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馬車の旅と新たな拠点とキャラクリエイト

 俺は馬車の荷台で激しく揺られていた。

 幌馬車の荷台には俺とストリー以外にも乗客がいる。

 皆口元を抑え、どうにかこらえているといった感じだ。

 馬車の旅は酷く不快だった。揺れるのもそうだが。涙目のまま皆俺に視線を向けてくるのだ。

 身に覚えのない視線に俺の精神は悲鳴を浴び始めていた。


 馬車が休憩という事で、止まると俺はリドリーを連れ一団を離れることにした。


「なぁリドリー? なんで俺あんなじろじろ見られるんだ? もしかして、馬〇のにおいがしてるとかないよな?」


「そんなことはないから安心してよ? 溶液の中で溶けだして純粋なエネルギーになってるから」


「んじゃあ。 なんであんなじろじろ見られるんだ?」


「顔……かなぁ?」


 そういえば俺この世界来てから自分の顔見てないなと思った。

 確かにすごい気持ち悪い顔してたら嫌だな……。

 俺は鏡を借りて自分の顔を見てみることにした。

 そこには、なかなか目鼻立ちが整った金髪の好青年がいた。

 元の顔とは似ても似つかないイケメンぶりである。

 まさか、みんなこの顔に見惚れてた?そんな馬鹿な! と思いながら、あごに手を当てまじまじと鏡を見ていた。

 だが顎触った時に謎の違和感を感じる。

 妙に顎の骨が薄い。鏡の角度を変えてみる。やっぱりだ。妙に顎の骨が薄く平べったい。


 横から見ると異質さが際立っている.

