14. 異星人 №1
しかし、地面に倒れ落ちる直前に、玉藻前を抱きかかえた者がいた。
人型ロボットだった。
いつのまにか、岩の上にも同様のロボットが二体いた。
気の高ぶりもあったのだろうか、さっきの武者にはなぜか無関心だった俺だが、この光景には驚いた。
——なんだ、これ?
想定外もいいところだ。勘弁してくれよ。
こっちは精根尽き果てて、もうヘトヘトなんだ。
玉藻前を抱いたロボットの前に、二体がさっと降りてきた。
何事か話しているようだ。
玉藻前の体を託された二体のロボットが飛び立った。
残ったロボットが、歩み寄って来る。
顔や体の造りが他の二体と明らかに違う。
こいつが、幹部か?
——折角、九尾の狐と親しくなれたというのに。ひどい奴らだ。
ロボットが話し始めた。
「へぇ、しゃべれるのかい? さすがに、妖怪じゃなさそうだな」
会話は成り立ちそうだ。
俺は穏やかに話すことによって、まず相手を知ることに徹しようと考えた。
——私はヒドラだ。ある惑星から来た。
ヒドラ? ロボットだから、表情の変化も読み取れない。
ある惑星? 異星人ってことか。まったく、ややこしい話になってきた。
「一部始終、見てたんだろう?」
——ああ。
「なら、俺たちがどれだけ疲れてるか、分かるだろ?」
——勇者の真似事は拝見した。
「そりゃ、どうも。で、用件は何だい?」
——我々も、外へ連れ出してもらいたい。
ヒドラは、俺たちの目的や行動を、すべて理解しているようだ。
❖
俺の後ろに、みんなが集まって来た。
源さんは、左腕をだらりと下ろしている。血の付着した服は無残に引き裂かれていた。茜も頭を切ったのだろう、バンダナが血で染まっている。
風太はアタッシュケースをしっかり抱いていた。
俺はこのロボットがヒドラという名の異星人だということ、そして、この中からいっしょに出たがっていることを説明した。
「ちょっと、座らせてくれ」
手頃な岩に源さんたちが腰を下ろした。
「いっしょに連れ出せってことか………」
源さんはそう呟きながら、ヒドラを見た。
「そもそも、なぜここに居るんじゃ? レーダーに映りもせんし」
❖
ヒドラは次のようなことを話し始めた。
自分たちの住む惑星に他の惑星が衝突することが判明した。
天体衝突は避けられない。そうなれば、生命のほとんどが死滅する。
分散して移住することになったが、どこも環境が適さない。
「そこで、地球に目を付けたってことか?」
源さんが聞いた。
——そうだ。
ちょうどこの地球が最適だった。
我々はさらに調査するため、この惑星に降り立った。
融和のために、いろんな作業の協力し、知識を伝授した。
建造物や治水工事など、我々が手掛けたものが多数ある。
一部の地球人に感謝され、親しくなった。
そしてある大陸に、移住準備を始めた。
——だが、邪神によって、大陸は沈められ小さな島だけが残った。
「その島が、ここってわけか? でもなぜ、メノウの中に閉じ込められたんじゃ?」
源さんはそれが不思議だった。
——大陸を沈めるという暴挙に対して、我々の怒りは頂点に達した。地球を乗っ取るぐらいたやすいことなのだ。怖気づいた邪神は我々をここに幽閉した。




