第14話「マカロンとハーブティー」
第14話
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トシード:「イトゥリアム様は、ここで何をされているのですか?」
イトゥリアム:「何をしているということではないのですが、私はこの遺跡が好きなのです。特に大聖女の宮殿跡は、観光客も少なく、落ち着いた雰囲気がとても良いです。ふふふ」
イトゥリアムの無邪気な笑顔に、センナとムネルダはやられている。
トシード:「そうでしたか。確かに、この場所はとても良いですね。私も気に入りました」
イトゥリアム:「それはよかった。そろそろ警戒を解いてもらってもいいですか。ふふふ」
私は、ハッとして、剣の柄から手をはなす。
トシード:「これは大変失礼しました」
と深々と頭を下げた。
ただ、警戒は解いていないが。
イトゥリアムは苦笑いをしながらも、私を観察しているようだ。
トシード:「そろそろ集合の時間なので、お先に失礼させていただきます」
私の言葉で目が覚めたセンナとムネルダも、お別れの挨拶をし、私たちは宮殿跡をあとにした。
・・・・・・・・・・
私は、自室で、火魔法と風魔法で、デスクの上のランプを灯したり、消したりしながら考え事をしている。
うーーーんと、うなった瞬間、ノックの音が聞こえた。
私はあわてて、火を消し、ドカドカっと、デスクの上の本を落としてしまった。
トシード:「どっ、どうぞー!」
執事コグス:「どうなされましたか?」
トシード:「い、いや。なんでもない」
執事コグス:「古代都市遺跡見学はいかがでしたか?」
コグスは、手際よくテーブルの上に小さなシルバーのトレイを置いた。
トレイには、色とりどりのマカロンが美しく並べられており、それぞれが一口で楽しめるサイズだ。
ピスタチオグリーン、ラズベリーピンク、レモンイエロー、そしてチョコレートブラウンのマカロンが輝いている。
次に、コグスはハーブティーの準備に取りかかった。
小さなポットにお湯を注ぎ、その香りが広がるハーブを丁寧に摘んで入れる。
ハーブは庭で摘み取られた新鮮なもので、カモミール、ミント、レモングラスがブレンドされているようだ。
コグスはポットの中でハーブが静かに浮かび上がるのを見届けると、ふたを閉めて数分間蒸らした。
その間に、コグスはティーカップとソーサーをテーブルに並べ、シルバーのティースプーンとナプキンも用意した。
ティーカップは薄くて上品な磁器製で、カップの縁には金の装飾が施されている。
ハーブティーが十分に抽出された頃合いを見計らい、コグスはポットを持ち上げて、カップにゆっくりと注いだ。
湯気とともに、さわやかなハーブの香りが部屋中に広がった。
カップの中で黄金色に輝くハーブティーは、見た目も香りも癒しのひとときを約束していた。
コグスは最後に、トレイの横に小さな砂糖入れとミルクポットも置き、すべてが整ったことを確認して微笑んだ。
そして、静かに私に向かって一礼した。
トシード:「あり・・・いや、何のつもりだ。頼んでないぞ」
ハーブティーの香りで頭の中がすっきりとしていくのがわかる。
これでまた、考え始めることができる。
ありがとう、コグス。
執事コグス:「伺う前に用意してしまい申し訳ありません」
トシード:「よい。置いていけ」
執事コグス:「マカロンのおかわりはたくさんありますので、おっしゃってください」
トシード:「不要だ。皆で食べればよい」
執事コグス:「かしこまりました。侍女たちが喜ぶことでしょう」
廊下から喜ぶ侍女たちの声が微かに聞こえてくる。
私はお菓子を分け与える人として期待されているようだ。
いや、お菓子が食べたい侍女たちにうまく利用されているのだろう。
逆に、おかわり欲しいとは決して言えないプレッシャーを感じるわっ。
やれやれだ。
まあ、美味しい物はみんなで共有した方がよい。
それだけは確かだ。
・・・・・・・・・・
ハーブティーを飲みながら、天井を見つめる。
ああ、やっぱり何もわからない。
・出会わないはずのCランクモンスター ブラウン・ファング・ドッグ
・玉座に座るキヨフレッドとサリアらしきふたりの人物の映像
・突然現れた魔族 五剣イトゥリアム・フォン・オルワン辺境伯
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