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ダンジョンと初めての調合とコンペ

 開拓村についた翌日、俺とどぐされ魔女は遅めの朝食を近場の食堂で頂いていた。

 そんなにうまいもんではなかったが、スープとサラダとパンあとはベーコンという極めて普通でありがたい食事だった。

 異世界の食事事情が違うとそれだけで苦労しそうだ。

 美食の国日本に生きた俺としてはそれだけでありがたかった。


 俺たちが倉庫で惰眠を貪っていると、コンペの内容が通達された。

 その内容は非盾職前衛の一般的な装備一式とのことだった。

 要は、ゲームで言うところの戦士とか剣士といわる人向けの一式装備を作ってプレゼンしろという話だった。


 その内容に俺は案外ワクワクしていた。

 ゲームの世界にそのまま入ったようなそんな気持ちになったのだ。

 これは生産職として、クラフトしながらスローライフなんていう悠々自適な生活も夢見ることができるのでは?と楽しくなっていた。


「あぁ~暇。 あんたなんか面白いことしてよ!」


 しかしその幻想は目の前にいる外道に打ち砕かれることになる。

 現状はそんなのんびりしたスローライフは来るはずもない。

 なんならコンペで負けたら、逃げだすことも敵わない迷宮探索になる。

 それはそれで心躍る生活なのかもしれないが、今は何より安らぎとこいつのいない世界が欲しい。

 気付いたら、世界崩壊の引き金を引いてる系ヒロインなどいらないのだ。

 だったら素直にハーレム系にしてくれ。


「君なんか失礼なこと考えてないかな?」


「いや別に?」


 俺は真顔でそう返した。

 本心から事実を言ったまでだ。何もやましいことはない。


「そんで? 装備作るんだろ? 大丈夫なのか?」


 俺は店を出ると、今後の展望について質問した。

 コンペは一週間後だ。あまりのんびりもしていられない。


「素材が足りないから、ダンジョン潜るよ」


 素材は自力調達になるのか……。

 結局ダンジョンには潜らないといけないらしい。

 どうやらストリーはこのままダンジョンに向かうつもりのようだ。


「おい準備とかいらねーのかよ?」


「いらんでしょ? 君がいる」


 そういうと意地の悪い笑みを浮かべるのだ。

 こういう瞬間だけはこいつかわいいなと思ってしまった自分が憎い。


 そして俺たちは、開拓村近くの4つのダンジョンの一つ。

 火山洞窟にやってきた。

 見た目の通り火の魔物が闊歩するダンジョンらしい。

 熱気が肌を焼く感覚があるが俺は暑さもそれほど感じないらしく、普段着のまま中に入っていけた。

 ストリーはなにやらローブを取り出し羽織った。

 その生地が肌に触れるとひんやりと冷たかった。


 ダンジョン探索は思った以上に順調に進んだ。

 地下五階のボスフロアまで一息に進めたのだ。

 これなら、ダンジョン探索をした方が早く稼げるのでは? と疑問に思ったが、「研究者が好き好んで潜ると思うか?」と聞かれ、それもそうかと納得したのだった。

 ボスは大きな火を纏った蛇だった。俺が力いっぱいに殴りつけると蛇は一撃で絶命した。


 その死体をストリーはカバンに詰め込む。

 カバンはどうやら、見た目通りの大きさではないらしく簡単に死体が丸々入ってしまった。


 これだけあれば十分だろうと、俺たちは街に帰るとする。

 随分とあっけない。そう感じた。

 これがチートの恩恵なのだろう。

 爆弾付とはいえ、余程この身体は規格外の代物のようだ。


 俺たちが帰ると倉庫内には大きな窯が置かれていた。

 どうやらグレイツ翁が用意してくれたようだ。錬金術の調合に使うらしい。

 ストリ―はさっさと片づけますかというと、カバンの中身を乱雑に窯へと出していく。

 そして何か薬品を投入すると異様な匂いが部屋に充満した。

 俺はたまらず倉庫を出ると、臭いが収まるまで退避していた。


 そして臭いが収まり中に入ると、装備が一式部屋の片隅に飾られていた。

 錬金術というのはほんとにすごいらしい。

 俺はそのあまりの手際に珍しく感嘆した。


 ちなみにストリーを手放しで褒めると、だろだろー?とひたすらにうざかったので二度と褒めないと誓った。



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