第17話「サイクロプス」
第17話
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初級ダンジョンでの実戦訓練10日目。
我々パーティーは、10階層のダンジョンボス部屋の前にたどり着いた。
ムネルダ:「いくわよ!」
俺は頷き、ボス部屋の扉を押し開けた。
足を一歩踏み入れた瞬間、私の心拍数が大きく上がり、視界が狭まり、耳も遠くなった。
突然、あの不鮮明な映像が脳裏に浮かんできたのだ。
玉座に座るキヨフレッドとサリアらしきふたりの人物。
ふたりの瞳には生気がない。
・・・:「トシードさん、トシードさん」
トシード:「・・・ぁぁ、センナさん」
センナ:「どうかされましたか?」
トシード:「い、いや、なんでもありません」
ムネルダ:「しっかりしてよ~、トシード!」
この10日間で、いつの間にかムネルダは私のことを呼び捨てするようになっている。
部屋の奥から、鼻息の荒いブラウン・バッファローがこちらを見ている。
直線的に突っ込んでくるパワーは、相当なものだ。
その猛進さえ私が盾で防げば、何も問題なくセンナたちで倒せるはずだ。
少なくとも、ヒューは手出しするつもりはなさそうだから、私たちだけで倒せるということだろう。
しばし考えていると、しびれを切らしたブラウン・バッファローが走りだした。
私は盾を両手でしっかりと持ち、がっしりと構える。
ブラウン・バッファローの頭と私の盾がガガーーーンッと激突し、私はズザザザーーーと後ろに押し込まれる。
私は弾き飛ばされるのを堪えきり、ブラウン・バッファローの動きが止まった。
これで私たちの勝利は確実になった。
そのとき、足元の床がフッと消え、暗い闇が現れた。
私たち5人とブラウン・バッファローは闇に吸い込まれた。
・・・・・・・・・・
何階層かはわからないが、フロアボス部屋に落とされたようだ。
立ち上がった私たちの前には、ブラウン・バッファローを右足で踏みつぶしている圧倒的な存在感の怪物がいた。
力強い筋肉質の巨大な身体。
粗い質感の土色の皮膚。
乱雑に伸びた髪とひげ、そしてごつごつした手や足。
額の中央にある唯一の眼球は異常に大きく、鋭い視線を放ってくる。
トシード:(サイクロプス、・・・よりにもよってAランクの魔物か・・・)
センナたちの身体的、精神的な震えが伝わってくる。
ヒューの顔色も悪い。
サイクロプスが咆哮を放つ。
「ぐぬおおおおおーーーーーーーーーー」
力強く響き渡る超低音。
恐怖と威圧感にあてられ、センナ、ムネルダ、クキリナは後方に飛ばされそのまま気を失う。
ヒューはさすがは副団長である、今にも倒れそうだが、なんとか耐えきり、私たちを守るために剣を握り、前にでる。
しかし、サイクロプスの棍棒による一撃でふっとばされ、壁に激突し、意識を失い、その場に崩れ落ちた。
ヒューは全身骨折だろし、命の危険性があるはずだ。
治療を急がねばならない。
サイクロプスは、なめた顔で私を見下している。
いまは、躊躇する場面ではない。
私は、無詠唱で身体強化魔法を自分に、武器強化魔法を剣にかける。
Aランク魔物程度なら、詠唱は不要だ。
詠唱すると魔法発動にはその分時間がかかるが、その分だけ強力な魔法となる。
いまは、無詠唱で十分だろう。
次の瞬間、私はサイクロプスを一刀両断に切り裂いていた。
サイクロプスは何が起きたかもわからない内に絶命したことだろう。
私はすぐにヒューにほどほどの回復魔法をかけ、応急手当を施した。
そして、意識を失ったままの4人を集め、瞬間移動魔法を使い、10階層のボス部屋に戻る。
そして、別のパーティーが来ることが確認できると、私も気を失うことにした。
・・・・・・・・・・
目が覚めると宿泊施設のベッドに寝ていた。
センナ、ムネルダ、クキリナが心配そうに私を覗き込んでいた。
トシード:「あっ、みなさん、ご無事でなによりです」
センナ:「トシードさん、目覚めてくれて本当によかったです」
センナの目からは涙が溢れる。
そして、ムネルダ、クキリナの目からも涙があふれ出る。
どうやら、私が目覚めるのが遅くて、心配させてしまったようだ。
気を失うために自分自身にかけた状態異常魔法が強すぎたようだ・・・。
失敗、失敗・・・やり過ぎた・・・。
トシード:「ヒュー副団長は?」
ムネルダ:「命に別状はないけど、教会で治療を受けているわ」
トシード:「そうですか。それはよかった」
センナ:「トシードさんは、どうして私たちが助かったか覚えていらっしゃいますか?私たちはサイクロプスの咆哮で気を失ってから、ベッドで目覚めるまで記憶がないのです」
トシード:(それはそうですよね。気を失っていましたから。私の活躍がバレていなくてよかった~)
私は首を傾げ、
トシード:「いえ、私にも何がどうなったのか・・・記憶にございません」
ムネルダ:「やっぱり、ヒュー副団長が助けてくれたんだよね。ヒュー副団長はサイクロプスに立ち向かってから記憶がないって言ってたけど、あまりの死闘に満身創痍で意識が混乱しているのよ、きっと」
トシード:(なるほど、ヒューは意識が混乱しているのか。これは利用するしかないな)
トシード:「きっとそうですね!さすがヒュー副団長!」
クキリナは何か言いたげに私を見て、もじもじしている。
トシード:「・・・私はもう少し寝させていただきますね」
ムネルダ:「そうなの?まったくしょうがないわね~」
センナ:「ゆっくり休んでください」
そう言うと二人は立ち上がり部屋のドアへと向かう。
私はクキリナをなんとなく見る。
クキリナの顔にグッと力が入り、気持ちが引き締まった感じがしたと思ったら、
私の耳元に顔を近づけて、小声で「ありがと」とささやいた。
私の心臓はギクッと跳ね上がり、恐る恐るクキリナの顔を見た。
うーん、まいったなぁ~。
その瞬間、初めてクキリナの顔が微笑むのを見た。
クキリナ:「理由はわかりませんが、秘密なのですね」
トシード:「・・・うーん、なんのことだかわからないけど・・・」
そう言いながら、再び恐る恐るクキリナの顔を見た。
背中には大量の汗が流れているのがわかる。
トシード:「そういうこと・・・かな」
そう言って、ぎこちない笑顔でクキリナに応えた。
クキリナの頬は一瞬で赤く染まり、彼女はコクっと少し頷いたように見えた。
次の瞬間、私の頬にチュッと軽くキスをした。
私の顔が一気にカァッと赤くなった。
もしかしたら湯気も出ているかもしれない。
トシード:「なっ、なにを・・・///」
クキリナ:「ふふふ、感謝の気持ちです」
そして、センナとムネルダの後を、タッタッタッと追いかけていった。
私は茫然としながら、3人の背中を見送った。
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