第30話「Bランク魔物シルバー・ホーン・ライノセラス」
第30話
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小さい丘、浅い湖、点在するゴツゴツした岩のある目的地に到着した。
ここにはBランクの魔物シルバー・ファング・ウルフ、シルバー・ホーン・ライノセラスがいる。
いくら魔道具に自信があるからって、Bランクって強すぎないか。。。
だから、ソリアムは心配でついてくるのだと改めて思った。
イネザベスとカコレットは、それぞれ筒状の武器を構えながら、シルバー・ホーン・ライノセラスにゆっくりと近づいていく。
私は魔石銃を、ソリアムはロングソードを構えながら数歩後をついていく。
イネザベスがスッと静かに右手を挙げた。
我々は歩みを止め静かに見守る。
イネザベス:「いっけーーー」
ドガががーーーん
火球が5発、シルバー・ホーン・ライノセラスに向かって飛んでいく。
イネザベスは、どうだ!といった表情で、火球が標的にあたる様子を見守っている。
しかし、シルバー・ホーン・ライノセラスも止まっているわけではない。
1発目が背中に命中すると、大きな咆哮をあげ、こちらを振り返る。
その直後、2発目を頭部に受けるが、さすがに固い皮膚の持ち主である。
怯むことなく、3発目、4発目、5発目を避けながら、突進してくる。
大きな体なのに、俊敏だ。
それに、重い体重をのせた突進の威力は半端ないはずだ。
イネザベス:「ううっ、まずい。カコレット!次よ!」
カコレットは、ニヤッと笑い、火球を発射する。
ドガーーーーーん
今度は火球5発が同時に、シルバー・ホーン・ライノセラスに向かって飛んでいく。
さすがに逃げ道はない。
3発が命中し、シルバー・ホーン・ライノセラスの勢いが落ち、よろめく。
イネザベスがいつの間にか、新たな筒状の魔道具を構えている。
そして、火槍が連射される。
ヒュン、ヒュン、ヒュン、ヒュン、ヒュンーーーーー
火球で焼けただれ、硬度の下がったシルバー・ホーン・ライノセラスの皮膚に火槍がどんどん突き刺さっていく。
そして、シルバー・ホーン・ライノセラスは我々の10m手前で、ついに崩れ落ちた。
イネザベスとカコレットは、余裕そうな感じでいるが、ぎりぎりの闘いだったと思う。
もっとも、気が気じゃなくて、冷や冷やだったのはソリアムだけどね。
ただ、問題はこれからだ。
シルバー・ホーン・ライノセラスは残り2体いる。
1体がやられ、明らかな敵意でこちらを見ている。
鼻息が荒いのが、ここからでもわかる。
イネザベスとカコレットが、新たに筒状の魔道具を取り出しているが、まあ、どう考えても同じようにはいかないだろうから、かなり危険だと思う。
トシード:「ソリアムさん。次は我々の出番ですね」
ソリアム:「ふっ、そうだな」
シルバー・ホーン・ライノセラス残り2体がこちらに向かって突進し始めた。
ソリアム:「左の1体は私がやる。右の1体はイネザベス、カコレットさん、トシード君でお願いする」
そういうと、ソリアムは左のシルバー・ホーン・ライノセラスに向かって走り出す。
トシード:「イネザベス先生、カコレットさん。充分に引き付けて撃ってください。シルバー・ホーン・ライノセラスが怯んだところで、私の魔石銃でとどめをさしますね」
イネザベス:「わ、わかった。けど、とどめって・・・手のひらサイズの魔石銃にそんな威力あるの?」
トシード:「大丈夫です。みててください。狙いを定める必要があるので、シルバー・ホーン・ライノセラスの動きを止めてください!」
イネザベスとカコレットが頷くが、表情から半信半疑なのは伝わってくる。
トシード:「大丈夫!信じてください!!!」
イネザベス:「わっ、わかったわ。規格外のトシード君だものね。信じるわ!」
カコレット:「オッケー!任せたわ!」
・・・・・・・・・・
ソリアムはシルバー・ホーン・ライノセラスに向かって神速でいっきに距離を詰め、神速の技を打ち込む。
これは一度の踏み込みで三回の突きを繰り出すという、噂で聞いているエドザー王国第1騎士団長ソリアムの必殺技だ。
生で見れるなんて、ワクワクだ。
ソリアムは同じ場所に一点集中で三回の突きを行うことで、硬度の皮膚を突き破る。
あまりの速さに目が行くが、実際にはパワーもある。
さすが、疾風の剣士と呼ばれる畏敬の存在である。
ソリアムが突き刺さったロングソードを引き抜くと、シルバー・ホーン・ライノセラスは息絶え、崩れ落ちた。
