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第101話「辿り着いた答え」

第101話

ご愛読いただきありがとうございます。

すでに、ブックマーク/星評価をつけてくださった皆様ありがとうございます!

アーソン城地下の最深部で、

キヨフレッドとサリアの手に触れたことで、

トシードはすべてを理解した。


キヨフレッドとサリアが封命供魔によって

守っていたものではなく、封印していたもの――

それは、青白い光を脈打たせる球体。


ブルイドンの海核。


260年前、世界を海の底へ沈めようとした龍海将ブルイドン。

その“核”こそが、2人の命を代償に封じられていた。

だが、いま、結界にはほころびが生じている。

自然に壊れたのではない。

外部から、何百年もかけて執拗に侵食されてきた結果だ。

少しでもひびの入った結界は脆い。

攻め込まれれば、崩壊は避けられない。


そして何よりも。

結界が破られれば――

キヨフレッドとサリアの肉体は崩壊する。

封命供魔は、肉体を“魔力の器”として扱う禁術。

結界が壊れれば、器は耐えられず砕け散る。

2人の魂が残っていても、肉体が失われれば戻る場所がない。

だからこそ、トシードは決断した。

結界が壊れる前に、先に封命供魔を解き、2人を救い出す。



封命供魔とは

・肉体と魂の結びつきを断ち

・肉体を魔力の器に変え

・魂を深淵へ落とす

生命活動を停止させ、

肉体を魔力へ変換する儀式魔法。

だから逆に――

魂と肉体が完全に結びついた瞬間、術式は矛盾を起こして崩壊する。

それが封命供魔を解く唯一の方法。


キヨフレッドの魂は深淵にいない。

深淵を抜け出し、

トシードの中に転生し、

トシードの魂とキヨフレッドの魂は融合している。


サリアの魂は深淵に囚われている。

深淵の住人となり、

孤独の底で眠り続けている。


トシードは玉座に眠る二人を見つめた。

「……結界はもう長くもたない。

誰かが何百年もかけて侵食してきた。

いずれ、必ず攻めてくる」

ガオンが震える声で言った。

「じゃあ……どうするおん……?」

トシードは静かに答えた。

「俺が深淵へ降りる。

そして、サリアを救い出す」


トシードは拳を握りしめた。

「封命供魔を解く。

そして……ブルイドンの海核を滅する方法を探す」

ガオンは涙目で頷いた。

「トシ……いっしょに、たたかうおん……!」

「ありがとう、ガオン。

でも深淵へ行けるのは……俺だけだ」

トシードは玉座に手を置いた。

「待っていてくれ。

必ず……サリアを連れて戻る」

青白い光が強く脈動し、

トシードの意識は深淵へと落ちていった。


・・・・・・・・・・


落下する感覚が止んだとき、トシードは暗闇の海に立っていた。

上下も距離も存在しない、ただ魂だけが漂う世界――深淵。

足元には水面のような揺らぎが広がり、孤独と絶望が凝縮されたような空間だった。

サリアがここにいる。

トシードは胸の奥で確信した。


闇の奥から、白い影がゆっくりと姿を現した。

長い髪を引きずり、瞳は光を失い、まるで夢の中を彷徨うように歩いてくる。

「……サリア」

呼びかけると、影はぴたりと動きを止めた。

だが、反応はない。

魂が深淵に囚われ続けた結果、自我が薄れ、記憶も感情も霧のように溶けてしまっている。

このままでは、肉体に戻すことはできない。

封命供魔を解く条件はただ一つ。

魂と肉体が完全に結びつくこと。

そのためには、サリアの魂に“自分がサリアである”という認識を取り戻させなければならない。


そのとき、トシードの胸の奥から温かな光が溢れた。

キヨフレッドの魂――トシードと融合したもう一つの意識が、深淵の闇を照らす。

『……サリア。聞こえるか』

トシードの声ではない。

キヨフレッドの声が、深淵全体に響いた。

白い影が震えた。

その瞳に、かすかな色が戻る。

「……キヨ……?」

『そうだ。サリア。キヨフレッドだ』

サリアの魂は、深淵に落ちたときの記憶を失っていた。

だが、キヨフレッドの声は、魂の奥底に刻まれた絆を呼び覚ます。

トシードはそっと手を伸ばした。

「サリア。帰ろう。

君の体はまだそこにある。

私たちが……待っている」

サリアの瞳に、ようやく光が宿った。

「……?

あなたの中に……キヨが……?」

「そうだ。キヨフレッドの魂は私と融合している。

だから、2人で君を迎えに来た」

サリアの魂が揺れた。

深淵の闇がざわめき、拒むように波打つ。

深淵は“住人”を手放したくないのだ。


キヨフレッドの声がトシードの意識に響く。

『トシード。

サリアの魂を肉体へ戻すには……お前の魂と私の魂、そしてサリアの魂を一度“縫い合わせる”必要がある』

「魂を……縫う?」

『ああ。魂同士を一時的に結びつけ、深淵の呪縛を断ち切る。

本来は禁術だが……封命供魔を解くにはこれしかない』

トシードは頷いた。

「やる。方法を教えてくれ」

キヨフレッドの魂が光となり、トシードの手に集まる。

その光は糸のように細く、温かく、懐かしい。

『サリアの魂に触れろ。

そして……“名前”を呼べ。

魂は名前で結びつく』

トシードはサリアの手を取った。

深淵の闇が激しく揺れ、抵抗する。

「サリア――

君は、サリア・フォン・キシュレアンだ。

キヨフレッドと共に戦い、世界を救った。

そして……キヨフレッドの愛する人だ!」

光の糸がサリアの魂へと伸び、結びつく。

サリアの瞳が大きく開かれた。

「……わたし……

キヨ……

帰りたい……!」

深淵が悲鳴のような音を立てた。

魂の奪還を拒むように、闇が渦を巻く。

だが、トシードは叫んだ。

「帰ろう、サリア!

君の体が……待っている!」


・・・・・・・・・・


光が爆ぜ、深淵の闇が裂けた。

サリアの魂はトシードの胸へと吸い込まれ、

キヨフレッドの魂と共に一瞬だけ重なり合う。

その瞬間――

封命供魔の術式が矛盾を起こし、崩壊した。

深淵が遠ざかり、光が満ちる。

トシードの意識は現実へと引き戻されていった。


アーソン城地下。

玉座に眠るサリアの肉体が、微かに震えた。

ガオンが叫ぶ。

「トシ! サリアの体が……!」

サリアの胸が上下し、

閉じていた瞳がゆっくりと開かれる。

「……キヨ……?」

トシードは涙をこらえながら微笑んだ。

「おかえり、サリア」

サリアは震える手を伸ばし、トシードの手を握った。

「……ただいま……キヨ……?」

封命供魔は完全に解けた。

サリアの魂は肉体へ戻り、

キヨフレッドの魂もトシードの中で安定している。


だが――

ブルイドンの海核はまだそこにある。

そして、結界を侵食していた“何者か”も。

最後までお読みいただきありがとうございました。

気に入っていただけた方は、ぜひ、

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よろしくお願いいたしますm(__)m

つけてくれると、嬉しいです。

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