11. 九尾の狐 №2 ~ 児雷也
その時、異変が起こった。
岩山の前に大きな物体が動いた。それは、巨大なカエルだった。
巨大カエルは倒れている源さんを咥えて、安全な岩陰に移動させる。
そして立ち上がった。九尾の狐と同じくらいの大きさだ。
『源さん……。攻撃中止だ!』
俺は叫んだ。流れ弾が当たってしまう。
よろめきながらも九尾の狐は、巨大カエルの左前足に嚙みついた。
牙がガシッと食い込んだ。
しかし、苦しいはずの巨大カエルが微動だにしない。
九尾の狐は噛みついたまま頭を振った。
『源さん、何してんだよ!』
離れてくれなきゃ、攻撃もできない。
俺は無力で無能な自分がもどかしかった。
『攻撃しようか!!』
風太も、いたたまれないようだ。
『やめなさいッ!————!』
茜が声を張り上げた。
『でも源さん、……ヤバイよ』
風太は涙声だった。
『少し待ちなさい。何か狙ってるみたいだから』
茜は冷静に状況を分析していた。
九尾の狐の左右に振っていた頭が、一瞬止まった。
源さんは、この瞬間を待っていた。
巨大カエルの口から速射砲のように、九尾の狐の目に唾が飛んだ。
明らかに、九尾の狐の目を狙っていた。当然、普通の唾ではないだろう。
九尾の狐は堪らず呻き声を上げた。
牙が左前足から外れた。
九尾の狐がうずくまった。




