表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

最新の曲

作者: みくた

 その日、俺は友人との食事のため、ご機嫌で車のハンドルを握っていた。

 カーオーディオから流れるダウンロードしたての最新の音楽がご機嫌に拍車をかける。

 このアーティストは有名だが、別にファンというわけではない。だが、この曲は見事、俺のツボにハマった。

 そういう曲は何度でも聞きたいためリピート再生に設定している。

 そして今、三回目の再生が始まり、異変はその周回で起きた。

 曲に僅かながらノイズが混じる。

「ん?」

 疑問に思ったがさほど気になるレベルでもなかったので、そのまま聞き流した。

 三周目が終わり迎えた四周目。

 先程よりも大きなノイズが入り、曲は聞けたものではない。

「おいおいおい・・・」

 さすがに俺は曲を止め、別の曲をかけた。

 今度はノイズが混じることはなくクリアな音楽が聞こえる。カーオーディオの故障ではないようだ。

「データが破損したか・・・?」

 そして再びあの曲を再生する。

 しかし、スピーカーから流れたモノは、最早音楽とは呼べない不協和音の集合体だった。

「わわわわ・・・!」

 俺は慌ててオーディオの電源を落とした。

「一体何なんだよ・・・呪われてんのか?この曲・・・」

 完全にビビってしまった俺は無音の車内で、突然スピーカーからあの不協和音が流れる妄想に怯えながらも、友人との待ち合わせ場所を目指す。


「どうした?顔が蒼いぞ。」

 待ち合わせ場所に到着し、既にその場にいた友人は助手席に乗り込むなり言った。

「あ、あのさ・・・」

 俺は今まで起こったことを友人に説明した。

「はあ?・・・ちょっとその曲、聞いていいか?」

 そう言って友人は俺の答えも聞かず、カーオーディオの電源を入れる。

「え?おい・・・!」

 ワンテンポ遅れて止めようとしたが、オーディオは既に立ち上がり再生準備をしていた。

 無意識に全身が強張る。

「・・・えええぇぇええぇえぇぇ・・・」

 スピーカーから間延びした人の声が流れ、俺は口から心臓を吐き出しそうになった。

「・・・っ!」

 友人も驚いたのかすぐにオーディオの電源をオフにする。

「びっくりした〜・・・普通に怖えな。」

 恐怖を誤魔化すように乾いた笑みをこぼす友人。

「何なんだよ・・・完全に呪いじゃねぇか。」

 俺は絞り出すように言った。

「いや、呪いじゃない。この音源、動画サイトのMVから取ったやつだろ?」

「そうだけど・・・なんでわかった?」

 淡々と話す友人を怪訝に思いながら返す。

「この曲、そういう違法ダウンロードの対策プログラムが入ってるんだわ。一部界隈で話題になってる。」

「対策?この気持ち悪いのが?」

 電源の落ちたオーディオを指さし、俺はさらに聞く。

「そう。ちなみにこのまま聞き続けると、曲が入ってるUSBがクラッシュする。」

「そっちも違法じゃねぇかよ。」

 俺は率直な意見を述べた。

「だからって訴えたりしたところで、こっちもただじゃ済まない。」

「まあ・・・な。」

 友人の正論に、俺は言葉を詰まらせながらも納得する。

「ま、今後も多分こういうのが増えるだろうし、これに懲りたら違法ダウンロードはやめることだね。」

「・・・だな。」


 友人に畳み掛けられ、俺は半ば強引に違法ダウンロードは二度としないと違うのであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