第12話「病院と薬草畑」
第12話
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王女サリアの庭園跡に入ってから、それなりの数の魔物の気配がしている。
しかし、ブラウン・ファング・ドッグの時に放った私の殺気のせいだろうか、襲ってはこない。
まあ、本能的にだとは思うが、わざわざ自分よりも強い相手に挑むような無謀なことはしないのだろう。
センナとムネルダには、私たちが通り過ぎるのを息を殺して隠れて待っている魔物の気配はわからないようだ。
気を取り直したムネルダが、大聖女と大魔導士の大恋愛譚の続きを得意げに話してくれている。
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サリアの庭園は、いまは手入れはされていないが、生えている植物は昔と変わっていないようだ。
薬草だらけだ。
サリアが得意げに話していた・・・いや、自慢していたのを思い出す。
この薬草はどこそこの、、、この薬草の効能は、、、ポーションの作り方は、、、
私もポーションつくりを手伝わされていた。
サリアは、いつも治療のことを考えていた。
回復魔法とポーションを併用し、たくさんの怪我や病気を治していた。
私が不貞腐れた顔をしていることに気づくと、「ふふふ」と微笑み。
「キヨフレッドは可愛いわね」といって、頬にキスをしてくれた。
そして、私は頬を赤らめ、ポーションつくりを一生懸命に再開するのである。
ムネルダの大恋愛譚では、愛を育んだ庭園として語られているが。
庭園でかくれんぼして、「キャハハ」と可愛く追いかけっこなどしていない。
この庭園は、薬草栽培の畑なのだ。
そんなに走り回ったら、薬草を踏んでしまい、怒られてしまう。
それに、そもそも私は白馬に乗って庭園に現われたりしない。
決して、していない。
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ムネルダの話に心の中で突っ込みをいれながら、歩いていくと、王女サリアの宮殿跡が見えてきた。
宮殿もシンプルで無駄のない飾りっけのない造りになっている。
彫刻もないし、壁画もない、シャンデリアもない。
だって、宮殿というよりも、病院なのだから。
宮殿と庭園ではなく、実際は病院と薬草畑なのである。
その中で、白いドレスを着て、楽しそうに働いているサリアは美しかった。
もちろん、容姿は絶世の美女だ。
みんながサリアを大好きだ。
でも、誰よりも私がサリアを大好きであることに自信があった。
それにしても、宮殿跡と庭園跡は、観光地として人気はないようだ。
仕方がないことだが、病院と薬草畑なので、地味だからだろう。
それに手入れもほぼされていないので、日が暮れてくると不気味な感じすら漂う。
いまも、私たちしかいない。
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宮殿跡に足を踏み入れると、突然、不鮮明な映像が脳裏に浮かんできた。
玉座に座るキヨフレッドとサリアらしきふたりの人物。
ふたりの瞳には生気がない。
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