10. 九尾の狐 №1 ~ グラスホッパー破壊
玉藻前が九尾の狐に変化した。
険しい眼光、鼻に皺を寄せ、牙をむく巨大な狐だった。
狡猾どころか、獰猛なケダモノの容姿そのものだ。
長い尻尾がいくつも分かれていた。
ふわりと浮いた九尾の狐が源さんを飛び越え、俺たちに向かって来た。
宙でくるりと舞い、長い尾で車を容赦なく跳ねあげる。
『わァ————ッ!』
あっという間だった。強烈な衝撃を受けた。
ベガとアルタイルは横転した。
ゼウスも激しく揺れたが、倒れはしなかった。
凄まじい破壊力にエアバッグが膨らみ、身体を包み込むように保護してくれた。
だが致命的な被害を被った。各車ともグラスホッパーが破壊されたのだ。
足が折損しては、もう原生林のようなジャングルは進めない。
ベガとアルタイルは、自動で残りのグラスホッパーを収納後、アームで地面を押して起き上がった。エアバッグも素早く収納される。
不安定な石がゴロゴロしている上をタイヤが唸り、砂埃を巻き上げた。
すぐ臨戦態勢に構えねばならなかった。
今度は、九尾の狐は俺たちに背を向け、源さんに挑みかかろうとしていた。
車の破損状態から見ても、源さんに敵うわけがない。
間髪を入れず、茜の火炎砲の攻撃が始まった。
俺もクモの糸で九尾の狐の足を狙う。
ゼウスがタイヤを軋ませ、九尾の狐に近づいた。
『おい、大丈夫か?』
俺は不安だった。
『発射!』
ゼウスが撃ち込んだのは、電気モリだった。
電線ケーブルが宙でくねり、モリに追随するように尾を引いた。
モリは見事に背中をとらえ、九尾の狐の体が大きく痙攣した。
ゼウスが何アンペアまで電流を上げられるのか知らないが、明らかに風太は敵を仕留めようとしている。
苦し紛れに、九尾の狐が振り向きざま、前足でケーブルをふり払う。
切断されたケーブルから短絡の火花が散った。
俺はヤマアラシの超合金の針を残らずお見舞いする。
『波状攻撃!!』
車をバックさせながら、風太は手を緩めない。
レーザー光線が断続的に直射する。
そこに、別のレーザー光線も合流した。
『一斉攻撃!!!!』
茜が叫んだ。
レーザー光線が光の束になり、九尾の狐を一斉照射する。
煙が上がり、焦げた臭いがした。
明らかに、九尾の狐はひるんでいた。まさしく、死闘だった。
『攻撃用ドローンも飛ばしなさい!!』
茜が風太に指示を出す。
『はい~!』
これはゼウスにしかない。風太が急ピッチで操作しようとした。




