔で咳き込んでいる。
イサルト:「所詮は魔道具です」
ソウミリアン:「重要なのは高い剣のスキルです。そうですよね、父上!」
カフレッド:「・・・そ、そうだな、ゴホゴホ」
母は父をみて、やれやれというような顔をしている。
ウティルダ:「いいですか、人にはそれぞれに特性があります。ある一つの軸だけで判断してはいけません。わかりましたか?」
母は、全員をゆっくりと見まわす。
母の威圧感に場が圧倒され、全員がビビっている。
ウティルダ:「ふふふ、わかったならいいのです」
母が笑顔になったことで、場の緊張感が解放された。
やはり母は怖いと改めて思った。
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