ソリアムはすぐに心配そうにこちらを振り返る。
それと同時に、イネザベスとカコレットの火球が発射された。
ドガががーーーん
ドガーーーーーん
右のシルバー・ホーン・ライノセラスに4発が命中し、残りは地面をえぐる。
シルバー・ホーン・ライノセラスが怯み、突進の勢いが落ちる。
私は狙いを定めて魔石銃の引金をひく。
“土属性の茶の魔石”と“弾丸の魔法陣”がセットしてあり、魔力の圧縮された強威力の先端の尖った石弾丸が回転を与えられ打ち出された。
石弾丸は空気抵抗や重力の影響を受けつつも、回転による安定性を持つことで標的に向かって高速で直線的に飛んでいく。
そして、シルバー・ホーン・ライノセラスの硬度の頭を打ちぬく。
シルバー・ホーン・ライノセラスの前足がもつれ、ズザザザァーーーと我々に向かって滑り、目も前でぎりぎり止まった。
イネザベスとカコレットは唖然とし、しばらくの沈黙が訪れた。
カコレット:「ど、どどど、どういうこと!?」
イネザベス:「ええ、そうね。トシード君、魔石銃について詳しく説明してください」
トシード:「ええ。。。そっちですか。。。」
てっきりシルバー・ホーン・ライノセラスとぶつかるんじゃないかとヒヤヒヤ、ドキドキしていたのかと思ったが、さすがはイネザベスとカコレット。
説明を断れる雰囲気がない、緊迫した空気が流れている。
イネザベス:「私たちの魔石砲には中サイズの赤魔石を5個装填しています。それに対して、トシード君の魔石銃には小サイズの茶魔石ですよね。どうして、小サイズなのに威力がそんなにあるのですか?」
カコレット:「そうなのよね。魔力量は小サイズの10倍が中サイズだから、威力は私たちの魔石砲の方が上のはず。しかも、従来の魔石砲は1発しか打てないけど、私たちの新改造の魔石砲は、中サイズ魔石を5個装填でき、5発を撃つことができるのよ。私たちの魔石砲の方が魔力量50倍あるということよね」
イネザベス:「そうです。単純に魔力量だけの比較ならその通りです。トシード君、どのような仕掛けがあるのですか?その魔石銃には」
2人が距離を詰めてくる。
ちっ、近い、近すぎる。
ソリアムさんがいるところでやめてー。
トシード:「わ、わかりましたから、ちょ、もうちょっと、落ち着いて、離れてください、ね、ね」
私の魔石銃は、弾丸に威力UPの工夫がある。
弾丸の先をとがらせ、その一点に魔力を集中させることで貫通力を上げている。
つまり、単位面積当たり魔力量であれば、圧倒的に魔石砲よりも高い。
これを私は“圧縮技術”と呼んでおり、魔法陣に圧縮の記述をいれている。
キヨフレッド・フォン・ヒーゴのオリジナル技術である。
イネザベス:「そういうことですか。この圧縮技術は取り扱い注意です。ひとまず、私たち3人の秘密にしましょう。学園に戻ったら、学園長に相談します。いいですね」
カコレットと私は無言で頷いた。
ソリアム:「無事でよかったです。すごく引き付けていたので心配しましたが、お見事でした。・・・どうしました?何かありましたか?」
ちょっと変な空気が流れていることに気づいたようだ。
やれやれこういう時はどうすればいいのだろうかと思い、イネザベスに目をやる。
イネザベス:「なんでもないわ」
そっ、そっけない。
それではソリアムが可哀そうだ。
ソリアムから、ガーン、ガーン、ガーンという心の声が漏れ出している。
焦点が定まっていない。
あああ、可哀そうだ。
可哀そうすぎる。
ソリアムは何も悪くないのに。
後で慰めてあげようと心に誓った。
・・・・・・・・・
その夜、焚火の横で、放心状態で満月を眺めるソリアムがいた。
顔を覗き込んだが、私に気づかない。
ちょっと、声をかけられるレベルにないので、あきらめて寝ることにした。
・・・・・・・・・・
早朝、カラ元気のソリアムがいた。
昨日仕留めた3体のシルバー・ホーン・ライノセラスを解体している。
・立派な角
・固い皮
・Bランクなので中サイズの魔石
が戦利品であるが、2体の皮は火魔法攻撃で期待できない状態である。
私は少し離れたところで、その手際のよい解体作業を眺めている。
ときおりソリアムが「ふーーーっ」と深いため息をついている。
ザクッ、ザクッ、ザクッ
ふーーーっ
ザクッ、ザクッ
ふーーーっ
ザクッ
ふーーーっ
ふーーーっ
ため息の頻度が上がっていく。
慰める言葉が見つからない・・・
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