 これはあれだ。キャラクリできるゲームで正面からの見栄えだけ頑張って、横にすると骨格のラインがおかしいあるあるのやつだ。

 こんなんが一緒にいたらそりゃ見るわ。


「顔の造形凝るならもうちょっとちゃんとやれよ!」


「時間なくて、ごめん」


 ストリーは珍しく素直に謝ったのだった。

 顔の造形をやり直してくれるらしい。

 いきなり顔が変わったら変に思われないかとも思ったが、乗り合い馬車の連中なんて下手に詮索などしてこないとのことだった。

 まぁそれもそうかと思いお願いすることにする。


 しかしどうするのだろう?と、魔法で変えるのかと思えば最初にストリ―は俺の頬をナイフで切り裂いて骨のようなものを埋め込んだ。

 俺があっけに取られている間に傷口は塞がった。

 見事に顎が完成している。

 しかし痛みのない身体とは言え成形手術が乱暴すぎる。

 俺は鏡を見て確認すると、とりあえず変な部分がないことを確認し安心した。

 一応お礼を言おうと、ストリーに顔を向けるとちょうど彼女から声を掛けられた。


「あ、どうする?目の色も変えられるよ?」


 その手には色とりどりの眼球が握られていた。

 それをおれの目に移植するつもりなのだろう。

 そんなカラコン変えるみたいなノリで言わないでほしい。俺は丁重にお断りすると馬車の一団に戻っていった。

 またじろじろと見られたが、言及してくるような者はやはりいなかった。


 そのまま馬車で三日ほど、俺たちはとうとう開拓村にやってきた。

 何もない場所を想像していたが、酒場や商店など最低限の流通は整っているようだ。

 まずは顔役に挨拶に行くことになっている。

 道すがら、周りをきょろきょろと見回すと、帯剣した人が多い。兵士という感じでもないのだが、明らかに荒事向きといった風体だ。

 開拓村って農夫とかそういうのが多いイメージだが農夫や普通の村人といった装いの人のが少ない気がした。


 臨時役場らしい建物に入ると。俺たちは応接間に通された。

 一応国からの命令ということで何かしら手続きがあるようだ。


 少しするとたっぷりと髭を蓄えた老人が現れた。

 横にはガタイのいい大男が二人、ボディガードかなんかだろう。要はお偉いさんみたいだ。


「これは魔女殿、遠くからよくおいで下さいました。 初めまして私はこの街の臨時代表を務める グレイツと申します。 何かお困りの際はご相談ください」


「これはご丁寧にありがと。 私が1000年の時を生きる大魔女、ストリーよ。 この隣居るのは私の協力者、名前はそうねー? トムでいいわ」


 随分適当な名前を付けてくれる。

 本名そのままだとどこで悪用されるかどうかわからないから、本名はここでは隠すと言われたが一文字削っただけじゃないか。

 おれはそう思ったが、話の腰を折ってもしかたないためとりあえず流して頭を下げることにした。


「それで魔女様は、この村では迷宮探索の担当ということでしょうか?」


「いいえ。こちらでは商店を開くつもり。 多少潜ることはあるかもしれないけど、基本的に戦闘は門外漢だから、冒険者に役立つものを売るつもりだわ」


 その言葉にグレイツ翁は目を細めそうですか。そうですか。と反応する。

 どうやら、小さな魔女と話すのは孫と話す感覚らしい。


「して魔女殿は魔道具職人でしょうか? それとも薬師?」


「違うわよ? 錬金術師。 万物を理想に変える力」


 その言葉にグレイツ翁は固まる。

 どうやらなにか不味いらしい。


「あのー錬金術はあまり、冒険者達も使わないと思いますよ? 借金返済が滞ると流石に本国も重い腰を上げるかと……」


 どうやらあまり錬金術はこの世界でもメジャーな学問ではないらしい。

 要は売れない。そういうことだ。

 というか先ほどからダンジョンだとか冒険者というわくわくする単語が飛び交っており、できれば説明が欲しい。

 するとストリーが俺の気持ちを察したような話をしてくれる。


「この開拓村は4つのダンジョン攻略に向けて作られた村と聞いている。そして、未だ一つの攻略も進んでおらず村の発展もまだ手に着かないと聞いている。 ならば私はこの機会に錬金術の有用性を広く知らしめに来たのですよ。 ダンジョンに潜り攻略するのも確かに大事ですがそれをバックアップしつつ、村の発展にも寄与する。 その為の錬金術のアトリエなのです。 鍛冶屋や細工師、それこそ木工職人までありとあらゆる物をおつくりできます。 ぜひ錬金術の力をお試しください!」


 それは随分と堂にいったプレゼンだった。

 随分な自信だ。おそらくこうやって国から援助を手に入れたのだろう。

 結果は世界を滅ぼしかねないやばい産物だったが……。


 そして、このプレゼンに対して、グレイツ翁は心動かされてしまったようだ。

 下手すりゃ村が滅びかねない爆弾だとは露ほども思っていないようだ。

 俺も止めたいがこのどぐされ魔女の協力者と紹介されては口を挟めば面倒になる。


 そんな風に考えていると横槍が入る。

 ドアをあけ放ち金の縦ロールの少女が入ってきたのだ。

 ずんずんと迫る彼女の胸は豊満であった。


「ちょっとそこの魔女! いきなり人の縄張りで商売しようとしてんじゃないわよ!」


 すごい剣幕だ。

 どうやらストリーが商売をすることが気に入らないようだ。


「彼女は?」


 ストリーがグレイツ翁に聞く。

 グレイツ翁が話そうとすると、縦ロールは遮って話始めた。

 胸のたわわな実りが激しく揺れると、自己主張の強い胸にも負けない大きな声である。


「わたくしは、栄えあるガーデンブルグ家の長女、アーデリンデですわ! ここは私が開拓初期から魔道具職人として、支えてきた村ですの。 それを錬金術などという理想ばかり追い求める夢想家の技術で汚染されるのは我慢なりませんわ!」


 あぁこの人キャラはすげー濃いけど、言ってることはすげーまともだー。

 確かにリドリーの技術はすごいが、利便性はない物しかここまで見てきてない。

 使う人間のことを考えている感じがしないのだ。

 そうだもっと言ってやれ。俺は心の中で応援したが、ストリーも案外負けてないようだ。


「ふん。 魔道具師なんて半端な技術じゃないか? そんな廉価版の技術しか使えないからここは未だにダンジョンの一つも攻略できないんじゃないのかな?」


「なんですって! このちみっこ!」


「言ったな? 恥ずかしげもない駄肉の小娘が!」


 喧々囂々二人の言い争いは続いた。

 どうやらお互いに相性が悪いらしい。

 業を煮やしたグレイツ翁が提案をして割って入ったことでやっと言い争いは終わったのだった。


「それでは、一度コンペを行いましょう。お互いに冒険で役立つ装備を出展して冒険者に感想を聞くのです。

 そうすればどちらが街に必要かわかるでしょう? 私としては和解してお互いに切磋琢磨していただけるのが一番ですが、このままでは収まりもつかないでしょう? よろしいですね?」


 その言葉に二人とも引いたようだ。

 その後俺たちは、グレイツ翁が用意してくれた倉庫に案内された。一応、住環境も整えておいてくれたらしい。

 コンペは一週間後とのことだ。

 グレイツ翁にお礼を言って俺たちはとりあえず今日は早めに就寝し、明日からコンペの準備を進めることになったのだった。


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