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マッドと無敵の身体と魔法戦争

 俺が牢の詰め所から出ると、どぐされ魔女が待ち受けていた。

 その顔を見ると怒りがまたふつふつと湧き出してくるのを感じる。

 さきほどの書類のことを思い出し激しい怒りがまた爆発しそうになる。

 黒い感情の本流に心は塗りつぶされる。

 全部壊してしまいたくなる。なぜ? おれがこんな理不尽な目にあわないといけない?

 こいつのせいだ。こいつを壊せばこの気持ちは落ち着くのだろうか? いや落ち着くだろう。

 それはとてもとても楽しい。愉快なことだ。口元が歪む。楽しい。面白い。


「やめたほうがいいよ」


 その一言で俺ははっとした。

 なんだ今の? 気持ちが昂るのが抑えられない。

 俺こんな好戦的な性格してたか?

 抑えられない気持ちに身震いした。

 確かにこの少女が元凶だ。

 しかし、憎いといってもこれほど歯止めが利かないほどの感情なんて……。

 少女を俺はじっと見る。

 そして、何となくこの抑えられぬ感情の原因をなんとなく察した。


「おい。どぐされ魔女。俺になんかしたか?」


「別に……」


 少女は視線を逸らすと吹けもしない口笛を吹いている。

 明らかに嘘ついてやがる。

 こんな状態じゃいつか大量殺人者になりかねん。

 意地でも吐かせてやる。


「お前が黙ってるつもりならいいぞ? 街はあっちだろ? そこで八つ当たりしてやる。魔女、ストリーの命でなって」


「お願いします! やめてください!」


 ストリーは少し場所を移すといい。

 平原の人気がない場所まで俺を連れ出した。

 そして周りに人がいないことを確認すると白状し始めた。


「これは内緒だからね? 君の身体というか? 存在? かなりの禁術の塊でね? バレるともう大変なんだよ。 感情が抑制できなかったり、あのバカみたいな魔力もそう」


 何でも錬金術だけでは、俺の魂を定着させるのは無理だったそう。

 単純なエネルギー不足解決に強引に周囲のマナと呼ばれる魔力の原料を取り込む機能を付けたが、そのままだと俺の存在もただのマナになって消えるからと、死霊術で俺の魂を怨霊化して強い精神力を持たせた。

 そのおかげで消えずに定着しているという話だ。


「つまり俺はお前のせいで、怨霊になって、しかも無限に周囲から力を得られると?」


「そうだよ! 素晴らしいだろう? 肉体は無限に再生し、怒りの感情を糧に無限の魔力を得られる。 まさに最強! 無敵!」


 ストリ―は一人で盛り上がっているが、俺はこの腐れ外道の話にすごい不安を感じた。

 というか、いろいろとツッコミどころが多い。


「お前さ、殺せない化け物が常に怒りを抑制できないってことに問題感じないわけ?」


「ははははは! なんだそんなことか? ホムンクルスは創造主には直接攻撃できないんだぞ? 安全装置ぐらいつけとくよ! 」


「直接はな? 俺床は殴れたけど? ていうか創造主以外にはどうなんだよ?」


 ストリーは俺のその言葉に笑い声をやめると、みるみる顔が青くなっていく。

 その顔に俺は不安が的中したことを直感した。


 こいついろいろリミッターかけ忘れたな? スペックだけ求めて利便性を忘れる技術者かよこいつ。

 ストリ―は何かをぶつぶつとしばらく呟いている。

 考え事が声に出るタイプなんだろう。

 しばらく様子を見ていると、答えが決まったようだ。動きがある。


「よし、消そう」


「は?」 俺が間抜けな声を上げると同時。

 ストリーは虚空から杖を取り出し、俺へと先端を向ける。

 その動作は俊敏で、気づけば杖の矛先が俺に向けられていた。


 そして杖の先端はまばゆい光に包まれ始める。

 俺がやばい、と感じた時には身体は光に包まれていた。

 こいつ自分が失敗したと判断したら、迷わず証拠隠滅してきやがった!

 こっちは振り回されっぱなしだ。ふざけんな! ぜってえ呪ってやる! 覚悟しやがれ!

 怨霊にしたこと後悔させてやる! 殺してやる! 


 俺は呪詛を吐きながら、光の中に包まれた。


 光が収まり、草原には一条の焼け跡が残った。

 その長さはすさまじく円形に草原の先がえぐれていた。

 しかし――


「え? なんでぴんぴんしてんの?」


「さぁ?」


 俺にもわからん。とりあえず二人して首を傾げる。

 どうやら俺は生き残ったらしい。というか、身体が傷ついた様子もないのだ。

 完全に無効化している。

 そんな感じだ。


 事態に困惑はしていたが、ストリーは証拠隠滅をあきらめた訳ではないようだ。

 再度杖を向けると今度は赤い光がでて、俺の身体は炎に包まれる。

 しかし、すぐに炎は鎮火した。

 その後水、風、雷の魔法が使われたがどれも同じような状態だ。

 土の魔法は多少効果があり生き埋めとなったが、すぐに抜け出すことに成功したのだった。


「あのさ、マナを取り込むってお前の魔法も取り込んでんじゃね?」


 俺には魔法の知識はないが、断片的な情報からそう判断できた。

 つまり俺には魔法は効かないのではないかと感じたのだ。

 その言葉にストリ―は杖を収める。無駄だと判断したのだろう。

 そして、


「ごめんなさい」


 そういって土下座をして謝ってくるのだった。


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