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9. 源さんの話 (妖怪屋敷由来)


源三のインターホンに呼ばれて、茜と風太が入ってきた。

俺の前のソファに並んで、腰をおろす。源三もデスクから俺の隣に移動した。


「さあ、正式に自己紹介でもやろうか。わしが——」

「源さん!」     

風太がすかさず言う。

慌てて茜が叱るが、おかまいなしだ。

「だって、みんなそう呼んでるよ。それでこっちが、あか姉で、ぼくが風太。新入りが、らいこう」

「よし、それでいこう」

源さんがニコニコしている。


——おかしいだろう、って。 呼び捨てじゃねェか。



「茜と風太も、知らないことがあるだろうから、いっしょに聞きなさい」

源さんがそう前置きして話す。


「まず、陰で妖怪屋敷と呼ばれているこの建物のことと、みんなに集まってもらった理由を話そうと思う」


わしは若い頃、情報工学や機械工学の勉強をしていた。

そのうち、人工知能にも興味を持った。

 研究に熱が入り、会社を持ったこともある。

 

仕事に没頭しすぎて、家内のことはないがしろだった。

 しかし、家内の病気をきっかけに、わしは仕事を辞めた。

 終の棲家のつもりで、長い間空き家になっていたこの実家に戻ってきた。

 

家内と環境のいいこの町で余生を送ろうと考えた。 

ここに越してきて、数年後に家内が亡くなった。

  

子供はいないし、張り合いもなく、ぼんやり過ごしていた。

ある日、どこからともなく、子犬が庭に入って来た。

柴犬のようだった。


首輪はないが、野良犬かどうかも分からない。

少し餌を与えると、翌日もやって来た。

飼い主が見つからぬまま、いつの間にか、住み着いた。


子犬をサスケと名付けた。

しばらくすると、開けっ放しの窓から、カラスが舞い込んで来た。

大きさだけではなく、明らかに普通のカラスではなかった。

  

「八咫烏のヤッターだ」

風太が親しみを込めて言うと、源さんが頷いて話を続けた。

 

さらに、不可思議なことが、次から次へと起こるようになった。

庭で、サスケが楽しそうに誰かと遊んでいた。

うちへ来た客か、あるいは、飼い主が現れたのかと思った。


遊び相手を見て、わしは驚愕した。

妖怪だった。

そのうち、どんどん妖怪が増えて、やがて妖怪の寄合所みたいになった。

今では、恐怖心などまるでない。心が休まる、やすらぎの館なのだ。


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