表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/35

13. 九尾の狐 №4 ~ 死闘


ザクッザクッザクッ。

ふらふらと立ち上がった九尾の狐が、にじり寄ってきた。

ほとんど目が見えていないはずなのに、ケダモノの執念深さを感じる。


その時、風太が何事か呟き、奇妙な動きを見せた。印の結びのようだ。

俺は、どこかで見たことがあった。この呪文のような言葉と身振りを。


風太が天を指し、静かに囁いた。

風が吹いた。小さな渦が次第にふくらみ、やがて竜巻のようなうねりになった。

 

源さんの止血を終えた茜も立ち上がった。

茜は九尾の狐に立ち塞がり、大きく手を振り上げた。

炎の塊が一つ二つ、そして無数に増えて、風太の竜巻にのって九尾の狐めがけて飛んでいく。

 

九尾の狐の体に、火がくすぶり出した。

猛り狂ったように体をくねらせ、最後の力を振り絞り、襲いかかってくる。


茜が飛ばされ、岩に激突した。

「あか姉!」 

風太が駆けつける。

頭を打ったのか、茜はぐったりしている。

みるみるうちに、バンダナが血で染まった。


風太は激怒した。

「くっそ————、この野郎!!!!」

鬼の形相だった。

なりふり構わず、九尾の狐に向っていく。

 

「待て!」

慌てて、俺は風太を止めた。

気持ちは分かる。だが、いくら手負いとはいえ強敵だ。

一筋縄で敵う相手ではない。



今度は俺が、九尾の狐に対峙した。

勝機などなかった。

あるのは、折りたたみ式のサバイバルナイフだけだ。

ジャングルで役に立つこともあるかと思い、内ポケットに忍ばせてあった。


おそらく俺は倒されるだろう。

もとより命を賭す覚悟はできている。

ただし、九尾の狐を道ずれにせねば意味がない。

ここが俺と九尾の狐の墓場か。——それで本望だ。

 

これまでの人生で、人の役に立ったことなど一つもなかった。

目の前の三人を救えるのなら、この命になんの未練もない。

 

身体に燃えたぎるような気力がみなぎった。 



俄かに天が曇った。


稲妻が走り、雷鳴が轟いた。


いつのまにか、俺の右に二人、左に二人の武者が現れた。

誰か? 知らない。どうでもよかった。


——四天王、只今、見参!


四人のうちの誰かが、そう言った。


九尾の狐が、大きな尾を叩きつけてきた。

四人の武者が刀を構え、その攻撃を跳ね返す。

何度も、何度も、何度も、跳ね返す。

尾が切りつけられ、狐の毛が霧のように舞った。

噛みつこうと、九尾の狐が顔を近づけた時だった。

 

やにわに、武者の一人が片膝をついて、俺に棒状のものを差し出した。

刀剣だった。

俺は鞘を抜いた。

眩しいほどの神秘の輝きに名刀を感じさせる。


「くらえ!!!!」

 

上段からの一撃、一太刀を浴びせた。

 

ギャッ————————!!


九尾の狐は呻き声を上げた。

玉藻前に姿を変えながら、ゆっくりと仰向けに倒れていく。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