5. 凶暴獣 ~ 原生林
ピピッ、ピピッ、ピピッ、ピピッ。
車内に警報が鳴る。
異変を察知しているのだ。
——なんだい?
前の二台が停車した。同様に警報器が発報したのだ。
『右です!!』 茜の声だ。
地鳴りのような響きがあった。
ドン、ドン、ドッドッドッドッ——。
恐竜が突進してくる。
『足を収納しろ!!』 源さんが叫ぶ。
グラスホッパーの足を折られては、たまらない。
五・六頭はいる。ティラノサウルスに似ていた。
レコーダーに映っていた奴ではない。
急遽、各車が向きを変える。臨戦態勢。
恐竜が目前に迫っていた。
『レーザー光線!!!!』
風太だ。
青白い光の筋が一直線に発射された。
『火炎砲!!!!』
茜も応戦する。
炎の帯が断続的に恐竜を狙い撃つ。
俺は一瞬武器を迷った。
恐竜が足を上げた。踏まれる。
『ヤマアラシ!!』
車体から、鋭い針が出る。
恐竜がアルタイルを踏みつけた。
金属の針が、恐竜の足を突き抜ける。
ギャッオオオオ————。
悲鳴のような叫びだった。
足を引きずって引き下がる。
が、すぐに別の一頭が突進してきた。
——しつこいんだよ!
『ヤマアラシ連射!!!!』
ヒュン、ヒュン、ヒュン、ヒュン。
金属の針が、空気を切って、標的めがけて次々飛んでいく。
体に深く喰い込む。
予想もしない反撃に、恐る恐る退きだした。
痛手を負ったティラノサウルスたちは、完全に戦意が失せてた。
俺たちも必死だった。
実戦で武器を使うのは初めてだ。
恐竜たちに、何の恨みもないし、全員が申し訳ない思いを持っている。
しかし、子泣き爺たちを救出するために、譲れない戦いだった。
❖
森の前でゼウスが木の伐採の準備をする。
この機能は大型車のゼウスにしか装備されていない。
チェーンソー、丸鋸、ハンドアームが前方からスルスル出てくる。
ジャンプの必要がないので、後ろの長い足を収納して、短い足と交換だ。
準備が終わったゼウスを先頭に森に入る。
進行の障害になる木を、ゼウスが切り倒していく。
焼き尽くすほうが早いんじゃない、と提案したが、源さんに却下された。
『そういうもんじゃない。木も生き物だ』
途中で何度か休憩しては再開する。
奥へ進むと、ますます高い木々が天に伸び、葉に覆われて薄暗くなってきた。
食虫植物に捕獲された昆虫らしき生き物が、苦しそうにもがいている。いずれもサイズは規格外だ。
ゼウスはなるべく効率の良いように、木を少なく伐採する方向を選んでいる。
何より素晴らしいのは、グリスホッパーの能力だ。
草のツルや浮き出た木の根に、躓くことは無かったし、なるべく車体が傾かないように関節を柔軟に調節している。コンピューター制御が行き届いていた。
しばらくすると、左側に明るい景色が見えてきた。